表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/21

第19話 魔王討伐

 勇者たちと(たもと)を分かったアマンドゥス・フォン・ラパツィンスキは、直ちにティアマトと11の怪物から成る武装集団を召喚すると、手分けをして魔王城を探索することにした。


「手分けして魔王城を探索する。おまえたち。頼むぞ」

「「「承知した」」」


 ラパツィンスキ様もサーチの魔法で怪しき気配を探った。


「風よ。我に怪しき気配を知らせよ。アマンドゥスが命じる。サーチ!」


 サーチの魔法では、最大で数十キロの半径の気配を探ることができる。

 転移魔法で数十キロ一気に移動してはサーチの魔法で探りを入れる。これを何度か繰り返し、1時間も経たずに、ラパツィンスキ様は怪しき気配を察知した。


 ラパツィンスキ様は飛翔の魔法で一直線に魔王城へと向かいながら、ティアマトたちを呼び戻し、合流する。


 探知した場所へ着いてみると、禍々しい気配のいかにもな感じの城がそびえていた。

 城の周りには深い水堀が巡らされ、城へ続く跳ね橋は上げられており、門は固く閉ざされていた。


(あるじ)殿。ここはわらわに任せてくれろ」

「ああ。わかった」


 ティアマトが巨大な雷霆(らいてい)を門に落とすと、門の扉は真っ二つに裂けた。


 魔人やこれらにしたがう魔獣たちが迎撃に出てくるが、ムシュマッヘ(七岐の大蛇)ほか10の怪物たちが次々と粉砕していく。


「炎よ。尖鋭な槍となりて敵を貫け。アマンドゥスが命じる。ファイアジャベリン!」


 ラパツィンスキも魔法で応戦する。


 ティアマトはまだ人型を取っており、強力な膂力(りょりょく)をもって大剣(クレイモア)で敵を切り裂いていた。


「殲滅する必要はない。魔王の玉座への道を開くだけでいい。急げ!」

「「「承知!」」」


 途中、魔王の幹部らしき者も迎撃してくるが、ムシュマッヘたちの敵ではなかった。彼らもまた、神に匹敵する力を持っていたからだ。


 そして極短時間のうちに魔王の玉座に迫った。


 魔王は、やはり人型をとっていた。すなわち亜神以上の存在ということだ。


「よく来たな。まずは、ここまで来たことを褒めてやろう。だが、きさまらの命運もここまでだ。魔王に逆らったことを悔いながら、苦しみ抜いて死ぬがいい」

 と言うと魔王はその本性を現した。


 巨大な人型の竜だった。その表面はいかにも固そうな鱗で覆われている。


「ここでおしゃべりをしている暇はない。皆で一斉にかかれ!」

「「「承知!」」」


 魔王にムシュマッヘたちが集団で容赦なく襲いかかる。


 そして、魔王はというと……。


 その実力は口ほどにもなかった。


 ムシュマッヘと1対1であれば、まだ様になったかもしれない。

 しかし、11体1では全く勝負にならなかった。


 魔王はムシュマッヘたちにたこ殴りにされ、もはや虫の息である。


「こ、殺さないで……くれ……」

「私の従魔になるのであれば、殺さないでおいてやろう。そして直ちに魔王軍を撤退させるのだ」


「わ、わかった」


 魔王を殺してしまっては、魔王軍はただの無秩序な集団となり、かえって扱いにくくなる恐れがある。

 ラパツィンスキ様は、魔王を従魔にすることで、秩序だった撤退ができると踏んだのだった。


 そして魔王軍は、帝国から、次にホラント王国から速やかに撤退していったのだった。


    ◆


 出征してから、きっかり1週間後。

 ラパツィンスキ様はひょっこりと戻ってきた。


 やはりというか……実はこんなこともあろうかと思ってはいた。


「いちおう聞くけど、本物のアマンドゥス……なのよね?」

「もちろんそうですよ。それ以外の何かに見えますか?」


「魔王は……どうなったのですか?」

「懲らしめてやったうえで私の従魔にしました。その方が秩序だった撤退ができると思ったので……」


 はあ? ティアマトのみならず、魔王を従魔に!?

 この人は世界征服でもするつもりなのか……。


 呆れながらも、それを聞いて安心した私は、ラパツィンスキ様に抱きつくと胸に顔を埋め、ラパツィンスキ様成分を心ゆくまで補充した。


 その夜。

 やはりラパツィンスキ様は、いつもどおりお湯張りに来てくれ、マッサージもしてくれた。


 だが、彼には怒られてしまった。


「イレーネ様。また体が凝り固まっていますよ。ちゃんとヨガやストレッチをして、規則正しい生活をしていましたか?」

「やってはいたけれど、アマンドゥスに誘導されてやるのと、自分一人でやるのでは効果がぜんぜん違うのよぅ」


「もう。仕方ないですね……」


 その日のマッサージは強めで、いつもより余計に声を上げてしまう。

 そしてやはりというか、彼には「お仕置き」をされてしまったのだった。


    ◆


 翌日。

 ラパツィンスキ様はお父様に復命した。

 が、魔王は討伐したということにしたらしい。


 従魔にしたなどと知れたら、ラパツィンスキ様は魔王以上の恐ろしい存在ということになり、世間が動揺することを避けたのだ。


 皇都では、英雄がまたやってくれたということで、お祭り騒ぎになった。


 一方で、ビンデバルト大公が強引に押し込んだ勇者たちは行方不明になっており、大公の体面は大きく傷ついた。


 帝国臣民の間では、私とラパツィンスキ様が結婚して、彼が帝位につくべきという議論が再燃することとなった。

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