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ナスタチウムの決意  作者: ゆうま
ルート⑦
43/53

ルート⑦3日目

3日目昼会いに行く人物:苺

考えた結果、苺が動くことが多そうだと思った自分を信じることにした

なにを言うかは大体考えた

だが、なんと返って来るかは全く予想がつかない


苺には2日目と3日目にしか会ったことがないけれど、両日とも俺を待ってレストランにいる

前々回、ナンバーとレストランで会ったときにはいなかったから、何時まで待っているのかは分からないが…

待てよ、ナンバーが他の参加者を怖がっていたのはBを最初に選んだときだけってことはないか?

ナンバーが他の参加者を怖がった理由は朝食をとる時間が一緒になったが、そのときの言動が普通過ぎて怖かった、と

では今回はどうだったのだろう


予想でしかないが、鴬の言った「今日」がホースのなにかを知ったときに日付が変わっていたために「今日」と言ったが、実際は「1日目の夜中」なのではないだろうか

そうだとすれば、「2日目の朝」は既にホースを殺すことを考えているはずだ

ホースがどんな態度だったかは分からないが、全く気にしないという態度はとらないだろう

とすれば、苺はともかく、ブルーからのなんらかのアクションがあったに違いない

それで他の参加者を怖がらなかった


ではCを最初に選んだときは?

ナンバーはゲームを常に持ち歩いているが、それが趣味だとは限らない

だがCでは最初に「趣味がゲーム」だと明かされている

同い年なのは確認し合っただろうから、ホースかブルーが気を遣ってゲームについて質問して片方がそれに乗った

そう考えれば怖がることはない…か

どんなゲームが好きとか嫌いとか、ゲームのプレイスタイスとか、そういうものを隠して話しをするくらいは簡単なはずだ

探りを入れて来たと思う可能性も考えられるが、ナンバーが「言動や態度が普通過ぎる」という理由で怖がっていたのが本当なら、辻褄は一応合う

なにせ「無理に明るく振る舞っている」や「出来るだけ沢山の参加者が帰れるように協力出来る体勢をとろうとしている」という解釈が出来るからだ


Bを最初に選んだとき苺がレストランで俺を待っていなかった理由がナンバーに気を遣った、という理由ならなんとなく嬉しい

だって、苺の質問は最初にどれを選んだって浮かんでくる当然のものだから

2日目と3日目で質問の内容が大きく変わるのは少し謎ではあるが、今はそれを気にしても仕方がない気がする

もうずっと前のことだ、正確には覚えていない


「こんにちは」

「お食事中でしたか。失礼しました」

「このお皿を片付けたら食事を終えるところだったんです。少し話しませんか?」

「わたくしでよろしければ」

「良かった。じゃあ座って下さい。流石に自分が座ってて相手が立ってるっていうのは居心地が悪いですから」


Cを最初に選んだときと全く同じ台詞じゃないか?

だが、そのときと違ってすぐに話しかけてくる様子はない


「なにかウチに言いたいことがあるって顔に書いてあります。どうぞ」


え、俺そんなに顔に出ていたのか

なんか恥ずかしい…


「昨日の夕食会でホース様が亡くなりました」

「指名に成功したのが誰か知ってるのん?」

「予想は出来ます」

「誰だと思うのかなん」

「鴬様です」


口に食べ物を含んだところだったからなのか、頷くだけで返事をした


「鴬様に限りませんが、わたくしには特に鴬様が早く動き出すメリットがないように思います」

「それで、ウチになにが聞きたいのかなん?」

「昨日の夕食会前に鴬様と2人きりで話したことがございますか」


少しムッとした表情をする


「あるよん。昨日会議室Bに入った順番は鴬、ウチ、ブルー、ホース、ナンバー、ウサギ。そのとき妙に殺気立ってたから声をかけただけだよん」

「なんと声をかけられたのですか」

「確か…「殺気が隠せてないよん?ウチは心当たりがないから別に良いけど、心当たりがある人に指名されても知らないからねん」だったかなん」


確かに、そのおかげなのか「妙にイライラしている」くらいにしか見えなかった


「苺様はどうしてその様なアドバイスをされたのですか」

「誰になにを言われたのか知らないけど、ウチはなにも知らないから」


イラついた態度を隠そうとしない

人は怒ると余計なことを言うらしい

このまま喋らせた方がなにか聞けるかもしれない


「ウチ、よくサイコパスって言われるんだけど、この状況でだって誰彼構わず殺そうなんて思わない。ウチはウチが生き残ってるのが最低条件だけど、出来れば多い方が良いとは思ってるし、関わりのある人に死んでほしいとは思わない」


