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15.泣いたらだめ

 ……えっ?


 「残念ながら、我が娘のレイリィにはもう相手が決まってしまったしの。わしの姪っ子なら歳も勇者殿と同じじゃから、どうじゃろうか?気立ての良い娘でな。会えばきっと気に入ってくれると思うのじゃが…。もし勇者殿が姪を気に入って妻に迎えてくれるのであれば、結婚式の費用はこちら持ちで盛大に開催させてもらうぞ」


 ライ様がおねーちゃんの従姉妹とお見合いして、結婚……。


 ……ぼくも以前一度会った事がある。

 とっても綺麗でお淑やかで、すっごく優しいおねーさんだった。

 そう、まるで絵本に出てくるようなお姫様みたいな……。

 あの人なら……。

 あの人だったら、ライ様の隣に立つのにふさわしいかもしれない……。

 ライ様と彼女が並んでる姿を想像すると、とてもお似合いだった。


 うん……。

 そうだよね……。

 ああいう、いかにも深窓の令嬢って感じの女性の方が、絶対にいい……。

 ぼくみたいなのは、勇者様にふさわしくない……。


 そうだよ。

 初恋は実らないって言うもん。

 ぼくみたいな子がライ様を好きになれた。

 それだけで充分。

 それ以上望んじゃだめ。

 そんな資格、ぼくにはないんだから……。


 「と言ってももし、そなたに他に既に心に決めぐほおっ!?」


 突然聞こえた鈍い音と、王様の悲鳴。

 視線をそちらへ向けると、レイリィおねーちゃんの放ったボディブローが、王様のおなかに突き刺さってた。

 あれ?おねーちゃんなんで王様を殴ってるの?

 周囲に視線を向けると、王妃様や兵士さん達が、みんなして目を細めて怖い顔で王様を睨みつけてた。


 なんでみんな、王様を睨んでるの?

 おねーちゃんと王妃様はともかく、他のみんなは不敬だよ?


 「ノルン……」


 ライ様に声をかけられ、そこで初めて気がついた。

 ぼく、いつの間にか涙をポロポロこぼして泣いてた……。


 「え?あ、あれ……」 


 おかしいな。

 泣くつもりなんてないのに、涙がとまらないや……。

 せっかくライ様が良い人を紹介してもらえるんだから、笑顔で喜んであげなきゃいけないのに。


 「……っ。ぇぅ……っ……」


 泣くな。泣いたらだめ。


 「……っ。も、申し訳ありま、せん…。ちょっと、気分が優れない……っ……ので、失礼致し、ます……っ……」


 こんな言い分通る訳ない。

 でも、もう無理。

 もう、ここにいられない……。


 ぼくは王様達の返事も待たず、立ち上がると背を向け、そのまま謁見の間を飛び出した。

 廊下を泣きながら走っていくと、途中で何人も知ってる人達が驚いた顔でぼくを見送る。


 泣きながら走って走って、お城の中庭に辿り着いた所で、ぼくは部下の指導をしていたパパに見つかった。


 「ノルンじゃないか。もう王様への謁見は済んだの……か……。どうしたノルン!!いったい何があった!?」


 泣いてるぼくを見て、パパが持ってた剣を放り投げて走ってくる。


 「……うわあああああんっ!!」


 ぼくはパパに抱きついて、大きな声を上げて泣き出してしまう。

 パパはぼくがまだ小さかった頃みたいに、ぼくを抱いて何も言わず頭を撫でてくれる。

 しばらくの間泣いて、しゃくりあげながらぼくは口を開いた。


 「ぐすっ、ぐす……っ。パパぁ……」 

 「うん。どうした?ノルン」

 「ぼく、修道院に入る……」

次回からライ視点に変わります。

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