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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
42/71

42、賊と貴族と義賊 5

 国境領地、ペスタチシア。

 王都ほどではないがそれはそれは栄えた街だった。

 特に商店街と思われる大きな街道には様々な店が立ち並び、露天すらも煌びやかな商品が並ぶ程だった。

 行き交う人々は生き生きとし賑やかに過ぎ去っていく。

 人種も様々で着ている服も多種多様だった。そして誰もが笑顔で談笑している。

 商店街を過ぎれば綺麗な住宅街があり、落ち着いた雰囲気ではあるが常に人気はあり明るい。自然も豊かで街の側の林は公園のように綺麗に整備されている。

 白い鳥が人々の横を通り過ぎていく姿は実に平和だ。

 うん、平和だ。


「見た目はねぇ」

「何も問題なさそうにみえるけどなぁ。これで義賊とかが出るような何かがあるってのが不思議に思えてくるな」

「それでその義賊ですが……どうやって義賊と接触する予定なんですか?」


 商店街を通り過ぎ、住宅街までやってきたレイナ達はやや広い広場を見つけて馬車を止めた。

 そしてそこでまずは仮の仕事をひとつ。簡単な演技をしてみせて、小さな雑技団が訪れたことを街の住民に伝えた。

 現時点で目立ってはいけない。

 目立ちすぎて早々に領主の目に止まってはいけないのだ。

 そういえばこんな奴等が来ていたよ、程度に話が広まれば良い。その間に情報収集をするのだ。


 住宅街だということもあり、そこそこ人が集まってまずは上々な出だしで終わった。

 そこから片付けて馬車に戻り、宿の手配をする。

 宿に関しては客の一人から話を聞いて目星をつけてからとった。悪くもなく良くもなく、無難な宿だ。

 まだ明るい為、色々道具の整理という名目で全員が馬車の中に集まっている。

 一応、外に人がいても聞こえないように結界を張った。

 うん、消音効果の魔法は結局誰も習得してないからね。セイレーン戦以降も習得しようなんて思わなかったらしい。

 いや、だって、特に使い道ないから。


「あの、でも、ざっと見る限りこの街に「貧困層」って呼ばれるような場所がないように見えますけど……」

「そこよ。少なくとも街の地図には記載されてないのよ。そんな場所。まぁ記載なんかされてたら誰もが気づいているだろうけど」

「ここは危ない、という噂をしている場所もないようですね。街はどこも美しい街並みに感じます。確かに一般家庭と上級との差はあるように感じますが、その程度でしょうか」

「街でも酔っ払いが争いするような感じもなかったしなー。酒場はあるけど不愉快な奴等がいるような感じはしなかったし」

「では、一体貧困層と呼ばれる場所はどこに? そもそもその「貧困層」という話の出所はどこなのでしょうか?」


 そう疑問を出したユミがシオンの方を見た。

 こういった疑問は大体シオンが解決してくれる。


「来る途中でも説明しましたが、見えないところで貧困の差が激しいのです。さて、では見えないところとはどこのことでしょうか?」

「え? えぇ? えーと、裏道とか……そういう場所ですか?」


 疑問に対して質問で返してきたシオンにネーナが首を捻りながら応えた。

 しかしシオンは首を横に振る。


「裏道など「誰もが見える」場所でしょう。それだったら先程セイルスが言った「ここは危ない場所として噂される」ことになります」


 シオンの言葉にますますネーナは首を傾げることになった。

「裏」でなければどこを探せば良いのだろうか?

