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4話

エミリーと一緒に入ったところは雑貨商のような店。

「こんなところにはどうして?」

「ポーションを買いにきました。」


ポーションか。

「行く前に魔力回復ポーションを買っておく必要があるんですよ。昨日逃げるために全部使ってしまったので。」

「回復ポーションはいらないの?」

「回復ポーションはまだ残りものがいるし、いざというときは回復魔法を使えばいいのですから。」


それ以外には特に買うものはなかった。

「お金がギリギリ…」

「どうしたの?」


「とりあえず剣士として前衛を任すためには防具が必要じゃないですか。」

「防具なら… 一つあるかも。」

「??」


たしかに、取り出す時の詠唱がオフだったか。

「オフ」


それとともにツールボックスが現れる。

「空間収納魔法?!このような高位魔法をどうやって?!」

「うん?お前もできるんじゃないの?」

「少なくともA級の実力者にならないとできないんですよ?」


とりあえずツールボックスを開いてみる。

「こ、これは何ですか。初めて見るものがたくさん。」

「俺がいた世界の工具だ。」

まさかこれが全部その刀のような威力を出すんですか?」

「それはまだ俺にも分からない。試してみないと。」


そして、俺が探していた物を取り出す。

「やっぱり昨日、見間違えたんじゃないな。」


おれが取り出したのは作業服と安全帽。

「これで十分だろう?」


安全帽は現実でも非常に良い防具だ。

これなら頭は心配しなくてもいいだろう。


そして作業服。

正直、機能性を重視した服なので防具と呼ぶには物足りないが、この服にも何か機能があるのではないかと思って取り出してみた。


「だっせ…」

「男のロマンを理解できないなやつだね。」

「本当にそれが防具として使えるんですか?」

「しばらく着替えてくるよ。待っててね。」


しばらくして服を着替えてきた。

そして周りに落ちていた木の棒を拾う。

「これで俺の頭を強く叩いてみろ。」

「何んの間抜けなことを?」

「早く、やってみろ。怪我したらポーション一つ飲めばいいでしょ?」

「ポーションはもったいないので、ヒル魔法ぐらいは使ってあげます。」


もじもじしながらも棒を握るエミリー。

「もし間違っても衛兵に届けないで下さい。」

力の限り棒を振り回す。


鈍い音とともに、棒が真っ二つに割れた。

「わあ…」

「すごいでしょ?鉄棒にしてもよかったのに」

実は少し目まいがする。


「どうだ、これくらいならクエッ!」

鶏の首が捩れる音が人の口から出る。

「急に…わき腹はどうして…」

「その服も防具だと思って刺してみたんですけど…」


今の苦痛からみて、やはり防御具としての効果はないのか?

まだ確かではないが。


結局、作業服の中に着る革のよろいを一つ買おうかと思いましたが、

「これを着たら暑くて死んじゃう!」

一度着てみて、これは不可能だと思い、手袋とブーツだけ買って出た。


これで準備は一通りできたようだ。

「では出発してみようか。」


昨日のミネルの森へ向かう。


「それで薬草と言っても正確な依頼はどんな内容?」

「フェロー草を50本採ることです。」

「難しい依頼か?」

「適当な依頼です。オークが出たことを除けば。」


「でもオークが出るって知らなかったの?なぜ一人でこの森に。」

「私もミネルの森でオークを見たのは昨日が初めてです。

ただでさえあなたが冒険家の資格をとる間に、報告もギルドにしておきました。」


「そして一人で来たのは、一人でも十分だったから一人で来ただけです。

そんなことあると知っていたら私もパーティーを作って来たでしょう。」

「所属するパーティーはないの?」


「私は必要な時だけパーティーを組織したり、他のパーティーに助っ人として入ります。」

「人が多ければ仕事は易しいが、自分の分け前が減りますから。」


「でも、本当にこうやって二人だけで大丈夫なのか?

もう少し様子を見るか、同僚をもう少し連れてくるかした方がよかったんじゃない?

考えてみたら俺、まだこのマチェーテの使い方も知らない状態なんだけど?」

「依頼期限が目前ですから。このような簡単な依頼に時間をたくさんくれはしません。

そして、あなたのせいでお金も全部使ってしまったのだからこの依頼が達成できなければ、今日から野宿です。」



話をしているうちにもうミネルの森に着いた。


「本日の護衛、よろしくお願いします。」

「努力してみるよ。」

「何ですか、努力では足りないです。ちゃんとしてくれないと借金はそのままですよ。」


森の中に入って行く。

「昨日逃げ回りながら何カ所かのフェロー草自生地を見ておきました。行きましょう。」

「それを全部覚えているの?」

「ふふん、記憶力には自信があります。」


10分ぐらい歩いただろうか。

「あそこに見えますね。」

赤い色をした草があちこちに生えている。


「これがフェロー草っていうのか?」

「はい、基本的な回復薬の材料に使われる草です。」


「これを切って持って行けばいいのか?」

「いいえ、球根にも薬効があるので抜かなければいけません。」

「庭の雑草を抜く感じでいいかな。」

前にバイトでこういうこともしたよね。


抜こうとすると思ったより根が強い。

根を傷つけないように抜くにはコツが要るだろう。

ゆっくり根をぬける。


そして根っこが見え始めると香りが漂う。

ついに全部抜き出した。

球根は玉ねぎのような形をしている。

「どうだ、俺の…」


エミリーの方を見ると、すでに8個ぐらいを選んでおいた。

「え?ああ、すごいですね。」


つえを地面に刺すと草が抜かれる。

何だよ、これ。

「土魔法の応用です。」

「これが魔法なんだ…」


この世で初めて見る魔法がこんな地味なものだなんて。

ちょっとがっかりだ。

「魔法なら爆発を起こすとか、雷を放つとか、そんなもうちょっと派手なことを考えたのに。」

「なんですか、その偏見は。魔法を無視するのですか。」

「そうではないんだけど…」

「それでは静かにしてください。そうしないと先ほどおっしゃった爆発と稲妻を全部あなたにお見せしますから。」


「え?できる?!」

「ねえ、脅迫の言葉にこんなに目を輝かせて喜ぶの、ちょっと怖いんですよ?!」

「一度だけ見せてくれないか。」

「魔力は節約すべきです。いつ敵に会うかわからないから。」


「あなたは周りの見回りでも頑張ってください。」

結局、他の魔法を見せないまま草を抜くエミリー。


まもなく周りのすべてのフェロー草を抜き取った。

25個くらい獲得したかな?

「さっき持ってきた袋に入れてください。」

そして日陰に行って休むエミリー。


「疲れてるみたいだね。」

「簡単な魔法といっても何度も使いましたからね。」

「おまえエルフだろ。魔力の心配はないんじゃない?」

「何言ってるんですか?」

「普通のエルフなら先天的に強大な魔力を持って生まれるとかじゃない?」


エミリーはまたもやいぶかしげな顔をした。

「いったいどこからそんな情報を得たのですか。」

「…そんな本がある。」

「半分当たって半分間違っています。」


「エルフたちは他の種族に比べて多くの魔力を持っていて魔法を使いやすい条件なのはその通りです。」

「人間だけでも魔法を具現することすらできないほどの魔力を持った人たちが溢れるから。」

「でもエルフなら魔法を使うことまでは別に問題ないくらいだけです。」

「とはいっても魔力の心配をしなくてもいいほどの圧倒的な魔力を持っているわけじゃないです。」


つまり魔法を使えるということ自体が多くの魔力を持っているということか。

「もしかして私も魔法が使えるかな?」

「あとで試してみましょう。」


しばらく休んだ後、他の自生地を探して歩き始める。

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