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27.聖女誕生

 「……ぼくが聖女?」


 ノルンがそう呟く。 

 ノルンが聖女で俺が勇者。

 と言う事は、俺はこれから彼女と共に悪魔達と戦う事になるのか。

 不謹慎だが俺はノルンともっと、仲良くなれるかもしれないと思うと、胸が高鳴った。

 そんな俺の目の前で、ノルンは心底嫌そうに叫んだ。


 「えー!?やだー!!ぼく聖女なんかやだー!!」


 そう言って、杖をぶんぶん振り回す。


 「どうせならぼく勇者になりたかったー!!それにこれからどんどん寒くなってくるのに、まだ良く知らない人と冒険の旅とかやーだー!!」


 ノルンに共に旅立つ事を嫌がられて俺がショックを受けていると、ノルンは何かを思いついたような顔をした。


 やめろよその顔!!

 いったい何思いついたんだ!!


 「ぼくは何も見なかったし、何も起きなかった!!よいしょっと……」


 悪魔との戦いで壊れた部屋の瓦礫の山を、防御陣プロテクションで作った手で掬い上げ、瓦礫の山の中へ女神の杖を混ぜようとするノルン。


 「あっ。でもここに隠すとゴミに出されちゃうかも。うーん。あっ、そうだ!!とりあえずベッドの下に隠しておいて、うちに出入りしてる商人のおじさんに買い取ってもらおう!!」


 ノルンは満面の笑みで、とんでもない事をさらっと言ってのけた。


 「我ながらナイスアイディア!!あ、でもぼくだけだと買い取りしてもらえないから、パパか王宮騎士団のおじさん達におねだりして、買い取りの判子押してもらわないとね。ごめんね、女神の杖。でもぼくを選んだあなたがいけないんだよ?」


 おいおいおいおい……。


 「お店に売りに出されても元気でね。もっとふさわしい使い手が買ってくれるといいね!!あなたを売ったお金は、孤児院の子供達の為に使うから安心してね!!」


 そう言ってノルンは、自分の部屋に杖を隠しに行こうとする。


 ーーだが、そうは問屋が卸さない。


 「ノールーンー!!」


 鬼の形相をしたノルンの祖母が、ノルンの襟首を掴み立ちはだかった。


 「お、おばーちゃん、どうしたの?お顔がこわいよ……?」

 「あなたと言う子はああああっ!!」

 「ひいっ!!」


 ノルンが俺達に気付き、助けを求める目をする。


 「ノルン。父さん情けなくって涙が出てくらあ……」

 「流石に今のは見過ごせないわよ、ノルン……」


 ノルンの父親とレイリィがそう答えると、ノルンは絶望した表情を浮かべる。


 「皆さん、申し訳ありませんが少しの間、大聖堂の方でお待ちいただけますか。来なさいノルン」


 俺達が頷くと、ノルンは祖母に奥の部屋へと引きずられていった。


   ☆


 「うわああああああん!!ごめんなさあああああいっ!!」


 思ったより壁薄いな、この神殿。

 全員何とも言えない表情を浮かべながら、ノルンの泣き声を大聖堂の長椅子に腰かけて聞く俺達。


 「いたいいたーいっ!!おしりが割れちゃうよおおおおっ!!」


 流石に今回ばかりは、お説教だけでは済まずに折檻されてるらしい。


 「おばーちゃんごめんなさいいいいいっ!!うわああああああんっ!!」


 ノルンの泣き声は小一時間ほど、神殿内に響き続けた……。


 「おやまあ、またノルンちゃんが叱られとるのか。それじゃまた出直すとするかの」

 「あらあら。本当に仕方のない子ですねえ」


 礼拝に来た近隣住民の老夫婦が、そんな事を言いながら帰っていく。

 そりゃ叱られる度に、あんだけ大声で泣いてたら、みんな気付くわな。

 何も知らぬは本人だけか。


 何とも言えない表情で、俺達がノルンへのお説教が終わるのを待っていると、ようやく解放されたノルンがぐすぐすと泣きながら女神の杖を手に、祖母と一緒に戻ってきた。


 散々泣きはらして、まだ目に涙を溜めてるノルンが、ぐすぐすと鼻を鳴らしながら俺に口を開く。


 「ぐす、この度、女神の杖に、すん、選ばれ聖女に、すん、なりました、ノルン・フォルシオン、すん、です……。不束者ですが、よろしく、ぐすっ、お願い致します、勇者様……」

 「あ、うん。これからよろしく」

 「ぐす、はい……。勇者様の、お役に立てるよう、精いっぱい、すん、がんばります……」


 ーーこうして、勇者になった俺と聖女になったノルンの冒険の旅は始まったんだ。

そこそこ男性作家と女性作家の描く聖女を見てきて、自分なりの聖女キャラを考えてみたんですが…。

どうでしょう?

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