今までの苺から考えれば意外な言葉だ

だが考えれば、最初に全員の方針を確認するのは普通に必要なことで、苺の様に考えているのであれば尚更だ

しかも苺は言動がなんだか不審、という感想を抱かせはするが、明確になにかをした、ということはなかった

ウサギを本名に近い名前で指名したことにも別の意味があったのかもしれない

それなら翌日紅茶を淹れていたことにも納得がいく


「それは安心しました」

「どうして。ウチは動かないって言ったようなものだと思うけど」

「いいえ、苺様は動きます。最低条件がご自身の生還ですから」

「このゲームを甘く見るなって、忠告かなん?」


にやりと笑う

うん、苺にはこの笑顔が似合う


「どの様に受け取っていただいても構いません」

「分かったよん。食事の邪魔だからもう行ってくれるかなん」

「わたくしも人間ですから、そうはっきり言われると傷付いてしまいます」

「じゃあもう一つはっきり言ってあげるよん」


ウキウキしている様な声色だ

また傷付くことを言われるのだろうか

正直に言うと、もう傷付く心なんてものはどこかに置いてきてしまった気もする

だが、忘れてはいけないと思う


「ありがとう。今ウチが言ったこと、信じてくれて。いっつもこういうとき、嘘って言われちゃうんだよねん。だから嬉しかった」


そう言われることに傷付いてきたのだろうか


「例えホテル内で窃盗が起きようとも、お客様全員を信じる。それがホテルマンの基本ですので」

「そっか。でもありがとう」


ふわりと微笑まれる

こんな顔も出来たんだな


「いいえ、それでは」


苺の意外な顔を見た

いや、これが本来の顔なのかもしれない




                    ***




5名が会議室Bの指定された席に座る


「鴬、昨日の発言について聞かせてもらおうか」

「朝起きたらドアに手紙が挟まってたのよ。手書きなのに新聞の切り抜きみたいにしてある手紙がね」

「どんな内容だったんだ」

「詳しい内容は言えないわ。でも、椎名の…平たく言えば「裏切り」かしら。それを示す内容が書いてあったわ。証拠はなくても、信じるしかない内容だったのよ」

「誰かが鴬にホースを殺させるために書いたってことかなん?」

「そうとしか考えられないわ。でも、そうだとしても、許せることじゃなかったのよ」


俯いて拳を握る

内容までは分からないが、詐欺のことだろう

実はグルでお金を受け取っていた、とかそんなところだろうか

だが、その程度の内容ならホースに確認してからしか指名しないはずだ

例え嘘を答えると考えていても、一度は必ず確認するはずだ

それが、俺の見てきた鴬だ


「その文字は明らかに女の子の文字だったわ。苺は目的のためなら手段を選ばないってデモンストレーションのとき目が合った瞬間に思ったのよ」

「酷いこと言うねん」

「最後まで聞いて。…だから、最初は苺だと思ったのよ。でも椎名に駆け寄るナンバーを心配そうに見てた。ずっと、心配そうに見てた。だから違うと思ったのよ」


鴬の視線が動いた先にいた人物に視線が集まる


「なにも知らない。だけど信じられないのは分かるよ」


苺の方をちらりと見る

鴬の信頼を得たために難を逃れたことについてなにか思うところでもあるのだろうか


「―――私は今の家の環境から出来るだけ早く逃げたい。6人で帰ればそれがすぐにでも叶う。だから、誰かに誰かを殺そうとさせるメリットが全くないんだよね」

「それもどう信じれば良いんだ」

「私の名前が分かったら、言っていることが分かるよ。兎に角、私は知らないから」


これ以上言うことはない、とでも言う様に視線を伏せる

次に視線が集まったのは当然鴬だ


「分かったわ。これが椎名の望んだことだって、信じることにするわ。ウサギ、椎名からアタシへの伝言は聞いたかしら」

「聞いたよ」

「椎名があの子のことを本当に好きだって分かったから、もう良いのよ」

「そう。分かった」


その反応は少し冷たくないか?

