65、賊と貴族と義賊 28
しぃん、と静まり返った森の中。本来ならば人気などと呼ばれるものは存在しないはずのその場所に、静かに立つ人物がいる。
何をするでもなく、ただ木に背を預けて、まるで寝ているかのように目を瞑ってそこにいた。
「ねぇえ。集合場所ってここじゃなくてもよかったんじゃない? わざわざこんな奥を指定しなくていいと思うのよぉ」
「同意見。めっちゃ大変だったんだけどここにくるの~」
そこへまるで場違いな声が響く。それに今まで目を閉じていた人物が嫌そうに顔を歪めた。
「テメェらの配慮が足んねぇからこんな場所になったんだろうが。もっと楽な場所だと寄り道ばかりしやがって集合場所に来ねぇだろ」
「それもそうねぇ。観光くらいしたいわぁ」
「つか、面倒で来ないよね~」
「そういうとこだっての! 阿呆が!!」
協調性のない返事に思わず苛立って声を返すと、舌打ちをして背を預けていた木から離れる。
それからそれぞれの顔を見て、話を促した。
「ま、痕跡は残してないから追っては来ないんじゃない?」
「そういやぁ、アイツどうしたよ。俺らの「雇い主」さんはよ」
「え~邪魔だし重かったから最初の爆発場所に捨ててきちゃった」
「おま……後始末どうすんだよ。あの野郎、色んなの残してやがるから生かして全部吐かせろって言っただろうが」
「あらぁ、後始末ならペット達が処理してくれたわよ。ふふ、賢いでしょ。ついでに一緒にいた餌も食べてきたみたい。何か喚いてたみたいだけど覚えてないって言ってたわぁ」
「おう、ま、それならなんとか報告出来るわな。「主」の頼みだからテメェらとやってたが、今後は勘弁してもらいてぇぜ……」
「僕は楽しかったけどなー! それと君を研究対象にしたかったけど、流石にマスターに怒られるよねぇ」
「その前に俺がテメェを殺してるつーの」
「あらあら、でも私も収穫があってよかったわ! 好みのエルフ君見つけちゃったのよ~!」
「あー! それなら僕も! 精霊とか絶対捕まえたかったなぁ。あ、ねぇねぇそっちにも一匹いたんでしょ? どうだった!?」
纏わりつてきた相手を適当にあしらってから、問われた内容につい数刻前までのことを思い出す。
思い出した内容に思わず眉を顰めたところで再び同じ質問が耳に入ってきた。
「ねぇねぇ、どうだったどうだった!? 魔力の違いとか見た目とか質の違いとか、やっぱり細部まで採取して調べてみないとわからないかな!?」
「無駄にテンション上げんな。ウゼェ。……あー、なんだっけ? 精霊? お前、あの精霊には手ェ出さねぇ方がいいぜ」
「え? なんで?」
「別にどうでもいいんだがよ、どうも俺はアイツが苦手だ。雰囲気? 匂い? みたいなのがどうもいけすかねぇ」
「あら、珍しいわね。そんなこと言うの」
「あの精霊、胡散臭ぇぞ。ま、俺が言えた義理じゃねぇがな。本当は精霊じゃねぇんじゃね?」
えー!? と、真横で大きな声を出されて咄嗟に耳をふさぐ。
否定されようがそう思ったから口にしたまでだ。しかし、これ以上は面倒になったので口を閉じた。
そして思い出す。胡散臭いと思えたのはあの言葉を言った時だ。
『おや、私はレイナの付き添いですからね。普通に口出しますよ。おかしいですか?』
おかしいですか? だと? そりゃおかしいだろうよ!
