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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
39/71

39、賊と貴族と義賊 2

 長い名前の国王もいるので簡単に呼び名だけで明記しよう。わかりやすく箇条書き程度で失礼する。


 レインニジア

 内界最大国家

 国王:ツォリヨ

 国色:黒


 ベレル

 魔道具開発技術国

 国王:リオレッド

 国色:青


 バルディッタ

 武力国家

 国王:フェンネル

 国色:金・黄


 オランジュイ

 最大の貿易国。唯一外界と接触出来る国

 女王:セチア

 国色:緑


 ハストヤート

 歴史と遺跡、文献を管理する国

 国王:ギムレット

 国色:白


 ソ・イート

 自然栄えるエルフの国

 国王:マンクス

 国色:橙


 ゴマナバーケン

 鉱石職人と美を重んじるドワーフと竜の国

 国王:パージュ

 国色:紫


 サハンナ・ナパ

 亜人、獣人集落を纏め上げる里。規模は国ほどでかいが集落がまとまっている為便宜上、里になっている。

 長:スマトラ

 国色:空(水色)



「さて、さっき話題に出てきたオランジュイは貿易国であり、海を管理する国だ。唯一女王が治める国で水の愛し子が女王を支えているね」

「王配はいないのか?」

「ご結婚はされてないね。まぁお陰で周りの配下は色々焦って色んな見合い話を持ってきてるって噂になっているけど。さて、オランジュイは唯一外界と接触出来る国なんだ」

「あー、色々謎とされてる外界か。でも女神の結界が何も通さないんじゃないのか?」

「その女神の塔がオランジュイだけ貿易許可を出してるんですぅ。特別な船で特別な許可を持ったものだけ結界を決まった条件下だけで通ることが可能になるんですぅ」

「へぇ、でもなんでオランジュイだけ?」

「それはオランジュイだけが港を持っているからだよ」

「え? 海に面してる国って他にもあるのに?」

「って、思うわよねぇ。普通は。でもオランジュイはちょっと特別なのよ」

「特別?」


「オランジュイの国面積は、海に面してる土地全てがオランジュイの国に属しているんだ」


「…………え?」

「意味わからないって顔よねぇ。そりゃそうよ。海に面してる別の国があるのに海に面している土地全てはオランジュイの物になっちゃうんだから」

「それで「貸し出し」ってことになるんだよ」

「貸し出し?」

「そう。オランジュイがその国に海の土地を「貸し出す」。住むのも港を使って管理するのもそこにある「国」になるけど、最終的に責任があるのはオランジュイになるよ」

「あー……? うん……?」


 いまいち理解できないグリーンにもう少しだけ詳しく説明が加えられる。


 オランジュイは本来は海沿いにある一つの国だ。

 しかし、昔海の利益を巡って争いが起きたことで女神の塔がある決まりを作った。


 海の利益は全てオランジュイの管轄とする。


 その一言で海に面する全ての場所がオランジュイの管轄になってしまったのだ。

 もちろんかなり波乱はあった。が、もう昔のこと。

 今ではそれぞれの国と折り合いをつけ上手くやっている。しかしオランジュイだけがいまだに


「そんな阿呆な国の場所取りとか意味分からねぇよ! 全部の海の管理するとか無茶振り過ぎるだろ!(意訳)」


 と愚痴を漏らしているとか。まぁオランジュイからしたら面倒ごとを全部押し付けられた形になるのだろう。

 しかし、流石に一つの国で全部の海、そして港を管理できるわけもなく。

 本来ならその国が所持しているだろう海辺はそのまま「貸し出し」という形をとって国々に管理してもらっている。

 貸し出しなので利益のアレコレが色々あるがそこは省こう。勝手に開拓も出来ないし、勝手な貿易も出来ない。

 申請、許可は全てオランジュイの管轄になる。

 海で何かあれば全てがオランジュイの判断で決まる。よっぽどのことがなければ大体がその貸し出してる国内で解決できるようになっているのでそんなに厳しい縛りはないようだ。


