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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
7/71

7、盗賊とエルフ戦士 1

設定説明回です。

 大国レインニジアの城はとにかくでかい。小さな山すらをぐるっと囲むほどだ。

 その城の城下町に近い部分は一般人にも開放されている南地区。

 そこに居酒屋がある。もちろん城の中だ。昼間は食堂となっている。

 元々は城に勤めるものの為に作られた場所だが一般人にも開放されている場所だけあって人が多い。その為広さもかなり広ければ従業員の人数も多い。

 ここを纏め上げている責任者はちょっと変わった人物なのだが、それはいつか機会があったらご紹介しよう。

 賑わい盛んな食堂のとある一角。

 一つのテーブルに二人……と一匹が座り、その周りに妙な空間が空いていてからそこを囲むように人が群がっている。

 もちろんテーブルに皆座っている。しかしチラチラと視線をよこしてはポツンとしている異様な空間の中にいる人物達を見ていた。


「「属性」と「特性」についてはご存知ですか?」

「教養の学業で習ってます。ええっと多分基礎だけだと思いますが」


 食事をしながらそんな会話が交わされる。

 質問を投げかけた者はテーブルの上に座り、自分専用のスプーンを取り出して器の中のスープを飲んでいた。

 テーブルの上に座るなんて行儀が悪い、と思うかもしれないがそれもしょうがないこと。

 彼女は小さな妖精……精霊だ。大きさは成人の頭一つ分というところだろう。触角があり妖精の羽がありふさふさの尻尾が揺れている。

 名前はシオンという。つい先日、国王専属騎士であるレイナに出会ってからそのままくっついてきて今はこの城に居ついている。

 そのシオンに質問を投げかけられたのは16、17歳くらいの青年。まだ幼さを残す顔立ちに黒に近い青髪を耳が隠れる程度の長さだ。いつも穏やかそうな表情を浮かべている。

 ぱっちりとした目は琥珀色。光の加減によっては金に見えなくもないがそこまで鮮やかでもない。

 彼の名前はレイ。先程述べた国王専属騎士のレイナの弟……義弟である。

 レイは質問に答えてからパンをちぎり口の中へと入れ噛み締める。


「「火水光闇かすいこうあん」と「天地聖魔てんちせいま」ね。特性が火水光闇かすいこうあん、属性が天地聖魔てんちせいまになるわね」


 話を付け足すように言葉を継げたのは先程から名前を挙げているレイナだ。

 レイの向かいに座りフォークでサラダをつつきながら食事をしている。その表情は義弟であるレイと同じく穏やかだ。

 騎士の制服を身につけてはいるがマントは現在は取り外し椅子にかけている。肩まである癖のある色素の薄い青髪で少し釣り上がった目尻で緑色の目をしている。


 なぜこの三人がいるテーブルから周りはがらんとしていて遠巻きから見られるのか。

 まずレイナがここの食堂を利用してるせいだ。

 国王専属騎士といえば誰もが憧れ尊敬する存在で、この国ではたった一人、レイナだけがその役職についている。その立場から普段は誰もが利用できる大食堂のようなところは使用しない。

