連続自殺の真相
僕の名前は雨瀬桃華。高校2年、17歳である。少し恥ずかしいが、僕には夢がある。魔法少女になりたいんだ。冗談ではなく、真面目に。しかもそう思うようになったのは今年に入ってからだ。理由は、何時か話すべき時が来るだろうから、その時に話すよ。
「昨日自殺あったらしいよ。」
「また神社で、しかも死因手首切って多量出血だってさ。」
「今月で3人目、先月と合わせて7人目とかヤバいって。」
短い昼休み、クラスメイト達が盛り上がっている。そりゃ、県内で立て続けに女子中高生が手首を切って自殺をしているのである。皆興味を持つなと言われても気になるだろう。実際僕も気になっている。ただの自殺なら兎も角、自殺した者の死因は皆手首を切ったことによる出血多量、そして、不可解なのは、皆寺や神社、狐狗狸さんの途中と思われる現場で自殺をしていたことだ。何かの呪いだと噂されているがよく分かっていない。
「もしかしたら魔法少女契約かもね。」
「何それ?」
クラスメイトの1人が口にしたことに少し耳を傾ける。
「丑三つ時に、神社で刃物で手首切ったら魔法少女になれるとかいうやつ。まあ、噂だけど…調べてみて。」
聞いていてアレだが、かなり胡散臭い。そんなに簡単なら僕だってとっくの昔にやっていただろう。しかし、自殺した者が魔法少女契約を信じて実際に契約をするために手首を切ったのならば…。その考えが頭に過ぎり、午後の授業中も魔法少女契約が気になって仕方なかった。
帰宅し自室に入ると、早速パソコンの電源を入れた。もちろん、魔法少女契約について調べるためだ。パソコンが立ち上がると、真っ先に検索エンジンを開いて、慣れない手つきで『魔法少女契約』と打った。検索すると、ページトップに出てきたのは、魔法少女契約についてのまとめサイトだった。迷わすクリックする。真っ黒の画面とピンクで魔法少女契約と書かれていたシンプルなデザインが目に飛び込んできた。スクロールすると、細かな文字がびっしりとあった。魔法少女契約の手順だ。
「えー、あー、なんか、思ってたよりやること多い…。」
つい独り言が漏れる。 しかし、できないこともないと思ってしまった。サイトに乗っていた手順は、まず身体を清め、丑三つ時に神社や寺を訪れる。(妖怪や守護神と契約する場合は異なる)次に自分の名前を告げ、魔法少女契約を行いたいという意思を示す。(私は魔法少女契約をしに参りました等)そして、契約対象の質問に答える。最後に持参した刃物(今後魔法ステッキとして使用する)で手首を深く切れば契約成立。というものだった。
正直半信半疑だ。やってみたいが嘘くさい。もどかしかった。少し迷って携帯を手にした。チャットアプリを開き、自分のチャットルームに入って黙々と魔法少女契約について綴った。手順や今の心境、今後どのようにしたいか…。誰も入室することなく、ルーム閲覧者は少しずつ増えていった。入室から30分経過した今もルーム閲覧者は4人いる。だが誰も入室してこない。それもそうだろう。高校生にもなって本気で魔法少女になりたいと言っている主のルームになんか行きたくないだろう、仕方の無いことだ。
『無名。さんが入室しました』
目を疑った。このタイミングで入室できる人がよくいたものだ。
『こんばんは、入室ありがとうございます!』
僕は何時も恒例の挨拶をした。
『こんばんは、初めまして。魔法少女契約について事実を伝えに来ました。』
『何か知ってるんですか!?』
思わず食い気味に反応してしまった。何せ、求めていたものが目の前にあるようなものだ。誰しも理性を失うだろう。
『知ってますよ。魔法少女契約は事実です。実際に非科学的な力を得ることが出来ます。そして、契約時に手首を深く切ればより強い力を手にすることが出来ます。』
新たな情報を得た喜びもあるが、別の感情の方が大きかった。女子中高生の連続自殺は、魔法少女契約の失敗であるという真実に対するマイナスな感情。死んでいった少女達はより強い力を求めて手首を切った。つまり、貪欲になれば死と隣り合わせということだ。だが、もう迷わない。
『情報ありがとうございます!僕、今夜契約をしたいと思います。』
そう残し、チャットルームを退室した。