ルート①4日目夜
6名が会議室Bの指定された席に座る
全員が黙ったままだ
「なんだ、今日は誰もなにもないのか」
ブルーが不機嫌そうな態度と愉快な声色という相容れない様子で言う
「夕食会は話し合いの場じゃないからね。全員が集まるから良い機会だと思って聞いてくれるかどうか聞いてから話しをしているだけなんだから」
「そんなことは言われなくても分かっている。じゃあ俺から質問がある」
質問の内容は言われなくても誰もが分かっているのだろう
鴬はどう出る
「今日支配人と会ったのは誰だ」
「アタシよ」
「どこでどんな理由をつけて会ったんだ。まさか会いに行ったわけじゃないだろ」
「ここで。音が聞こえていたからネズミでも出たのかと思たって装備までして来たわ」
「なにを言われた」
どうしてここにいたかよりも先に質問するのか
どうせそれも後で聞かれるんだろうけど
「心当たりがあるなら指名すればって」
「あるのか」
「あるわ。だからここにいたのよ。昨日嘘だと分かっててもブルーが本名だと言った名前を言って指名したから、きっとアタシにはそれが出来るのよ」
なにか作戦でもあるのか?
それともなにかナンバーと話して作戦でも立てたのか?
「指名は…するのかな」
「アタシは自分が生き残っていてペナルティを受けなければなんでも良いわ。だから最終日までは絶対に指名しない。そう決めたわ」
「…………最終日、5人以下、指名、しない…それも?」
「それも決めたわ」
「…………ん」
ナンバーの雰囲気が少しだけ柔らかくなる
やっぱりなにか話したのだろうか
「アタシからはなにもないわ。ブルーももう良いかしら」
「ああ」
「待って待って。まだ気になるところはあるんじゃないのかなん」
「支配人はどうして鴬にそんなことを言ったのか」
「ウサギ分かってるねん」
苺は席を立ってハイタッチを求めるがウサギはそれに応じないどころか視線を苺の方にすら向けない
「知らないわよ。誰かには言うつもりだったけど本当にネズミだと思って来たらアタシがいたってだけの可能性だってあるわ」
「つまり偶然いた鴬に話しかけたら偶然心当たりがあったって言いたいのかな」
心当たりあると公言しているのに全員別段目立った反応がないということは、相手は鴬と関わりがあることにまだ気付いていないのだろうか
それともそう思わせるために発言をしているのだろうか
「そうよ。だけどアタシはそのとき心当たりがあることは言ってないわ。今言ってるんだから一緒でしょうけど」
「…………この場、誰か、言えない。……鴬、多分、しばらく、会えない。……時間、無駄。良い」
「でももし鴬に会いに行ってそう言ったなら話しは違ってくると思うけどねん」
「聞けないんだから推測しか出来ないのは仕方ないわ」
全員が黙る
まだ料理は運んでいない
早く持って来て話しを聞かせろということか
料理の乗った台車を押して部屋の前まで行くとノック
返事はいつも通りないが開ける
「先に申し上げますが、お客様との会話の内容はプライバシーに関わることなので申し上げることは出来ません。それからこれは鴬様とお話しさせていただいたことを認める内容でもございません」
黙々と食事の準備を始めると全員諦めたのか準備を終えて出て行くまで誰もなにも言わなかった
それはそれで気味が悪い
「今日の掛け声は鴬にしてもらおうよ。昨日も一昨日もブルーだったしねん」
異論を唱える者はいない
誰だってやりたくないんだから当然だ
「せーの」
鴬がそう言って全員が誰かを指す
全員がその手を自分の意志で下すと映し出された映像を見る
鴬は宣言通り誰の本名も言わなかった
これで鴬は信頼を得られただろうか
『支配人』
あの声だ
周囲を見回してもどこから聞こえているのか分からない
会議室Bのカメラを見ると全員情報が映し出されるのを待っている
この声が聞こえている様子はない
『ゲームが滞っている様子だな』
「大丈夫です。明日は必ず」
『いいや、無理だ』
瞼が重い
身体に力が入らなくなってくる
『今回の貴様は見るに堪えなかった。次回に期待させてもらおう』
今回?
次回?
それにしても「あいつら」の声が最後に聞いた声だなんて最悪だな
BAD END「支配人失格」