 そんなわけで貿易の要としてオランジュイは成り立っている。

 そして外界と貿易が出来るのもオランジュイだけ、というわけだ。

 本来ならば当然貿易など出来ない。しかし、女神の塔が特別な許可をオランジュイだけに出したのだ。

 もちろん縛りはかなりキツイ。その為、そう頻繁に貿易を行えるわけではない。

 その辺もいずれオランジュイに行くことがあれば知る機会もあるだろう。


「まぁ、国の境目を気にしないやり取りだったらハストヤートもその権利を持っているよ」

「えーと、歴史とか文献を管理する国だっけ」

「そうそう。各所にある遺跡は全てハストヤートの管轄になるのさ」

「遺跡だって判断する基準は?」

「さぁ? そこは国同士のやり取りだからね。僕達にはわからないよ」


 なんとなくはぐらかされた気がしなくもないが、よくよく考えれば騎士団長といえば重役だ。そう簡単に話していいわけないものが山の数ほどあるはずだ。

 なのであえて深く話を掘り下げるようなことはせず、ふーん、と頷くだけに留めた。


「グリーン君は、その内ソ・イートにいってみるといいかもしれないねぇ。エルフの国だしぃ何かわかるかもしれないねぇ」

「そうだなー。いつか行ってみようかな」

「グリーンさんは本当焦りませんね。記憶喪失でも今のところ不便がないって感じですし」

「ああ、ないな! 結構毎日楽しくやってるぜ!」

「そんな感じよねぇ。身分とかも気にしてないみたいだし。団長さんにそーんな気軽に話しかけることが出来る人物も早々いないわよ。貴族も庶民も同じってことかしら」

「流石に王様には気を使うぞ」

「ということは貴族は気にしないんですね」

「うーん……というか、誰が貴族で誰が一般人か見分けがつかないって感じだな」


 少し困った顔でいうグリーンにノアファーロとフロンが笑顔で頷いた。

 実はグリーンの悩みはもっともなのだ。

 なぜなら


「レインニジアの貴族も実力主義だからね」


 とのこと。


 レインニジアの貴族は大雑把に分けると二種類に分類される。

 昔から続く世襲貴族と、実力に応じて与えれた一代貴族だ。


 現在のレインニジアはツォリヨが国王になってから内部もだいぶ変わった。

 切り捨てるものはすっぱり切り捨て、使えるものは使う。

 それを貴族達全員に当て嵌めて、徹底的にやり込んだのだ。

 そうして選別して残った世襲貴族。実に貴族らしい貴族ではあるが、その能力は高いとされている。

 そして政治、軍事等々……様々な分野で能力を発揮したものに爵位を与えた。それが一代貴族。

 むしろ貴族として爵位がないとその役目をおえないという事情もあり与えたというのが殆どだという。

 ようは権限を強くする為ということだ。そうでなければ人の上に立てないのだから。

 だが、ただ与えるだけで終わらせないのがツォリヨという変わった人物のやり方で。

 一代貴族ではあるが、その子供に同じだけの能力があれば引き継ぐことが可能。というものを作り上げた。


 ようは頑張って人材育てろってことだ。


 今この場だけで終わらせることなく、今後も続くように。一代限りで終わらせないで末代まで国のために働け……おっと、言い方が悪かった。その能力を是非今後にも役立てて欲しいという国王からの気持ちなのである。