 もっと奥の中枢、時には王宮で過ごすこともあるという。

 そんな人物がこんな大食堂で食事を取ることは滅多になく、故にかなりの注目を浴びているというわけだ。


 それともう一つ。

 テーブルの上に座る精霊の存在だ。

 妖精、精霊が普通に存在してる場所ではあるが、だからといって滅多にお目にかかれるわけではない。

 こんな人が多く色んな思考、魔力が混ざっていそうな場所に精霊がいるとはほぼ有り得ない事項だ。

 物珍しい存在につい目がいく、というわけだ。


 そしてレイナとレイは、レイナが行く場所は大体こういう状態になる為もはや慣れきっている。

 シオンも誰それにどうに見られようと大して気にするような性格ではないらしい。

 そんなわけで異様な空間が出来ていようとも三人は平然と食事をすることが出来るのだ。


「では簡単にそれぞれの特徴を説明いたしましょう。ああ、そうそう。私に敬語は不要ですよ。ただの精霊ですから」


 そういってシオンはレイにニッコリと微笑む。レイもそれに頷いた。

 食事をしながらこんな勉強会のような形になっているのは、先程レイがシオンに


『魔法について詳しく知りたいのですが、教えてもらえますか?』


 と聞いたのが始まりだ。

 決してレイは魔法に疎いわけではない。魔導騎士見習いというくらいなのだ。魔法の基礎くらいしっかり身につけているし、扱える。

 それでも向上心があるのか、精霊という存在を目にして聞いてみたくなったようだ。

 レイの質問にシオンが答えたのが先程の「属性」と「特性」である。

 魔法を使うにあたってこの二つは欠かせない要素となる。



 まず、属性。

 生まれた時から備わっている属性。変える事も種類を増やすことも不可能。

天地聖魔てんちせいま」と呼ばれ4つの種類がある。

 それぞれの簡単な特徴はこうなっている。


「天」……天空の属性。主に太陽に関連するものを扱うことが出来る。火特性と相性がいい。水特性とは反発する。

「地」……大地の属性。四属性の中でもっとも力が強い。大地そのもの、植物関連を扱うことが出来る。水特性と相性がいい。火特性とは反発する。

「聖」……聖生の属性。精霊に近く、治癒や空気に関するものを扱うことが出来る。光特性と相性がいい。闇特性とは反発する。

「魔」……魔生の属性。魔王に近く、物を新しく生み出す力にたけている。未知数が高い属性で主に魔獣や魔人が多く、人間でこの属性を持っているのは稀である。その為非常に重宝される。闇特性と相性がいい。光特性とは反発する。



 次に、特性。

 身につけることが出来る特性。相性の良し悪しはあるがそれでも全て習得することは可能。しかし殆どは1特性のみである。

火水光闇かすいこうあん」と呼ばれ4つの種類がある。

 それぞれの簡単な特徴はこうなっている。



「火」……火に関する特性。火を扱うのが多く、攻撃系が多い。魔力の量により威力が変わる。威力は高い。

「水」……水に関する特性。水を扱うのが多く、攻撃系が多い。少ない魔力でも多種多様に扱える。調節が難しい。

「光」……太陽に関する特性。光を扱うことが出来る。人体に関するものも多く、回復系、幻術系等。

「闇」……夜に関する特性。星を扱うことが出来る。予測、時間時空等を扱うのが多く、星読、時空操作等。



 さらに4つの特性には上位特性が存在する。


「火特性」→「元素特性」

「水特性」→「氷特性」

「光特性」→「霊特性」

「闇特性」→「無属性」


 一番恐ろしいのが「元素特性」とされている。

 まぁ元素という名の通り、物質そのものに介入することが出来る魔法だ。分解、生成、組み換え、そういういったものが容易く扱えてしまう。しかし元素特性を持っているものは本当に稀である。存在しているのかどうかもはっきりとしていない。

 だが確かに火特性の上位として元素特性はある。


 逆に一番簡易とされているのが「氷特性」。

 ただし、氷特性に上限はなく、どこまでも能力を伸ばすことが可能な特性でもある。どこかの伝記に氷特性を持ったものが一つの大きな島を凍りつかせて、砕き、沈めたこともあるという。


 そして「霊特性」と「無特性」

 霊特性とは、精霊の力を扱うことが出来る特性なのだが、純粋に精霊の力を扱うだけなら「精霊使い」という者がいる。

「精霊使い」は精霊から力を借りて魔法を使ったり、精霊と契約して能力をつかう者達のことだ。

 だが「霊特性」は精霊を経由することなく自分の力として精霊が有する力を使うことが出来る特性となる。

 人でありながらもっとも精霊に近い存在。「霊特性」を持っているものはそう呼ばれている。


「無特性」は簡単に言ってしまえば何もないところから生成することが出来る。

 その範囲は制限がない。魔力がなくても「魔力」を生成することすら可能である。さらに生成するものは全ての属性、特性が可能といわれている。なおかつ時空関連において様々なことを可能にしている。


