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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
31/71

31、神隠しと吟遊詩人 6

「肉食系ではなく暴力系女子」

「殴るぞ」

「痛い! もう既に殴ってるじゃないですかー!」


 あれからレイナ達は再び町へと繰り出していた。すっかり夜となっていて田舎町の為か街灯は少なく、薄暗い中で家に灯る明りを元に歩いていた。


 情報は色々聞けた。しかし何故か店にいた男共全員レイナの前に正座という形になっていた。

 ただテーブルを投げつけただけなのに。解せぬ。

 ちなみにその際に破壊されたものはちゃんと請求書を作ってもらってレイナは受け取っている。無論、城に提出して経費で落としてもらう為だ。

 チラッとサシィータの顔がよぎったが、さっさと頭の中から追い出して忘れることにした。経費で落とすといったら落とすのだ。


 そういうわけで、得た情報は以下の通りだ。


 ・姿を消す前に男が酒場で「山で…」「女が…」という言葉を言っていたのを聞いた者がいた。

 ・夜中にうろついていた方向は山がある方向。

 ・たまに夜中にうっすらと声が聞こえることがある。女性の声で、歌っているようだったそうだ。

 ・消えた女性子供は前ぶりはなく、唐突に姿を消す。

 ・近くの山は捜索済み。くまなく捜したが特に何も収穫はなかった。


「山、ねぇ……」

「でも捜索済みだそうですよ」

「まぁどうみても怪しいからね。他に情報もないし、とりあえず行ってみるか」

「新しい発見があるかもしれませんしね!」

「そうですね。しかし、女性の「歌」ですか……」

「ん? 何か思い当たることでも」

「いえ、そういうわけでは。僕も吟遊詩人ですので歌と聞いて少し気になった程度ですよ」

「でもまぁ確かに夜中に歌ってのは気になるわね。「山」と「女」ねぇ」

「なんか泥沼のような展開がありそうな予感ですね」

「おい、巫子。昼ドラのような展開期待してるんじゃないでしょうね」

「そんな、まさか。しかし人間関係ほど複雑なものはありませんから。何がどこでどうなって起こるのかなんて誰も予想はつきませんから。唐突にそんな展開に出会ってしまっても不思議ではありませんから」

「つまり、凄い期待してるのね……」


 いつもの態度を貫き通しているつもりだろうが、ユミの目はやけに爛々としている。そもそも言い方が既にちょっとおかしい。

 とりあえずは山を捜索することに決まり、本日は宿に行き(夫人が宿を手配してくれた。なかなかの敏腕の持ち主らしい)一夜を明かした後、日が昇ってから山へと赴くことになった。


 それにしても「歌」ねぇ……そういえばなんでこの吟遊詩人は「歌」を歌わないんだろう。


 そんな疑問をレイナは思ったが、現時点で口にするべきことではないだろうと判断してそれは飲み込んだ。

 後日、それはある意味、賢明な判断だということが発覚することになる。








「普通の山だ」

「山菜採りには丁度よさそうですね」

「平凡な山道ですね。険しくもなく誰でも行き来はしやすそうです」

「特に険しいところもなく。キノコ狩りには持ってこいって感じの」

「秋はきっと紅葉が素晴らしいのでしょうね。猪もここにはいるのではないでしょうか。様々なものが息づいて色とりどりに楽しめ癒される場所のように感じます」

「秋はやはり鍋かしら」

「鉄板焼きでもいいと思います」

「炊き込みご飯もいけるのではないでしょうか」

「皆さん、食欲の秋ですね。お腹すいているんですか?」


 別にすいているわけではない。連想するものが食べ物というだけである。

 しかし残念なことに食べ物を連想するのが全員女子という現状。山の綺麗さを語ったのは吟遊詩人のみである。

 ちなみに今は秋ではない。ついでにいうとこの世界に異世界の言葉を借りていう「四季」というものもない。

 ただ秋のような季節はある。場所によって程度は違うが植物達が枯れ始めて色とりどりの姿を見せ始めたり、沢山の果実や植物が採れるようになる時期を秋と認識している程度だ。

