13.悪夢
つづきです。
「答えられないのか。君は聖女なのにとんだ嘘つきだな」
「う……」
ぼくはライ様に何も言えない……。
「もう君の顔は見たくない。さよならだ」
そう告げて、彼はぼくに背を向けて光の方へ歩いていく。
「ま、待って!!」
去っていくライ様の腕に手を伸ばそうとしたその時、パンっとぼくの手が振り払われた。
汚い物に触れたとでも言いたそうな嫌そうな顔で、こちらを見るライ様。
ぼくは振り払われた手を、もう片方の手で持って呆然と彼を見る。
「嘘つきなだけじゃない。まだ何か隠してるだろう?」
「わ、私、勇者様に何も隠してなんか……」
「嘘をつくな!!」
大好きなライ様に冷たくされ、怒鳴りつけられて、とうとうぼくは涙を流して、その場にへたり込んで泣き出してしまう。
「ひっ……うわああああああん……っ!!」
「……ああ。怒鳴ったりしてごめんよ。ノルン。もうしないから、隠してる事、全部話してごらん」
泣きじゃくるぼくの前で、地面に膝を付いてぼくの頭を優しく撫で、微笑みながらライ様が、ぼくの隠し事を聞き出そうとしてくる。
ぼくは泣きながら、頭を打った直後に前世の事を思い出し、それでずっと悩んでる事を彼に話した。
「……そうか。それで様子がおかしかったのか」
「ぐすっ、ひっく……」
泣いてるぼくの頭から手を離し、立ち上がるライ様。
しゃくりあげながら、顔を上げると彼は心底嫌そうに吐き捨てた。
「気持ち悪い」
そう吐き捨て、今度こそこちらを一切振り返らず、光の中にライ様は消えていった……。
☆
「いやああああああっ!!はあ、はあっ……ゆ、夢……?」
悲鳴を上げて飛び起きたぼくは、今見たのが悪夢だった事に安堵した。
……そうだよ。ライ様はあんな冷たい目をしない。
あんな酷い事言ったりしない……。
カーテン越しに窓から見る外はまだまだ暗かったけど、もう眠れる気がしなかった。
明るくなったら、お城に邪神討伐の報告に行かないといけない……。
『気持ち悪い』
夢の中でライ様に言われた言葉が、ぼくの胸に突き刺さって消えない……。
かわいい女の子を泣かせるとふふ…。
冗談です。