ルート②2日目夜
6名が会議室Bの指定された席に座る
「ひとつ確認したいことがあるんだけど、良いかなん?」
夢と同じ台詞苺の台詞で2日目の夕食会は始まった
どうしてだ
「答えるかは質問を聞いてからってことで良いのかなん?」
夢同様それにすら返答はない
用心深く相手の出方を窺っているホースとブルー
興味のなさそうなナンバーとウサギ
不安に思っていることを必死に悟られない様にしている鴬
ここにも変化はない
「今日の10時からの話し合いに参加したか不参加だったかと、その理由が知りたいなーって思うんだけど、駄目かな?」
それを知りたいと思う理由は俺との会話が原因じゃなかったのか
だったらなんだ
わけが分からない
「ねぇ、うぐい――」
「それを知ってどうする気だ」
「みんながどんな考えでこのゲームに挑むのか、それが知りたいんだ。いくらなんでもルール違反で死にたくないからって理由で夕食会に参加している人を指名したくないからねん」
発言を邪魔されたことに不服そうな顔をしたが小さくため息を吐いただけでなにも言わなかった
ここも一緒
「それは名前を知ることが出来れば指名するということか」
「違う違う。全然違う名前だって指名されれば誰だってドキッとするでしょ?それだけだよん」
ブルーが訝し気な視線を向ける
答え初めてしまう前に夕食を持って行くか?
駄目だ、間に合わない
「納得が出来るわけではないが説得はされてやる」
「じゃあブルーからお願いしても良いかなん?」
「俺は参加していない。理由は意味がないから。ただそれだけだ」
始まってしまった
こうなれば全員が発言するまで俺が入って行っても止まらないだろう
いや、この時点では俺が盗聴や監視をしている話しは上がっていないはずだ
行くか?
「参加しようとした。でも誰もいなかった」
「それは嘘だよ」
「もしかして、10時10分くらいにはもう部屋に戻った?」
「そうだよ」
「それはごめん。寝坊して10時15分に部屋を出た」
「そう言われると嘘だと言えなくなるね」
ホースが苦い顔で笑う
どうする
どうしたら良いんだ
「最後まで残る自信はない。出来れば死にたくはないけど、生に執着する気持ちはない。だから脱出する人の手助けが出来れば良いと思って」
早く決断しなくては話しが進んで行くだけだ
「アタシが参加しなかったのはルールを読んだからよ」
「もしかして1人で生き残ることを目標にするつもりなのかなん?」
「違うわ。だけど6人全員で生き残って失いたくないものがあるのよ。だからひとりで生き残ろうとする人を否定することなんて出来ないわ」
だが、ここは全員に全員の指針を理解しておいてもらった方が良いんじゃないか?
「…………ボス、強かった。……時間、過ぎた。……ごめん」
「つまり参加する気はあったけどゲームをしていたら時間が過ぎてしまっていたってことかな」
無理にこの会話の流れを変えても、翌日に続きが始まるだけだろう
それなら今日の内に済ませてもらって、明日流れを変えよう
「…………そう」
「参加しようと思った理由を聞かせてくれるかな」
「…………ウサギ、同じ」
「ちなみに、行こうとした時間は何時だったのかな」
「…………10時半。……一応、行った」
「その時間ならウサギと鉢合わせすることもないだろうし今のところ矛盾はなさそうだね。苺は満足出来たかな」
「うん。みんな答えてくれてありがとねん」
ノックをして3秒待ち、扉を開ける
「俺はここからの脱出やゲームに参加しない方法を探すことを諦めたよ。仮にウサギとナンバーが時間通りに来ていたとしても積極的に意見を出すことはないだろうしね」
覚えている限り俺の行動と発言したタイミングまで同じ
大して知りもしない人物のことをここまで正確に夢に見ることが出来るだろうか
多分無理だ
それなら、これはなんだ
「鴬が言った考えの人はいるのかな」
「それはどっちだ」
「どっちでも良いよ。自分の目的のためなら人を殺しても構わないと考えている、という点ではどちらも同じだからね」
手を挙げたのは夢と同じくナンバーとブルー
意外な人物が挙げたことに5人が驚いている様子も夢と同じだ
「…………最終日、6人、生きてる。……誰か、殺す」
「鴬もそういうことだよね」
「そうよ」
「俺もだ」
「苺はあんなことを聞いたくらいだから積極的に参加するのかと思ったけど、どういう考えなのかな」
その場の全員の視線が苺に集まる
「負けたくない人がいるんだ。だからもしその人がこの中にいると分かったらその人にだけは負けない。分かってから準備してちゃ遅いでしょ?それだけだよん。基本的にはゲームに積極的に参加する気はないかなん」
苺の答えも夢と変わらない
なんなら一語一句間違っていない気がする
だが、俺とのやり取りに変化はあった
それなのにどうしてこの場で同じやり取りになったんだ
俺とのやり取りで苺が得たものはなにか別のものだったのだろうか
「分かった。俺も出来ればゲームには参加したくないな。ウサギはどうかな」
「全員で生きて帰りたい。あんなもの、なくなってしまえば良い」
料理が揃うと全員が無口になって食事を始める
当然俺は部屋を出て監視カメラを見る
ここまで夕食会で特に変わったことはない
全員が語ることになった各々の方針やそのやり取りなんかは夢と変わらない
それともうひとつ変わらなかったことがある
夢で不思議だと思った、誰ひとりとして生き残りや指名成功の報酬について触れなかったことだ
高校生が500万1000万という金額を提示されれば目がくらむもの
それなのに全員がお金の話しを一切しなかった
それがなにを意味するのか、今度はもっと真剣に考える必要がある
「掛け声は必要かな」
気付けば全員が食事を終えていた
「少なくともホースは止めておけ。罪悪感が増すだけだ」
「ありがとう」
ブルーがわざとらしく大きく息を吸ったのを合図に全員が誰かを指し示して名前を言う
夢と同じく、全員がその手を自分の意志で下すと映し出された映像を見る
ホース 好きな色:ブラウン
ブルー 将来の夢:プロ選手
ナンバー 好きな数字:偶数
苺 好きな動物:大型犬
ウサギ 家族構成:母
鴬 好きな動物:鳥類
全員がなにも言わずにバラバラに部屋を出て行き、そこで監視カメラの映像が消える
そこまで正確に覚えているわけではないが、順番まで同じだ
ここまで夢と同じだと気味が悪いという言葉では片付けられない
こんなフィクションみたいな設定だ、もしかしてループなんて…してないよな
同じといえば…なにも考えていなかったが、俺が今夜出した料理も夢と同じじゃないか?
それでなにかが変わったとは思えないが、無意識に同じ行動をしているということが重要な気がする
もし、仮に、ループしていたとして、その記憶が俺にだけしかないとする
あの6名に記憶があるのなら逆にあれだけ同じ行動が出来るはずがない
だから仮に俺だけだとすれば、何度か繰り返すことでしか勝利することの出来ない条件である可能性は十分にある
そして夢で聞いた最後の「あいつら」の声
今回の貴様は見るに堪えなかった。次回に期待させてもらおう
確かそう言ったはずで、その言葉にも納得出来る
これはゲームなんだ
どんな非現実的なことでも考えなくてはいけない
ループしていると考えて進めても差し支えないだろう
何度ループが出来るのか分からない状況だ
あの失態を繰り返すわけにはいかない
必ず勝つ
3日目昼誰に会いに行くか
鴬 ホース