「まぁ仮説ですが「無特性」を持っているものは、精霊界「アースゲート」と霊界「ゲーゲカイ」も行き来が可能とすら言われていますね」

「仮説、なんですか?」

「はい。その事実を記した書物や歴史はありません。時空関連を極める無特性なら行けるんじゃないの? 程度の認識です」

「わぁ、凄い適当」

「そもそも上位特性を持っている者自体が少ないですから。そこまで辿り着いて成功例を残すというのがほぼ無理難題なんだと思います」

「なるほど」

「そうそう。無特性にある「生成」ですが元素特性の「生成」とは異なるものになります。元素は「そこに作る元があって生成できる」ものです。無は「何もなくても生成できる」ものになります」

「そう考えると無特性の方が怖いんじゃないのかな?」

「いいえ。元素の方が恐ろしいですね。無特性はあくまで作り出すに特化していますので新しいものを作り出すことも可能ですが出来上がったものに対する効果は低いんです。対して元素は新しく作り出すことは出来ませんが既に存在しているものを作ることができ、なおかつそれを様々なものに組み替え強化が可能。消滅させることも出来ます」

「……消滅は今ここに存在しているものも可能?」

「可能です。「物質」であればなんでも可能です」

「…………」

「まぁそういうことですね。だから恐ろしいといわれているんです。元素特性は」

「でも元素に限らず、上位特性は全てが絶大な能力を有するというわ。だからこそそこを目指す人達も多いのだけどね」

「そうですね。扱い方ひとつでも間違えれば大変危険なものですが秩序に従い扱えばそれもう凄い能力ですよ」

「最後、説明がちょっと面倒になってきたね」

「まぁその辺は気にせず。さて、特性についてはもう少し追加があります」

「追加?」

「はい。「異端特性」です」


 特性にはさらに「異端特性」というものが存在する。

 言ってしまえば突発的に生まれた特性だ。

 4特性を極めていくうちに稀に発生する特性で、発生条件については謎とされている。

 ただどの特性にどれが生まれる、というのはわかっている。


「火」は稀に「雷特性」が生まれる。

「水」は稀に「風特性」が生まれる。

「光」は稀に「緑特性」が生まれる。

「闇」は稀に「毒特性」が生まれる。


 どの特性も既にある4特性と能力的には大差ないのだが扱えるものが違ってくるのだ。

 習得しようとして習得できるものではなく、大体が偶然習得できた。もしくは生まれながら持っているのどちらかである。

 あとは魔人や獣人など種族で有してることもある。

 人間でこの特性を持っている者は少ない。

 ただし、上位特性と比べたらまだ異端特性の方が習得する率は高く、希少性でいえば上位特性の方が上だ。

 異端特性を持っていれば「え!? 何それ凄い!! めっちゃ偉い人になれるんじゃない!?」という扱いが殆どだ。

 実際、この城にも異端特性を持っているから結構上の重役についている者もいる。


 さて、これが「属性」と「特性」の簡単な説明になる。


「それを踏まえてレイの属性と特性を見るとこうなりますね」


 属性:地

 特性:水


「人間の多くは「地属性」です。一般的ですね。そして習得したのは水ですか」

「うん。姉さんほど魔力は高くないからアレンジを加えていく方法で魔法を使おうと思って」

「地と水は相性がいいので無難ですね。そもそも地なのに火を習得してるレイナがおかしいんですけど」

「そんなことはないわ。相性が悪くても習得してる人なんていくらでもいるじゃない。私はどちらかというと自分の能力面とかを考慮して火を習得したのよ」

「まぁそういうことにしておきましょう。水は地を育てます。そう考えて魔法を覚えていくと色々習得しやすくなると思います。魔法の種類はそれぞれ単独でも可能ですが特性と属性を組み合わせて扱ったほうが効力は高いですからね」

