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時計

作者: こたみか

 針の音は規則的に進み、ただただ進み、元の場所に戻ってきても、時間は戻ることはない。


 あれが止まるときを、見てみたい。

 電池が切れて、チッ、チッ、というあの音が聞こえなくなる瞬間を見てみたい。


 じっと時計を見続ける。

 止まらない。止まる気配はない。

 何周も何周も針は回って、その間、僕はそれをじっと見つめている。

 止まる瞬間を見たくて、じっとしている。


 遠くで鐘の音がする。

 大晦日の鐘の音が、ごーんごーんと響いている。

 僕の煩悩はひとつずつ消えていくみたい。


 それでも残るのは時計が止まる瞬間を見たいという単純な好奇心と小さな欲望だけ。


 ごーん、ごーん、となる音と、チッ、チッ、と進む音、今、僕の世界にあるのはそれだけ。


 ある瞬間に、不意に静寂が訪れる。

 針は止まる。

 鐘は鳴り止む。


 すぅっと息を吸って吐いたけれど、風は吹かない。

 何も動かない。


 止まる。

 静寂。


 動かない。

 静寂。


 回らない針をそれでも見つめて、いつまで経っても太陽は昇らない。


 この時計が止まるときは、そうだ、永遠が終わるときだったんだ!


 もう時間は進まない。

 いつか僕が始めるときまで、世界は止まったままなのだ。


 夜明けは来ない。

 新しい日は来ない。


 もう僕のために除夜の鐘は鳴らない。

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