 ……オブラートに包む言い方とはこういう感じだろうか。


 さて、一例をあげてみよう。

 ちなみに貴族は皆、ファミリーネームを持っている。逆をいえばファミリーネームがついてたら貴族だ。

 レインニジアの軍は団長と副団長は爵位を必要とする。


 赤天騎士団長、ゼスタ・ベルヴァット

 赤天騎士副団長、ヴェッテローザ・クロチア

 黒星魔導騎士団長、バルハード・ファナスタ

 黒星魔導騎士副団長、アベル・ランティース

 青月魔導師団長、ノアファーロ・レッタティスカ

 青月魔導師副団長、フロン・ベーティーソン


 こちらが団長と副団長達だ。

 この中で実力が認められて名前が与えられたのは、ゼスタ、アベル、ノアファーロ、フロンの四名。

 血筋から続く貴族は、バルハード、ヴェッテローザの二名。

 もちろんバルハードもヴェッテローザも実力があってその地位にいる。ただし、もし実力がなくてただの騎士でも世襲なので下の名前はついたまま過ごすことにはなるのだが。

 この中で子供がいるのはノアファーロだけだ。そのノアファーロの子供も現在見習い騎士として日々励んでいる。

 実力が父に届くほどになればいずれ「レッタティスカ」の名を受け継ぐことができる。

 それが一代貴族。


 逆にバルハードやヴェッテローザは子供が出来ればそのまま「ファナスタ」「クロチア」の名を与えることになる。

 血筋の直系、長男でなくても名は続いていくことになる。扱いとしては「分家」のようなものだろうか。

 ただし、嫁や婿になる場合は名は捨てることになる。しかし既にそれなりの地位にいるので王から「新しい名前」を貰うことになるだろう。

 この場合は世襲貴族が一代貴族になる。

 これがレインニジアの「貴族」だ。


 そして現在、一代貴族というのが多い。

 実力で伸し上がってきた者達だ。種族すらも問わないものだからパッとみでは貴族だとわからないのだ。

 そもそも貴族らしい貴族は一般人がいる場所でウロウロしてることが殆どないからグリーンも滅多に会うことはないのだ。

 比べる対象を見かけることがないせいで余計にわかりづらい。


「義父上もあまり貴族のような考えをしてる人じゃないですね」

「バルハードはねぇ……まぁ、彼も昔色々あったから」

「そうなのか? 優しそうな人に見えたけどな。……あ! レイ、悪りぃ、俺ちょっと用事出来たからもう行くな!」

「え? あ、はい。じゃあまた今度」

「ああ、じゃあな!」


 グリーンは唐突に話を切り上げるとそのままいい笑顔でその場を去って行った。

 思わずポカン、とその姿を見送ったレイだがすぐに周りがざわめきだしたのでハッと意識をこの場に戻すことが出来た。

 そうして周りを見渡すと、食事をしていた者達が揃って皆同じ場所を見ていた。


「まぁ、お姿を見ることが出来るなんて……」

「こんな場所にも来られるのか!」

「は、初めて姿を見た……」

「姫様だ!」


 ざわざわと声が上がり始めて、そして誰かが注目の場所にいる人物を声に出して行った事で余計に周りが騒がしくなる。


「あらやだ。こんな時間に珍しいわね。しかもここまで来るなんて」

「ここは一般開放区だからね。王族の方は滅多にこないはずだけど」


 スペキラとノアファーロがそんなことを呟きながら首を傾げる。どうやらこの二人も知らない予定外のことだったらしい。

 もちろんこの場にいるフロンもレイも姫様が訪れるなんて聞いてはいない。

 食堂の人々が視線の先へと集まっていき、その隙間から僅かにその姿見えた。

 ドレスを身に纏い、近衛兵と侍女を従えて一人の少女が堂々とそれでいて優雅に歩いている。


「姫様だわ!」

「なんと美しい」

「王女様!」






「レイナ姫様!!」






 姫の名前を叫べば次々と人々は続いて名前を呼んだ。

 レイナ姫。

 決してレイの義姉のレイナのことではない。


 レイナ・オルティア・ツイフィード


 ツォリヨの娘であり、たった一人の娘。