なんで付き添いなんだよ。普通、仲間じゃねぇのか。そこは。
しかも一度も手助けしやがらなかった。本当に見ているだけで過ごしやがった。
アイツ、なんであんな魔道具に頼ってんだ。精霊ならほとんどのこと自分の力だけでどうにかなるだろうに。
何故アイツはあの女騎士を助けなかった。仲間だと言わなかった。自分の力を使わなかった。
なんで、あそこまで言い方が卑屈なのか。
そんでもって、どうも気になる気配があった。よくわからねぇが。なんとなく俺は嫌なもんだった。
アレは人間にはわからねぇもんだ。俺だからこそわかったっつーもんだ。
だが、なんで俺がわかるものをアイツから匂ってくる。アイツは精霊だぞ。何故だ。
「胡散臭すぎるだろうが……本当に精霊なのかよ、アレは」
口から出た言葉はあまりにも小さすぎて隣で喚ていた奴には聞こえなかったらしい。
目的も達成したこともあり、この場所へいる理由もなくなった為、いまだに喋っている二人を置き去りにして歩き出す。
ようやく終わった依頼も「主」に報告して完全に終了になる。
暫くは自由だ。何をしようか。
ああ、そうだ。アレは嫌なものだったが、もう一つはとても楽しかった。それの様子を見に行くのもいいかもしれない。
「なんだ、今更気づいたのか?」
「これだから一般常識の範囲外を生きる王族ってのはーーー!!!!」
とても天気がいいとある日の謁見の間でレイナの叫び声が、隅々まで響いた。
無事、王都まで帰ってきたレイナが向かったのはもちろん国王の下。報告と苦情を言いに。
今現在この謁見の間にいるのはレイナと国王のみ。宰相であるサシィータは今回の件で忙しく動き回っている為、姿を見せてはいない。
故にオーバーアクションしたところで諫める者はいない。普段も諫めてることは殆どないが。
「国王様知ってて教えたでしょう!? なんでその説明しなかったんですか! あの技がドワーフ特有とか! 私の人種疑われるところでしたよ!?」
「いや、むしろよく今まで気づかなかったな。人の言葉を鵜呑みにしてはいけないと経験出来てよかったじゃないか」
「国王の言葉を疑うとか不敬で私が吊るし首じゃないですかーー!! おかしい基準がおかしい!」
「お前には才能があった。それだけのことだ。よかったじゃないか」
「綺麗にまとめようとしてるけど、そうじゃないですよね!? そもそもなんでドワーフしか使えないような技を人に教えようとしたんです!?」
「なんとなく」
「なんとなくで人の人生狂わせないで下さいませんか!?」
「まぁ、実際教えたら問題なく使えたんだ。何が不満なんだ? ん?」
「今さっき言いましたが、人種疑われたんですけど!? お前、人間じゃないだろとか言われる身にもなってくださいよ!」
「はっはっは! 楽しそうじゃないか」
「……規格外の人物に、規格外のことを問いても意味なかったですね。わかりました。今一度、自分の習得している技全て初心に戻って調べなおすことにします」
「一気に俺の信用レベルが落ちたな」
「落ちて当然のことをしたんですー! というか、割と昔からそういう意味での信用レベルは低いですからね!?」
割と真面目に憤慨しているレイナではあるが、国王は相変わらずそれを笑って流す。
レイナが国王に苦情を言っているのは自分が習得してる魔法のことだ。例の鉱物生成。
アレを教えたのは国王であるツォリヨなのだ。鉱物生成だけではない他にも様々な技を面白半分……いや、レイナの才能を見込んで教えてくれたのだ。多分。そう思いたいというレイナの願いも込めている。
しかし、その教え込まれたものが常識の範囲外も含まれているとなれば色々考えなさねばならない。
改めて王都の図書館に行って調べよう……
「そんな些細なことは置いておけ。で、もう一つ報告することがあろうだろう」
「私にとっては些細なことじゃないんですが!? ……それにもう一つの報告も私がしなくとも既に耳に入っているでしょう」
「お前の意見が聞きたい」
ふと先程までのにやけた顔と軽い声音を潜め、手に持つ扇を広げ改めてツォリヨはレイナに問いただした。
改まったという程ではないが、幾分か落ち着いた雰囲気を出すだけでツォリヨは威風堂々とした国王という姿になる。
その姿を見てレイナも息を整えて身を引き締めた。
そもそもいつもこうしていればこんな無駄な言い合いをせずにすむのだが……と、思いはするがそれを口にすることはない。