「なるほど。……そういえばシオンさんは僕の属性と特性がわかるんだね」

「ええ。「観察眼」を持っていますので」


 本来であればそれぞれが持っている特性と属性は誰かにわかることはない。大体自己申告制だ。

 そして調べない限りわからない。

 殆どが生まれた時に「鑑定士」に見てもらって「属性」を把握する。

「特性」は習得した時点で自分でわかるようになっている。


 そして先程シオンがいった「観察眼」

 これは生物が持つ「ステータス」を見ることが出来る能力である。

 こういった能力、もしくは称号などを「スペルティ」という。

 この辺の説明はまた別の機会にしよう。


「観察眼」を持っている者は大体「鑑定士」もしくは「占い師」をしている。

 特に鑑定士は誰もがお世話になる為、観察眼を持っている者は大体が鑑定士になっている。


「「千里眼」もこの場合同じ扱いになりますね。他にも色々ありますが魔法にはあまり関係ないので一旦勉強会は終了しましょう」

「あ、はい。ありがとうございました」

「基礎と簡単な種類しか説明してませんがお役に立てたのなら幸いです」

「…………シオン」

「大丈夫です。ちゃんと時と場合を考えてますので、ご安心下さい」


 何を。と聞かれれば答えはひとつ。

 請求書だ。

 シオンが親切だけでこんな丁寧に説明をするわけがない。

 ただし場所が場所だけに流石のシオンも自重はしているようだ。多分請求書は後程レイナの元へと届くのだろう。

 いや、いいのだ。可愛い弟の成長に繋がるならそれぐらいの出費は痛くはない。

 むしろレイが望むならいくらでも出して勉強を請うてもいい。

 そう思うくらいにはレイナはレイを大事にしている。

 血は繋がっていないが大切な家族。レイナにとって守るべきものなのだ。

 とはいえ、請求される金額は気になる。

 ぼったくられそうで。

 ニッコリ笑うシオンに対して、レイナは口の端が僅かに引きつった。

 それでも穏やかな表情は崩れない。


「レイナ殿」


 食事も終り、一息ついてた時に不意にレイナに声がかけられる。

 声がした方を向けば、思わず声を上げそうになったのをぐっと堪えた。

 思わず嫌そうに顔を顰めかけたがそれも堪えた。

 声をかけてきた人物はしっかり此方を見据えて近くまで近寄ってきた。

 本来ならこういった場所にレイナよりも近寄らない人物。


 見た目はまだ歳若い、すらりとした体型で身長もそれなりに高い男性。

 白銀の長髪をゆるく後ろで一つに束ね、白い耳と尻尾がついていてる。

 切れ長の釣り目に透き通った青藍色の瞳。

 その顔には特に感情を乗せることなくこちらを見下ろす。


 白猫ビアンキャトスの亜人、サシィータ・ベジニア


 この国の宰相である。


「これはサシィータ殿。私に何か用でしょうか」

「国王陛下がお呼びです。来て頂けますか」


 伺いではない。もはや命令だ。

 レイナは耐えた。何に。口から拒絶の言葉を吐きそうになったのを。

 ふぅ、と溜息をひとつついて気持ちを整える。


「のんびりしてないでさっさと立って下さい。時間が惜しい」


 耐えた。手が出るのを耐えた。


「ええ、それは失礼しました。今行きます。……レイ、また後でね」


 すっと音もなく立ち上がり、にこりとレイに笑いかけてからレイナは歩き出した。

 その表情は先程と変わらず常に穏やかだ。

 それを見て宰相であるサシィータも歩き出す。こちらも眉一つ動かさずの無表情だ。

 それを見送る形になったレイは軽く手を振って姉を送り出した。

 テーブルに座るシオンは相変わらずニッコリ笑っている。

 そんな状態を見てレイは思う。


(なんかツラの皮が厚い三人だなぁ)


 もちろんそんなことは口にせず。レイナ達が見えなくなってからテーブルの上の食器を片付け始めた。

 まるで何事もなかったかのように。

 こうして今日もまたレイのスルースキルは上がっていく。




●1248

◆3

■6、7、8

□4、5、6

△1

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