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ナスタチウムの決意  作者: ゆうま
ルート③
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ルート③6日目昼

6日目昼会いに行く人物:鴬

昨日の展開を予想出来た者はいただろうか

多分無理だ

だって、守れないから殺すなんて、普通の考えじゃない


ただ、分かったことがある

苺とナンバーにとって、ウサギとブルーが脅威だということ

そんな人物は出来れば一緒に指名出来た方が良い

だから、わざわざ鴬を騙してまで苺を指名した理由が本当にナンバーが言った理由だけなのか分からない

それにブルーに指名してほしそうだった


もう守るべき人はいない

だから死にたい、殺されたい


そういうことだろうか

だとしたら今夜の夕食会、ナンバーはどうするだろう


このゲームのルール上今日ナンバーに会いに行くことは出来ない

ブルーに会いに行ってもナンバーを特定出来たことは分かっているから意味がない

それなら鴬の様子を見に行こう

好きな人に利用されて人殺しをさせられるなんて、普通じゃいられない

心配ではある


「鴬様」

「なんですか」


鴬の泊まる客室の部屋をノックするとドアを開けずに返事が返ってきた

一先ず反応する元気はある様子で安心した


「お食事をお持ちしました」

「頼んでませんけど」

「差し出がましいとは思ったのですが…」


ここで「心配」だと言ってしまえば、どの口がとなるに決まっている

続きの言葉は鴬の想像に任せる


「そう、ありがとう。今開けるわ」


普段話すときと同じ口調だ

どうしたのだろう

いつもと違う、それだけで怖い

そもそもの原因はお前だ!とかって刺されたりしないかな

ドキドキする間もなく開いたドアから覗いた顔は笑顔だった


「わざわざありがとうございます」

「いいえ。その…」


意外過ぎる反応で困惑しかない


「分かってます」


どこまでを指しているのか分からない

だけどそれを確認することは出来ないし、多分無意味だ


「アタシの家、結構な田舎にあるんですけどね、祖父母の家が都会の方にあって、そこから小学生が歩いて行けるくらいの距離にケーキ屋さんがあったんです」

「はい」

「旦那さんは普通にサラリーマンで、そのお店を切り盛りしてるのは奥さんで。その奥さんにすごく良くしてもらったんです。いつもは店内で少し同い年の男の子と話すだけなんですけど、一度だけ同い年の女の子と家の方でケーキを食べたんです」


そのケーキ屋がブルーの実家で、その女の子が苺ということか


「金井さんの紅茶が美味しいって、その女の子が自慢気に言うんです。この子はいつも家の方でご馳走になってるんだなって。今思えば嫉妬してたんです」

「鴬様、もしや―――」

「言わないで下さい。もう決心は変わりません」


涙目の鴬がサンドウィッチの乗った皿をカートから取る


「その女の子が笑顔で迎えが来たって言って出て行ったあと、お店のお子さんが「あいつらいつも一緒なのに今日はどうしたんだ。顔くらい見せろよな」って言ったんです。そのときはなんとも思ってなかったんです。でも、昨日分かりました」


言葉が見つからない

迷っている間に鴬は部屋の中に入って鍵を閉めてしまっていた


「こんな再会にして良いんですか!もう誰も死ぬ必要なんてないんですよ!」


ドアに向かって大きな声で話しかけたが、返答はない

聞こえてはいるだろうから、本当に決心が揺らぐことはないのだろう

だけど…


「ねぇ、このままなら家に帰れるよ。夢だってきっと叶えられるし、きみはきっと良い奥さんやお嫁さんやお母さんになれるよ。それでも殺すの」

「無理よ。だって、アタシはもう人を2人も殺したんだから」

「でもそれは」

「じゃあアナタはオレオレ詐欺でそうとは知らずに受け子をしてた人を犯罪者だと思わないの?」


ドキッとした

いつだったか俺が自分の立場を例えた通りの言葉だ


「それだったら俺だって殺人者だ。でも俺は家に帰りたいよ」

「―――そうね」


そう言ってから人の気配がしなくなった

多分部屋の奥で息を潜めているのだろう

これ以上は無理か


「どうしたら良かったんだ…」


呟いた言葉は静かな廊下に飲み込まれた

このやり取りを「あいつら」が見て笑っているのだと思うと、虫唾が走る

そうだ、こんなことを終わりにするには俺が勝てば良い

だが俺の勝利条件のヒントになる様なことはなにもない


今晩の夕食会で鴬が指名に成功すればゲームは滞っていないと認識される

少なくとも1日指名の成功者が出なかったことで滞っているとはされないだろう

ゲームが滞る以外、どうすればループが発生するのか分からない


こんな物語は許されない

だったらどうしたら良い

俺の望む物語はどんな物語だ?

鴬の恋が成就すれば良いのか?

ナンバーと苺が生き残っていれば良いのか?

誰も死ななければ良いのか?

いいや、そもそもこんなゲームが間違っているんだ

だけどループはデモンストレーション後からしか発生しない


それなら「あいつら」が望みそうな物語を考えてみよう

このゲームでなにがしたいのか


そもそもの疑問だが、俺が生き残ったときもループは発生していたのだろうか

もしそうだと仮定すれば、俺が生き残ったことは偶然ではない?

どうして俺だったんだ

だって、みんなの方が俺より優秀で―――もしかしてそれは関係ないのか?

だったらなにがどうして俺なんだ


っあぁーーーー全然分からん


ただひとつはっきりしたことがある

このルートが誰にとっても「正解」ではないということだ

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