その辺は既に諦めたからだ。溜息も心の中だけでついた。
そうしてレイナの見解を報告と共に述べる。
「ふん、古き扉についてはシオンと同意見ではあるな。とはいえ、向こうが処分する前にこちらが口を出すことになってよかっただろうよ」
「それは国の沽券としてですか?」
「そういうことだ。だがやりすぎてもいかん。故に追及せず不明のまま終わらせたのだ」
「国としてやることはやって、裏との禍根は残さず、というところですね」
「そんなところだ。だが、そんなことよりも他のところに目を向けるといい」
「他、ですか?」
他と言われてレイナは考え込む。正直、他に気にするところが多すぎてどれに注目すればいいのかわからない。
だが、わざわざ国王が言うくらいなのだから国がらみなのだろう。なおかつ裏関連は今終了した。
ならば、国として気になる部分といえば
「……反女神派であったことでしょうか」
レイナが答えればツォリヨの口の端が僅かにあがる。
どうやら当たりだったようだ。
「今回、主犯が反女神派であったこと。そして以前の宗教学会を覚えているか?」
「そもそも忘れることが出来るわけがないかと」
「いや、アレはアレで面白かったがな」
「そういうのいいから! 本題をどうぞ!」
「ふむ、そこで反女神派が何をしたか覚えているな」
「ああ、あのトンチキ召喚ですね」
「アレは失敗に終わったが、召喚魔法を研究していたことには変わりがない。あれ以降、女神の塔が反女神派を監視対象にしている」
「それは初耳ですね」
「我が国が当事者だからな。俺にしか聖女の使いをよこしていないようだ。様子見の段階だから大っぴらにするわけにもいかんのだろう。それでいて然程間を置かずに今回の事件だ」
「反女神派ならいざこざが起こっても、そういう宗教なんで気にしないのがいつもですが……流石にレインニジアで短期間に二回目。しかも一回目が女神の結界に歪みを与えかねない召喚魔法というのが痛かったですかね」
「せめて接続先がアースゲート専門ならばどうでもよかったのだがな。あの世界は女神の結界すらも関係してはいないからな」
「召喚魔法が精霊界に繋がったなんて話は聞いたことないですよ」
「まぁ今ここで予測したところで何の意味はない。今俺が言えることは「注意」していろということだけだ」
「注意」ねぇ……
ここでそう言うということは、調べろってことだよな……しかも国の力を使わずに。
面倒だな、という言葉もレイナは飲み込む。そもそも国王専属騎士になった時点で面倒ごとしかやってこないのだ。今更である。
国王のその言葉にレイナは返事を返すと、ツォリヨは広げた扇を閉じてにっこりと笑った。
これで話は終わりということだ。
それから暫しどうでもいい会話も交えつつ二人は話をして、レイナは謁見の間を後にした。
これからどうするか。取り敢えず図書館に行って自分の調べごとが先だ。ついでに最近の反女神派「新大地聖教」についても記録を見てみるとしよう。
そう考えつつ長い静かな廊下を一人歩いていくのだった。
その後、新大地聖教が再び厄介ごとを引き起こすのだがそれはもう少し先の話である。
城の後ろに佇む山の中。
澄んだ空気にしっかり佇む大きな木の上。そこから薄っすらと城の窓が見える。
そう、丁度謁見の間があると思われる場所の窓が。
「しかし、レイナは気づいているんでしょうか。何故自分がいままで鉱物生成がドワーフ特有だと知らずにいたことに」
「理由があるんですか?」
「理由もなにも、ただ単に「誰も気にしなかった」だけですよ。この城にいる者達が「一般人」なわけないでしょう」
「あー……」
「常識外の者達ばかりだからこそ、レイナの「普通と違う」ところがあっても気にしないんですよ。しかもレイナは寮育ちです。この本隊所属の騎士団の寮であり、その騎士達のトップに立つ団長の娘として育ったんですよ。むしろ周りに「普通」というのが存在するわけがないのです」
「……育った環境からして一般常識外だったんですね……」
木の上でそんな会話をしている小さい精霊と大きな精霊。
ここからレイナの姿が目視できるわけではないのだが、まるで先程のレイナと国王との会話を聞いていたかのように二人は話をしていた。
「ところでシオンさん、それは「千里眼」ですか?」
「ええ。そうですよ」
「鑑定眼ではなかったのですね」
