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ナスタチウムの決意  作者: ゆうま
ルート⑥
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ルート⑥11日目

「お忘れ物はございませんか?」


平和条約と言った通り、前回と同じく、互いに本名で指名しなかった

2人は来たときに持っていた旅行鞄とは違う大きな鞄を持っている

中身は金だが、そんな物を持って車に乗っても意味はない


「はい、大丈夫です。ありがとうございました」

「私もないです。お世話になりました」


2人の返答は変わらない

俺が前回と同じく必要以上に関わらなかったからだ


2人共あれから前回同様、無理に一緒に行動することなく適切な距離を保っていた

朝食を同じ時間に一緒にとり、昼かおやつの約束を6日間中4日していた

約束をした日にちとどちらを約束したかまで同じだった


「無事ご帰宅されることを心よりお祈り申し上げます」


最後にホースと話しをしようと思った

当然鴬のことだ


「不吉ですね」

「申し訳ございません。ただ、このホテルの外のことはわたくしには分かりかねますので」

「分かりました、ありがとうございます。車はこのホテルの最寄り駅までで良いです」

「俺もそれで。でも俺は一本後の電車に乗ります」

「用心するに越したことはありませんからね」


車のドアを開けたウサギに笑顔を見せる

その笑顔は今までと少し違って、なんだか「本当」に少し近い笑顔の様な気がする


「ウサギ。楽しかったよ、ありがとう」

「私も。それじゃあ、元気で」

「うん」


ウサギの乗った車を見送って俺を振り返る

これからする質問の内容を俺は知っている


「あなたは全員の本名を知っているんですか?」

「お答えしかねます」

「もうゲームは終わっていますよ」


ホースがホテルを出るまで安心出来ない

前回はホースとウサギの身を案じてそう思ったが、今回は違う

正直、2人のことはどうでも良い

俺が心配しているのはループのことだ

それに俺は参加者が読んでいるであろうルールを読んでいない

自分が参加したときのルールを踏まえて話しているだけで、実際はなにが書かれているのか知らない


「それでも、お答えしかねます」

「そうですか。じゃあこれは独り言なので気にしないで下さい」


ホテルに入り、ロビーの椅子に腰かけると大きく息を吐いた


「ウサギが淹れてくれた紅茶ですが、あれ、俺飲んだことがあるんです。金井紅茶店の味です。でも用意してある紅茶のパックは極々一般的なものでした。あの店のオリジナルブレンドを考えているのは母親ではなくウサギだったんです」

「どうしてそうお考えになられたのですか」

「あなた、鴬の部屋の外に抹茶のロールケーキを置きましたね。ウサギは毎日夕方に紅茶を淹れて鴬の部屋の前に置いていました」


そんなことを…

前回もしていたのか?


「あなたが抹茶のロールケーキを置いた日も同じ様に紅茶を置こうとして、止めて、淹れ直して、置きました。抹茶のロールケーキに合う紅茶にしたんですよ」

「そうだったのですね」

「店名しか知らなかったので指名が出来ませんでしたが、あの店の紅茶が大好きなんです。だからこれで良いんです」


俺の相槌は完全に無視されている

この後笑いだすの怖いから管理人室に逃げよう

逃げ出せるのはホースからだけで、別の嫌な人と向き合わなくちゃいけないんだけどね


「あははっ!これが最高の結果なんだ!親父の名誉もあの事務所も俺にはもうどうでも良い!この金があれば夢を叶えられる!」


扉を閉める瞬間、聞こえてしまった


『やっと正しい終焉を迎えるかと思ったが…残念だよ』

「他の管理者の状況を教えてもらえませんか」

『遅い者でも3人目だ。頑張りたまえ』


増えている

どういうゲームかは分からないが、俺は今明らかに負けている


「俺は今、どんなゲームのプレイヤーなんですか」

『さぁ、見せてくれ。お前の正しい終焉の迎え方を』


無駄だったか

だが、まるで録音の様に同じことを言うと思っていたが、ちゃんと人数は変わっているし、他の管理者という言葉も台詞から消えている

この声は誰かが話しているのか?

それならまだ聞きたいことは沢山ある


「このループはなんっ」


前回と同じ、これまでとどこか違う感覚だった

だが、続きを言うことなく暗闇に落ちることに変わりはなかった

NORMAL END「正しい終焉の迎え方」

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