 ふと、レイナが顔を僅かに顰めてひとつ溜息をついた。実に面倒くさいなぁ、という雰囲気を隠さずに。


「大体街の管理は領主がしてんだから、貧困層を隠そうと思えば簡単に出来るんでしょうよ」

「え?」


「どっかに隔離しちゃえばいいだけなんだから」


 つまり、誰にも見えない場所に誰にも気づかれず隔離してしまえば、人々に認識もされないから「危ない場所」として認定されることもない。

 街の中には「存在しない」というわけだ。


「……え、ええぇ!? そ、そんなこと出来るんですか!? むしろやっちゃえるんですか!?」

「いやいや! 流石にそりゃねぇだろ! 街の住民だぜ? 隔離って……どっかに閉じ込めるってことだろ」

「そうよ」

「だって、それこそ噂になるじゃねぇか。貧困層って言われるくらいなんだから、少人数ってわけでもねぇんだろ? その一画丸ごと隔離する場所なんて確保するのも難しいだろ。隠し通すのだって難しいと思うぜ」


 グリーンが言うことはもっとも。

 普通に考えれば隔離など無茶な計画だ。普通ならば、だ。


「だーから裏家業の奴らと手を組んでるって言われてるんでしょうが。場所自体は自分でどうにか出来るでしょうし、噂の操作も多少は出来る。領主だからね。住民自体はそういう、ちょっと人に言えない人達でも使って強引に移動して口を閉ざさせればいいだけなんだろうから」


「……なぁ、それって俺達がどうこうできるレベルの話なのか……?」

「別に「どうこう」しようってわけじゃないでしょ。証拠さえ手に入れれば私達の仕事は終り。後始末は国の仕事よ」

「一歩間違えれば僕達が消されそうな仕事ですね」

「さらっと怖いこと言わないで下さい!! で、でも、証拠を手に入れられる確証があるからこんなことしてるんですよね? ……ですよね?」

「…………国王の命令だからねぇ」

「ヒィィィ! そこは肯定して欲しかったですー!!」


 残念ながら肯定は出来ない。なぜなら国王命令だからね!