「スペルティは成長する前のものも当然使えます。性能がまるで違うものもありますからね。私は「千里眼」も持っている、とは言っていないだけです」
「もしや「万物の心眼」も……?」
「さて、どうでしょう?」
セイルスの問いは軽く受け流してシオンは笑う。
「千里眼」は遥か彼方まで見通すことができ、透視、聴取も可能なスペルティである。
その千里眼を使い、シオンは今までのレイナと国王のやり取りを見ていたのだ。
セイルスにはその能力はない為、本来なら見聞きすることは出来ないのだがそこは精霊同士。「同調」という精霊特有の能力でシオンの千里眼を共有していた。
「概ね順調というところでしょうか。今回は私達精霊が口を出す予定はなさそうです」
「はい、そうですね。……あの、シオンさん。それとは別にお伺いしたいことがあるのですが」
珍しく少し言い淀んでからセイルスはシオンに問いかけた。
シオンは僅かに首を傾げる。
今し方言い淀んだのもそうだが、そういえば珍しくセイルスはシオンを自分の傍に置こうとしない。
いつもは定位置だと言わんばかりにシオンを自分の肩に乗せるのだが、今現在シオンが座っているのは木の枝だ。
その横にセイルスが座る形になっている。
おや? と益々シオンは首を傾げた。
そしてシオンがそんな考えに耽っていると、言い淀んでいたセイルスは次の瞬間にはいつもの笑顔を浮かべてシオンへと視線を合わせた。
「シオンさんはシェーダさんのことをどう見ていますか?」
それはまた唐突な……
と思ったところでシオンは考え直した。よくよく考えれば唐突でもないな、と。
シオンはどこか感心するようにセイルスを見つめ返す。
「気づいていたのですね」
「僕も成りそこないのようなものですが精霊ですので。先程……いえ、この王都に戻ってきてからでしょうか。シェーダさんの……違いますね。シェーダさんに似ている気配を感じます」
どこか探りながらセイルスは口にする。
セイルスはずっと違和感を感じていたのだ。何かにまとわりつかれているような、ずっと見られているような、そんな曖昧な気配。
しかしそれは今にも消えてしまいそうなほど薄い。場所によってなくなったり強くなったり。それにこれは自分達が関係しているというより自分達がその気配の範囲に入ったり出たりしているような感じもする。
その割には視線のようなものも感じるのだから少し混乱もしてしまう。
セイルスのその感じている物をシオンは正確に理解して、そして笑顔で頷いた。まるでよくできましたと言わんばかりの笑顔だ。
「安心してください。アレはシェーダではありませんよ」
「この気配の正体を知っているのですか?」
「……まぁ、そうですね。関わりたくはありませんが、それは不可避でしょうね」
「?」
「シェーダに関してもかなり個人的な感情だった為、特に口にすることはありませんでしたが、彼はどうにも苦手でして。近づきたくないような気に障るような、そんなものをずっと感じていました」
「それはどうして?」
「私も初めはよくわかっていませんでした。ですが、王都に帰ってきてこの気配を見つけて理解しました」
「……と、いいますと?」
「シェーダとこの気配の持ち主が似ているのです。だから「嫌い」なんです」
「え?」
「ええ、本当に。気にくわない。実に気にくわない。出来れば一生関わりあいたくない相手です。ですが私の立ち位置的にそれも出来ません」
「…………」
「シェーダがそれに似ていたせいで、無意識に私も気に障っていたようです。もっともどうやらシェーダも私に対して同じような感情を持っているようでしたが」
「シオンさんがそこまで言う相手が誰か聞いても?」
「相手が姿を見せていない以上、お話は出来ません。ですがそう気にすることもありませんよ。どうせ関わることになります」
「それは確定ですか?」
「違うのですか? セイルスは私から離れる予定はないのでしょう?」
不思議そうに口に出された言葉にセイルスは思わず目を見開いた。
その言葉を理解してくると今の気持ちとは裏腹に口元がムズムズとしてきた。それを知られたくなくて視線を少しだけ彷徨わせる。微かに顔が熱くなった。
「……一緒にいていいんですか?」
「いえ、むしろ、今までの行動からして絶対逃がさないという気合を感じていたのですが……間違いでしたでしょうか?」
