雪の中で目覚めたなら
目覚める朝のひとり
隣にいた誰かの寝息
聞いていたい
白い溜め息が消えたとしても
繰り返し撫でてみる
誰かの傍ら
いつまでも
いないふりを装う
あなた
話しかけても
返事をせず
私ひとりにする
まだあたたかい
寝具の中
シングルよりもダブルは
広すぎて
涙の向こう側に
揺れる姿が
重なってみえた
音も無くふる雪
はらって
私の何倍もの大きな体
立ち尽くす
どんなに雪がふろうと
どんなに風がふこうと
あなたの側にさえいれば
安心していられる
大きな手
ぬくもり
もう一度
抱きしめてほしい
もう一度
あたためてほしい
あなたがいれば
終わらない冬にも
夢を見ることができる
見ることさえ叶わなかった
暗闇に無くしたはずの光
目に見えず
小さく揺らいだ
声だけが届けられる
クリスマスにも…
バレンタインにも…
届かなかったはずの
ギフト
あなたからの
メッセージ
耳を澄ませば
はっきりと
聴こえて来る
懐かしい
太くて低い声
白銀の
張りつめた空気にも
指の先まで
身体のすみずみまで
渡って
聴こえて来る
時間さえ
飛び越えて
私へと
響き渡る
共鳴して
冷たい空気
震動させて
震わす
私の体内から
生まれた声
あなたへと
風にのせて
届ける
雪雲から光る
青空に向けて
太陽を反射する涙
落ちた水滴が
凍って
再び溶ける春になるなら
天へと
どこまでも
昇り続けるように
あなたへと
あなたのもとに
私を魂ごと
送り届ける
あなたの太陽が
雪を溶かして
私の中を
いつまでも
昇ってゆく
左手の指環
握りしめ
ぎゅっ…と
一度
目を閉じてから
冬空を見上げて
歩きだす
雲間から
あなたが
私をみている
そんな気がして
もう一度
話しかける
あなたの声が
はっきりと
聴こえる
冬の彼方さえ
私の涙さえ
やさしく抱きしめる
もう一度
あなたの大きな
ぬくもり
手
懐かしい声の中に
身体じゅうが
私を
あなたを感じる