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占戦術学校の愚か者ども  作者: 蒼骨 渉
第一章 サテラプレティツィガーレ占戦術学校一年生前期
1/17

プロローグ

 占い師を目指すなんて愚か者のすることだ。


 これはおよそ百年前。フラムソール王国に仕える者たちが、国の新たな政策に対して謳った常套句であった。


 占い師と聞いて人々がイメージするのはなんだろうか? 

 紫や黒のマントやローブを身に纏った老人、様々な道具を使って人の心や未来を言い当てる超能力者、はたまた三角帽子を被り箒に跨る魔女か・・・・・・。

 多少の違いはあれども総じて言えることといえば、『怪しい』これに尽きるものだと思う。

 それもそのはず。普通の人に未来を読む力なんて無い。なのに占い師は未来が見えるというのだから、怪しまれて当然だ。


 そんな怪しい者たちをフラムソール王国は、国の重要なポジションに置こうというのだから、反感を買って、そのような揶揄がなされても仕方ないことだった。


 それから時は過ぎ――――現在。


 占い師はその名を占戦術師(センセンジュツシ)という名前に変え、さらには皆が抱いていた怪しいというイメージすら払拭し、国を台頭する職業になっていた。

 その理由の一つがその名前ともなっている占戦術にある。


 占戦術とは文字通り「占いを用いた戦い」のことで、占いと遊戯を掛け合わせた競技のことをいう。


 これまで占い師が怪しいと思われてしまっていた要因のひとつとして、その能力が絶対的で無いことが挙げられる。


 例えば、占い歴二十年の熟練占い師と、昨日今日始めたばかりの新米占い師、どっちがより優れた占い師であるかと問われたとしよう。もちろん前者の方が優れていると答えたくなるが、事実そうじゃない。ある人は前者が当たる占い師だと思い、またある人は後者が当たる占い師と感じることがあるということだ。


 つまり占い師の能力は相対的に測れても人によって差異が生じるため、絶対的な能力の差が分からないのだ。


 ではもし仮に、占い師の能力が絶対的に可視化されたとしたらどうだろうか? 

 この占い師は八十二点、あの占い師は六十点、あっちの占い師は九十九点、と。


 能力値が高い占い師は、誰から見ても当たる占い師と判断され、その占い師の信憑性は増す。反対に能力の無い占い師は点数が低いため、結果として、信用できない占い師は淘汰されていくことになる。


 能力を可視化すれば、占い師の怪しいというイメージは消え、代わりに信用を生み出せるわけだ。

 そしてまさしくそれを可能にしたのが、占いと遊戯を掛け合わせた競技――占戦術というわけだ。この競技の勝敗が単純に占い師としての実力と直結する。


 そしてもうひとつの大きな理由が占戦術師の資格化である。


 一昔前までは、占い師の明確な基準が無かったため、いつでも、どこでも、誰でも、占い師を名乗ることができた。それが結局のところ占い師界隈の汚点であり、怪しさを生み出してしまう要因でもあった。

 これを資格という枠で囲うことによって、より信頼できる環境を国家として整えたということだ。


 肝心の占戦術師の資格の取得方法だが、国はそれをたった一つに絞った。その条件こそが――――『サテラプレティツィガーレ占戦術学校』を卒業すること――――である。


 国営にして唯一の占戦術師養成学校である、サテラプレティツィガーレ占戦術学校には、毎年多くの学生が、占戦術師を目指してやってくる。 


 今では入学試験も国をあげての大イベントとなっており、他にも二学期初めに行われる『大占戦術大会』や学年末の『生徒会決め占戦術運動会』なども、実況付きで国営放送されるほど人気の祭事である。

 それもこれも占い師の『怪しい』というイメージが、完全に覆った証左と言えよう。


 こうして占い師の地位は明確なものとなり、国の政治から民間の事業、教育の基盤、時には軍事の指揮を握るなど、占戦術師は何においても無くてはならない存在にまでなった。


 今年もこの学校に入学を希望する生徒は、夜空に浮かぶ星の数ほど居るらしい。彼、彼女等はこの広大な舞台で輝くスターになることができるのか? はたまた流星のように流れ散り行くのか・・・・・。 


 いつの日か、夜空に燦然と輝く一等星になれることを信じて――――今日も占戦術師たちは占う。



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