「あ、いえ! 間違いではないです! ……僕はまだ精霊にもなることが出来ません。それでもいいのでしょうか?」
どこか弱々しい声音で呟いた声を聞いて、シオンはなるほど、と納得した。
帰って来てからいつもと様子が違うのはどうやらそのことらしい。精霊になれないことをここまで気にしていた事には流石に気づかなかった。
思わず出そうになる溜息をシオンは飲み込み、いまだに視線をうろつかせるセイルスを真っ直ぐに見つめた。
「貴方、まだ生まれて数ヵ月でしょうに。精霊に基本寿命という生き物の縛りはありません。これから先何万、何億と過ごすかもしれないのにまだ力をつけていないからと悩むのは贅沢すぎですよ」
じっと見つめながら言われた言葉に、ぎょっとしてセイルスはうろつかせていた視線を向ける。シオンの迷いのない瞳が向けられた視線をしっかりと受け止める。
「貴方は特に虚ろなる者になりかけていたのです。まだバランスが取れていないのでしょう。貴方が精霊でいる以上、精霊になれないという一生は来ません。まだ赤子の精霊が力がないと嘆くとは我儘ですよ。少しずつ成長していきなさい。誰かの傍にいることに権利も資格も必要ないでしょうに。セイルスという個人が望む姿で生きていけばいいのです」
精霊は基本、自由気ままな生き物ですから、と付け足す。
セイルスは僅かに息を飲んだ。それから少しだけ息を吐きだして、先程とは違ういつもの微笑みを浮かべた。
実際、先程まで胸につかえていたものはすっかりなくなっている。
「はい。僕の、望むままに」
はっきりと言葉を口にすると、セイルスはシオンへと手を伸ばし、その小さな体を手のひらに乗せた。
それから定位置だと言わんばかりに自分の肩へと移動させる。
今ではすっかりニコニコと笑うセイルスに、肩に乗せられたシオンは、首を絞めたかもしれない……と思わず思い直したのだが、それを口に出すことはなかった。その代わり別の言葉をセイルスに伝えることにした。
「もし、私の役に立ちたいと思っているようでしたら情報を集めなさい。私も情報屋ですからね。貴女も十分、見聞き出来ているようですが言葉や見るものだけでなく、感じ取ることを重点的に磨いた方がいいでしょう」
「感じ取る?」
「嘘、本当、気配の種類等、感覚を磨くことです。今感じてる気配もいずれわかる様になります。相手が姿を現す前に言い当てられるくらいになれば今後もそれは役に立ちますよ」
すっかり話は変わっていたが、セイルスは今まで感じていた気配について思い出した。
気づけばまたその気配は薄まっている。
シオンはあの気配の正体を言い当てろと言っている。ならばそうなろう。
「望むままに」
貴女の為に。僕の為に。
まだわからないことだらけだし、シオンさんの事を何も知らない。
それをわかる様になる為に。
なぜここに来てシオンが千里眼を使いレイナを見ていたのかも、セイルスは知らない。
シオンがそうしていたからついてきただけだし、シオンもそれを拒否することはなかった。
けれど、今はそれでいいとセイルスは思いを改めた。
これから成長しよう。貴女の傍にいる為に。
すっかりあの気配は消えていた。
気づけば王がいる謁見の間からもレイナの気配は消えている。
暖かい日差しが今日も王都へと降り注いでいる。
様々なものが住むこの場所は決して心穏やかな平穏とは言えないけれど、それでも笑顔が浮かべて過ごす者達がとても多い。
そんな人達がいる場所にこれから向かうのもいいだろう。
会話のなくなった精霊二人はゆっくりと木から降りると城の向こうにある城下町へと向かっていく。
次の騒動が起こるまで、それぞれが慌ただしく、穏やかに過ごすことだろう。
ああ、慌ただしいと言えば、ネーナとウェルバの言い合いが王都に帰ってきてからも続いている。ちゃっかりウェルバも王都に来ている辺り、もう諦めればいいのにと誰もが思ったことは内緒だという。
今回の話はこれで終了です。
次回の話ですが、最近次の話を投稿するまでにだいぶ間が空いていしまうので、少し書き溜めてから投稿しようと思います。
その為、一度今まで以上に次の話まで間が空くかと思いますが、スムーズに話が進める為、暫しお待ちいただけるとありがたいです。
次の話でようやくヒーロー(仮)が出てくるのですが、話は今回のよりは短めになると思います。
次の投稿までもう暫くお待ちください。