 そして次期王位継承者だ。

 国王専属騎士であるレイナと同じ名前のレイナ姫。

 実は「レイナ」という名前は案外女性に多い名前だ。

 特に王族にはレイナという名前がよくつけられる。それには理由があるのだ。


「魔女伝説」


 有名な話だがこの辺はまたいつか余裕があるときにでも話そう。今は目の前のレイナ姫について話を進めていく。


「あ」


 レイが思わず声を漏らす。

 そして横にいたノアファーロとフロン、そしてスペキラも目を見開いた。

 視線はレイナ姫に向いている。そして何に驚いたかって。


 レイナ姫に声を掛けるグリーンの姿を見たからだ。


「あれ!? さっき王族には気を使うっていってませんでしたっけ!?」

「違う。「王様」と言っていたよ。レイ君」

「そこに姫様は含まれてなかった!?」

「そうみたいだねぇ」

「い、いいんでしょうか!?」

「まぁ……いいんじゃないの? 姫様は凄く嬉しそうよ? もしかして知り合いなんじゃなーいの?」


 思わず慌ててしまうレイに対して、スペキラがなにやら楽しそうにニヤリと笑って目の前の光景を見ていた。

 スペキラに言われて改めてレイナ姫とグリーンに視線を向ければ、確かに二人は笑っている。グリーンの態度も決して不躾ではなく、会話しつつもしっかりと態度は改まっていた。

 だがやはりその二人の表情は実に柔らかい。知り合いというスペキラの予想はどうやら間違いではなさそうだ。

 それにそもそも見知らずの相手だったら後ろにいる近衛兵も侍女も黙っていないはずだ。

 近衛兵はともかく侍女の女性、黒髪のツインテールでレイナ姫より少し年上に見える褐色で黒兎の獣人だか亜人だかの表情は実に柔らかい。


「レイナ姫の侍女のモアハちゃんはおっとり系だけど優秀な子よ。あの子がグリーン君が側にいるのを許しているならやっぱり顔見知りなのよ!」


 とのこと。

 そこまでいうならきっと問題はないだろう。レイはそっと息を吐いて落ち着く。

 周りはまだざわついているが、これもそのうち落ち着くだろう。

 そう思ってレイは視線を外そうとしたら、再び視線を外せなくなった。


「あーあ……」


 その声は隣から聞こえた。ノアファーロが呟いたようだ。

 チラッと見えた表情は苦笑しているようだった。その表情になる理由もレイはよくわかる。

 レイナ姫とグリーンがいた場所にもう一人別の人物が現れたのだ。

 正確にはレイナ姫がその人物に声を掛けて近寄ってきた。

 周りのざわめきが更にひときわ大きくなる。

 レイは溜息をひとつ。


「レイナ姉さん」


 レイナ姫が声を掛けたのはレイの義姉、レイナだった。

 今レイナはレイナ姫の手をとり、騎士らしく挨拶をして綺麗に笑っている。

 だが義弟であるレイにはレイナの心情がよくわかった。

 何せ口の端が引きつっている。多分これはレイにしかわからない程度の歪みだ。

 レイにしかレイナの表情の違いはわからないが、レイナの心情はここにいる四人にはよくわかっていた。

 何せレイナ姫についてはよく知っている人物ばかりなのだから。


「姉さんとちょっと話したかったんだけど、これじゃ無理かな」


 今日はまだちゃんと会話してなかったのに、と残念に思えばノアファーロに苦笑される。

 最近では剣稽古も一緒にやっていない。そういえば姉と一日休みで過ごした最後の日はいつだっただろうか。

 続けて思い出して、それから目の前の光景を見て、改めて姉は随分と凄い人になったのだと実感させられる。

 ただし、本人の意思はこの場合反映されないのだけれども。

 なんとなく寂しい気持ちを覚えてレイはざわめきが残る場所から視線を外した。


 いつもならスルーできることも、今日は上手く出来ない気がした。

 きっとそんな日もある。




 姉さんと一緒にゆっくりできる日は今度はいつだろうか。




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