 そんなことを心の中で呟きつつ、レイナはさっさと話題を先に進める。

 取りあえず今の問題は「貧困層」自体ではない。


「貧困層がどこにあるってのは、また追々調べれば良いわ。さっき言ったことだってただの私の憶測なんだから気にするな。で、その話の出所なんだけど……」

「まぁ普通に考えて「義賊」からですね」

「え?」

「「義賊」がそう言いふらしてるんですよ。現状では貧困層が「存在しない」ので信じられていないようですが」


 あーなるほどー、とグリーンが呟く。

 義賊などと言っているのだから、領主の悪事を暴きたいのだろう。

 だが、実際はそれがうまくいっていないのが現実のようだ。

 情報は入手できても活かしきれていないようだ。


 さて、出所がわかったところで、元の話のどうやって義賊と接触するのか、という話に戻る。

 結局のところ貧困層がどこにあるかわからない。

 では、他で義賊がかかわりがありそうなところはどこであろうか。


「私に心当たりがあります」


 そう議題をだして最初に言葉を口に出したのはユミだった。

 そして続けて口に出した言葉は


「教会にいきましょう」













 この街では教会の隣に孤児院があるんです。

 様々な理由で孤児となった子を預かっている場所です。貧困層も含め、義賊達とももしかしたら関わりがあるかもしれません。


 というのがユミ談だ。

 確かに。義賊は奪ったものを貧困層の為に使っているらしい。ならば孤児たちに使われていてもまったくおかしくはない。

 自称旅巫子だというユミはかつてこの教会に来た事があるらしく、孤児院にも顔を出していたとか。

 そういうことならさっそくいってみよう、という結論になった。


 旅巫子が雑技団の一員になっている経路は適当に本人にごまかしてもらおう。そこまでの設定までは知らん、と、レイナは一刀両断してる。


 そうして訪れたのは住宅街からも外れた長閑な風景が広がる広々とした場所。農家や工業用の建物のほうが目立つ場所に教会は建っていた。

 街も大きいだけに、教会もそれなりに立派だった。隣に建つという孤児院もしっかりとした建物で、孤児院というより集合住宅のような作りだった。

 これならそれなりの人数の子供たちもしっかり預かる事が出来るだろう。

 そんな建物を眺めながらレイナ達は教会の入り口へと歩いていく。

 馬車は宿に置いてきた。あまり目立ちたくはない為、あの大きな馬車は今は邪魔だからだ。

 教会の入り口が見えてきたところで、そこに人が立っている事に気づいた。


 二人の人物が何かを喋っている。

 一人は巫子だろう。ユミが着ている服の模様と同じものが入った服を着ている男性が一人。

 そしてもう一人は獣人、もしくは亜人だった。


 少年……いや、青年だろうか。それくらいの見た目で(獣人の見た目と年齢は人間と同じに考えてはいけない)背はそれなりに高い。

 黒髪だが毛先が茶色い。前髪は後ろに撫でつけいて短髪の髪は思う様にはねている。ただサイドの髪だけは肩に付くくらいまで伸びていた。そしてやはり毛先だけが跳ね返っている。はねていなければネーナと同じ髪型だっただろう。

 眼鏡が掛かっている耳はとがっている。瞳の色ははっきりしないがあれは多分、金だろう。

 尻尾があり、とても長く地面に三分の一がくっついている。竜人の尻尾のようにも見えたが角がないのでやはり獣人か亜人だ。

 爬虫類のような尻尾をしていて、時折左右に揺れている。


 なんか、どっかで見たことある尻尾だな。


 と、レイナは思ったがもう少しその青年を観察することにした。

 今の時期、まだ蒸し暑いというほどでもないが肌寒いという季節でもない。

 にも拘らず、あの青年の服装は長袖にさらにローブを羽織っていて、首元には明るめのマフラーすらしている。

 見ているだけで暑い。

 だが、それでなんとなく気づいた。


 彼はこの街の住人ではない。


 羽織っているローブは旅人用に売っているローブだ。そもそも職人でもなければ普通の住人がローブを羽織るわけがない。

 そして彼の手には身の丈と同じくらいの小さい鎌のような刃物がついた杖を持っていた。

 うん、普通の住人ではない。絶対に。


「え、普通に怪しいだろ、あれ」

「あ、ですよねーそう思うよねー」

「いえ、初めから疑うのはよくないかと。人は見かけで判断出来ませんし、僕みたいに人に近い精霊だっていますし」

「いや、アンタはちょっと例外だって思ってるから。まぁ、それよりもアタリかハズレか知りたいわね」

「よし! そこは俺にまかせろ!」


 良い笑顔で自信満々にグリーンが言うので、レイナはそのまま「まかせた!」といってグリーンを見送ることにした。

 大人数でいけば警戒されるだろうと思って少し離れてレイナ達はグリーンの後をついていく。

 そしてグリーンは教会の前まで、二人の男性の元へと近づいた。

 二人がグリーンに気づいて振り返る。


 グリーンはまた良い笑顔で笑った。




「なぁ、お前、義賊の仲間だったりする?」



「直球過ぎるだろぉぉぉぉぉ!!」



「おう! そうだけど?」



「普通に応えるなよぉぉぉぉぉぉ!!?」





 思わず絶叫しながらツッコミを入れてしまったレイナはそのまま盛大に膝をついたのだった。







「うん、で? なんなの? 馬鹿なの?」

「え、なんかオレ、怒られてる?」

「怒るというか呆れるわ! 普通あんな会話は成り立たない! もう少し、お互い警戒心持てよ!!」

「もしかして俺も悪いのか?」

「お前が一番駄目だったわ!! 何が「義賊の仲間だったりする?」よ!! 自信満々にいうから何か策があるかと思えば直球かよ! 相手がグリーンと同じ頭の中身だったお陰でセーフだったけど、普通にアウトよアウト!!!!」