「秋」という言葉も元は異世界かららしいが、遥か昔から伝わる言葉のため今更気にする人はいない。


 それにしてもここにいる女性達の女子力の低さと吟遊詩人の女子力の高さはどういうことなのだろうか。

 まぁ、騎士に野生児のような魔法使い見習いに旅していた巫子だ。煌びやかなものよりも生活力(野営)の方が高いのだろう。

 たとえ誰よりも背が高くてしっかり筋肉がついていようが、四人の中で一番気が使えるのが吟遊詩人だという事実があったりもする。

 出かける前に昼のお弁当用意したり、荷物確認、山道の図解した地図、宿屋への一言等々、統率してやったのは吟遊詩人だ。

 吟遊詩人はいずれどこかに嫁にでもいくんだろうか、という気遣いぶり。

 一応、レイナも宿では猫をそれなりに被ってはいたが、酒場での一件もある為多少投げやりにもなっていた。


 気遣い気配りが出来て、見た目も声もよく、それなりに強い(らしい)。うん、確かに優良物件だ。

 ただし、未だに名前も素性もよくわからない人物だが、町の人間はそれでもいいと思っているんだろか……

 まぁ、今はそれは置いておこう。現時点で何もつかめてないのなら考えても仕方ない。

 では、現在私達は何をしているのか、というと。


 山である。ほのぼの豊かな山に捜索……いや、これはもはやただの散歩だ。

 それくらいの陽気さと穏やかさがある。

 怪しいところはひとつもない。



 はずだった。




「なぜ誰もこれに気づかなかった」




 目の前にドンと立ちはだかる巨大な岩。

 木々の間を塞ぐようにある巨大なただの岩。

 木はある程度の間隔をあけて周りのあちこちにある。その中の二本の木の間にある巨大な岩。

 ぐるりと一周してみるがやはりただの岩だ。木にぴったりと挟まっているけど。


「いや、どうみても怪しいんですけど」

「え? むしろなんで私達今までコレに気づかなかったんでしょうか?」

「ここは何度か通っていますね。道からは外れていますが普通に散策できる場所ですし」

「岩を見たのは今回が初めてですね。町の方から岩の話など聞かなかったので、多分町の人も気づいてはいないのでしょう」


 目の前にある岩を見ながらそんな会話をする四人。

 不意にユミが岩に近づきペタペタと触り始める。しかしすぐにレイナの方へと振り返った。


「目眩ましの幻術ですね」


 目眩まし。つまり欺いていたということだ。

 ユミがいうには岩の周りを含めてその幻術が使われているということ。同じ光特性の魔法だった為、ユミが気づけたとのこと。

 しかし何度も通っているのになぜ岩が今回見えるようになったのか。


「原因はわかりませんが、幻術の魔力が弱まったとしかいいようがありませんね」


 どうやらそこまではわからなかったらしい。

 とりあえず今はまだ幻術がかかっている状態の為、ユミが解除を試みることにした。

 どうやら然程難しい幻術ではないようで、それはあっさりと解かれる。

 するとただの平坦な森だと思っていた場所にそれなりに高く横に連なる木で出来た柵が現れた。

 木に挟まっている岩の木の横から柵は出来ている。まるで岩が門の役割であるかのような作りだ。


「この岩も幻術?」

「いえ、これは本物ですね」

「柵が出てきちゃったのでこの先にはいけなくなってしまいましたね。えっと、どうしますか?」

「まぁ、普通に考えてこの先に行かないと駄目よね」

「そうするとこの岩をどうにかするしかないように思えますが」

「柵を壊すって手もあるけど……」

「無理ですね。こちらは結界か何かの強化かが掛かっています」

「まぁそんな感じね。岩には何も施されてないようだから岩をどうにかするのが一番手っ取り早そうね」

「しかしこれだけ巨大な岩だと……以前、レイナさんが壊した石碑のようにはいかないかも」

「さすがに私もこれを鉄バットで壊そうとは思わないわ」


 そもそもシオンがいないから鉄バットの用意すらないし、というのはただの蛇足なので口には出さなかった。

 岩の大きさはレイナの三、四倍はありそうな高さと幅はある。流石にこれほどのただの巨大な岩は叩いてもそう簡単に壊れることはないだろう。

 そうするとそう簡単に動かすことも出来ないと思うのだが、なぜこんな門みたいな置き方をしているのか。この先には何があるというのか。幻術を使っていたということはそれなりの使い手がいるということで、一体何者なのか。

 そんなことをぐるぐる考えていたら、不意に吟遊詩人が岩の前にまで歩んでいく。


「中に入れるのならどかすだけでもいいんですよね?」

「まぁ、そうね。でも、どうやって……」



「僕が”運び”ますよ」




 ひょい。



 そんな間抜けな音がしそうなほど、岩が上へ”持ち上がった”。

 もう一度言おう。


 岩が持ち上がった。


 誰が。吟遊詩人が。何を。岩を。どうした。持ち上げた。

 思わず脳内で自問自答してしまう。現実が一瞬受け入れられなかったのだ。

 しかも良く見てみろ。片腕だ。

 奴は片腕で岩を持ち上げているのだ。意味がわからない。

 それからその片腕を砲丸投げの要領で別の方向へと投げ捨てた。

 ドスン、とまるで地震が起きたかのように地面を揺らしてその岩は別の場所へと着地した。

 思わず岩をじっと見てしまうレイナとユミとネーナ。

 岩を持ち上げていた掌から埃を払うように二、三回叩くと吟遊詩人はにっこりと笑ってレイナの方を向いた。





「言い忘れていましたが、僕、「怪力」のスペルティ持ちなんです」





 そういうことは早くいえぇぇぇぇぇ!!!!



 呆気にとられすぎてそんな叫びは声にならず、ただその辺にあった木の枝(それなりに太い)を掴みへし折り、吟遊詩人の顔面へと無言の全力投球で投げつけたのだった。

 ベキッと顔に直撃した枝は更に真っ二つに折れ、吟遊詩人はその場で昏倒した。

 その際に鼻血も出ていたが、意識が戻る前にそっとユミが回復魔法で治してくれた。


 流石にこの顔に鼻血は可哀想だ。というのがユミの意見だそうだ。



 そんなもの知るか!! 情報共有大事!!



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