2.かくして冒険がはじまる
プロローグ後編です。
ーーこうして、新しい勇者に続き新しい聖女まで誕生する事になったわけ。
なんか都合良すぎだと思わない?
それにぼく、ホントは聖女なんかじゃなくて、勇者になりたかったんだ。
それまで何度も何度も実家のお手伝いで、神剣を持ってる女神像の祀られてる広間を掃除してる時とかに、神剣をなんとか取れないかなって、何回も何回も女神像をおばーちゃんに内緒で弄り回してたのにさ。
神剣に選ばれた勇者様が現れた途端に壊れて、中から杖が出てくるんだもん。
ぼくは物心ついた頃から、勧善懲悪の英雄譚とかが大好き。
おばーちゃんの厳しい淑女教育の合間とかに、こっそり孤児院の子供達の為や自分自身の趣味で、空想の英雄が大活躍する紙芝居とか描いちゃう位。
そんなぼくだけど、そもそも鉄の剣とか重くて持てないし、運動神経も同年代の女の子達と同じ位だったけど、神剣をもし取れたらすごい力に覚醒して、誰よりも強くなったりしないかなって、良く想像してたんだ。
ぼくが人様に得意と言えるのは、護身用に覚えさせられた防御魔法と、おばーちゃん譲りの回復魔法だけだったしね。
伝説の女神の杖に選ばれた聖女だともしばれたら、神剣に選ばれた勇者様とは言え、数日前に会ったばかりの少し年上の男の子と一緒に旅立つ羽目になりそうだったから……。
それはそれでめんどうくさいなって思っちゃった。
勇者様はすごく強かったし、防御魔法と回復魔法しか出来ない聖女なんていなくてもなんとかなるよねって、ぼくは何も見なかったし何もなかった事にして、杖を瓦礫の山に埋めてその場を立ち去ろうとしたんだ。
今思えば正直な話、伝説の神剣に選ばれた勇者様に嫉妬してたのかも。
ぼくが勇者になりたかったのにーって。
そうこうしてたら、ぼくを心配してやってきたぼくより4つ年上の幼なじみで、ラギアン王国のお姫様にして姫騎士のレイリィおねーちゃんと、王国一の聖騎士で聖騎士団長のパパとその部下のおじさん達に加え、勇者様とおばーちゃんにも女神の杖を持ってる所を見られちゃった。
タイミングが悪すぎるよ!!
ーーこうして、めんどくさいのと勇者様への嫉妬でいやでいやでしょうがなかったのに、ぼくは聖女として祭り上げられ、勇者様とレイリィおねーちゃんと一緒に旅立つ羽目になったのでしたとさ。
これが勇者様とぼくの大冒険のはじまり。
そして一年半に渡るぼく達の大冒険がもうすぐおわる……。
次回いきなりラスボス戦。