でもウサギだしな

参加者たちもそう思ったのか、4人共小さく笑った


話し合いも終わったし、料理を運ぼう

今日は鴬からリクエストがあった抹茶のロールケーキだ

手の込んだものにしたからきっと喜んでくれる


「さっきっていうより昨日からだけど、嫌疑をかけられたことだし、やっぱり面倒がって人と関わりを避けるのは無理があったと思うんだよね」


全員が食事を終えて少しして視線で掛け声の押し付け合いが始まりそうな頃、ウサギが唐突に言った


「だから少し協力的になってみようかと思うんだけど、そういう理由だから変な勘繰りは止めてね」


他の4人が不思議そうに顔を見合わせる


「せーの」


全員が誰かを指し示して名前を言う


「厚地加奈」


ナンバーが鴬を指している

この2人に指名は無理なんじゃ…?!

しかもどうして今


鴬が苦しみだすと別の冷淡な声が聞こえた


「南京太郎」


ナンバーを正しく指名した冷淡な声の主は、苺だ


「どう、して……あなたが…」

「……ごめん。………大切な、ものが、ある」

「そう…。アタシの死と…あなたの死で…その人が、守れる、なら…すて」


苺の方向に倒れたが、押し返されてウサギの方へ倒れる

慌てて受け止められた鴬に駆け寄ろうとしたナンバーが数歩歩いたところで膝から崩れ落ちる


「……素敵じゃ…ない。……こんなの…絶対。……ウサギ」

「え、なにかな」

「……願いが…絶対に、手に…入らない。……彼女の、世界に…早く、終わりを…」

「分かった」


小さく微笑むと地面に横になって、動かなくなった


「なにが起こった。苺、ウサギ、どういうことだ」

「分からない…」

「そんなわけないだろ!」

「ナンバーの言葉の意味が本当に分からない。私、苺のことを殺せるの?」


よく見ると、ウサギは小さく震えている

確かに開示されている情報は微妙だが、本当に分かっていないのか?


「そうだねん。ウチもウサギのこと殺せるよん」

「でも…南京太郎なんて人、知らないよ」


あ、これ嘘だ

今度はどういう作戦だ?


「き…、さまは、どういうつもりだ」


今名前言いかけたよね、ね


「どうって…鴬が悪いんだよ。本当のことを教えてあげたのに、ウチのこと信じてくれないから。京太郎だって、鴬に入れ込んじゃって。京太郎はウチの駒なのに」

「お前!そんな言い方ねぇだろ!」

「分かった」

「なにがだっ」

「許せなかったんだよね。駒に恋をしてしまった自分を。だから殺した。その周囲も滅茶苦茶にして、殺した。絶望した顔が見たかったんだ」


驚きと軽蔑の顔で苺を見る


「でもナンバーは最後まであなたのことだけを思っていた」

「―――恋は盲目ってことだねん」

「その使い方は違うと思う」

「合ってるんだよ。誰に出会っても、偽の笑顔も偽の口調も、どれだけ意識しても時々出るんだよねん。だけど、京太郎といるときは全然出なかった。京太郎が引っ越して会えなくなっても、それはずっと変わらなかったんだよねん」


ウサギが小さく微笑む


「それなら、合っているかもしれない」

「しかし、少し親切にしただけで殺されてちゃ命がいくつあっても付き合いきれないな」


つられてブルーも少し笑うと壁を見た


ブルー 誕生月:6月

ウサギ 好きな数字:7


「人の死を無駄にしない方法ってなんだと思う?」

「そんなものはない」

「ここではあると思うなん。それはさ―――」


苺の表情が歪んだ笑顔を浮かべる


「殺した人が生き残ることだよ。ウサギ、本当は京太郎のこともウチのことも分かってるよね」


大きな笑い声をあげて部屋を出て行く


「えー、待って。私本当にし」


部屋を出たため、音が途切れる

大きなため息を吐いたブルーも部屋を出て、画面が暗くなる

4日目昼誰に会いに行くか

ウサギ


*苺と2日目に会ったのは「ルート①」と「ルート②」、3日目に会ったのは「ルート③」と「ルート④」(「ルート④」は4日目の指名失敗ペナルティが違う以前は同じのため、描写はされていない)

*苺がウサギを「金井郁」と指名したのは「ルート④5日目夜」で、翌日の「ルート④6日目昼」で苺に会いに行っている

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