 思わず二人を道端であるにも関わらず正座させて怒鳴りつけるレイナは地団太を踏む。

 というか「今すぐ正座をしろ!」と言われて素直に二人して正座をするのは素直というか、天然というか。

 まだまだ続きそうだったレイナの発言を抑えさせたのは、正座させている獣人らしき青年と話していた教会の巫子だった。

 道端で説教というのもなんですから中でお茶でもどうですか、という言葉でレイナは正気に戻る。

 確かにそれもそうだ、ということになり教会の中へと入ることにした。

 違和感? そんなものはもう気にしないことにする。

 先程のやり取りも、会話も聞いていた巫子がにこやかに笑って教会の中へと案内してくれたのだ。

 きっと彼も「義賊」との関わりがあるのだろう。でなければいくら巫子でも冷静には対処できないだろう。


「まぁ予想の範囲内ではあったけど」

「しかし、女神信教の教会ですよ。いくら善意の為とはいえ、巫子が義賊の行いを許しているというのは……女神様は確かに慈悲深いお方ですが、でもそれでも人から物を奪ったりする行為をお許しになるとは……」

「はいはい、その辺はちゃんと話をきくということでちょっと口を閉じなさい。ユミが口出すと多分ややっこしくなるから」


 主に女神様が、女神様の、女神様の為のなんちゃらが、で終始女神様のありがたいお話で埋め尽くされることが目に見える。

 日々、女神様云々と言っている割にはユミ自身は俗世にだいぶ染まってる気もするのだが。まぁ反女神派を物理で黙らせる巫子なのだからその辺はスルーしておくべきなのだろう。


 一つのそれなりに広い部屋へと通されると巫子は一度、お茶を入れて来ます。といって出ていた。

 そこでようやくお互い一息をつく。

 そしてまずは獣人らしき青年からレイナ達に声をかけてきた。


「で、義賊に用なんだろ?」

「ええ、まぁ。というか、アンタ本当に仲間なの?」

「うーん、正確にはちょっと違うかな。でも仲間だと聞かれたら、仲間だって答えるくらいには関わってるぞ」

「……そう簡単にそういうこと言っていいの?」

「おう! それは大丈夫」


 にぱっと笑う彼の笑顔は無邪気という言葉が実に似合うような笑顔だった。

 そして彼は言う。



「オレ、目はいいからな!」


「は?」



 思わず怪訝そうな表情を隠さずに声を漏らしたレイナだが、そんなことは気にせず青年は更に続けてこういった。

 まずは自己紹介をしよう。と。

 そういえば名前すらも名乗っていなかったということに今更に気づき、レイナは頷いた。

 そもそも最初が衝撃的過ぎたのだ。ついうっかり忘れててもしょうがない。

 そう思うことにしたレイナはもちろん本名は告げずに、雑技団のレーチェと名乗った。

 他の面々も続けて自己紹介をする。

 それを頷きながら聞いていた青年は最後の一人が自己紹介が終わったところで、今度は俺の番だな、といってまたいい笑顔を浮かべて笑う。



「オレはジル。海石竜子シィイグニアの獣人で魔法使いのジルっていうんだ。よろしくな!」



 そう青年……ジルがはっきりと自己紹介すると一瞬ふわっと涼しい風がレイナの頬をかすめた。

 おや? と首を傾げそうになったが今度は背筋がひやっとする感覚がした。

 ひやっというか、ぞわっというか。

 首ではなく顔を顰めそうになると、リーンと横から鈴を鳴らすような、聞いた事がある音がする。

 横を向けばセイルスの肩に乗ったままのシオンがあのランタンの様なものを取り出して鳴らしていた。

 しかしその顔は少し不機嫌そうに見えた。そしてしっかり口を閉じているところからして何かを発言するつもりはないようだ。

 一体なんだ、という言葉をレイナが口にする前に、ジルの声が先にこの場に広がった。

 先程までのひやっとした感覚はなくなっていた。



「ウェルバに会いたいんだろ? いいよ、オレが案内するぞ」



 まったく変わらない笑顔でジルははっきりと告げた。


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