13、盗賊とエルフ戦士 7
走り出して直ぐに見張りっぽいのに出くわした。直ぐに潰したので他のやつ等にこちらの存在は気づかれてはいないはず。
そうして再び走り出すと再び盗賊に出くわした。潰した。また直ぐ見つけた。潰した。
……これは、こっちがアタリだったか。
あまりにも頻繁に出くわすものだからそうレイナは結論をだした。
道の途中でまた左右に分かれている場所もあったが通路が小さかったから無視をした。大所帯ならそれなりに部屋もあるんだろうと勝手に予測をする。
とはいえ進むにつれ少しずつ道が複雑になってきている。
いっそ一人意識保ったまま捕まえて道案内させたほうが楽だろうか、と考えたところでレイナは再び盗賊に出くわした。
今度は獣人が数人。気配や動きには敏感な種族な為、レイナが気づくと同時に向こうもこちらに気づいた。
「なんだテメェ!?」
「侵入者か!」
「その服、王都の騎士か」
おっと鋭い。確かにレインニジアの騎士はそれなりに有名だが制服を見ただけで騎士と判断できるとはなかなか。
だからといって止まってやる義理はないが。
少し動揺を見せている獣人に対してレイナは相変わらず走っている。そのまま真っ直ぐ目の前の獣人に迷うことなく突っ走る。
右ストレートが見事に獣人に決まる。
もちろん獣人が何もしなかったわけではない。武器も構えた避ける素振りも見せた。しかしそれよりも早くレイナが獣人の持つ武器もろとも吹っ飛ばしたのだ。
強化魔法って素晴らしいって思うのはこんな時だろう。
身体強化系魔法。本来ならば光特性が得意とする魔法だ。ただ簡単な瞬間だけの強化だったら光特性を習得していなくても可能である。この間の防御結界と似たようなものだ。
もっと高性能な強化魔法をかける際は流石に光特性を習得していないと無理だが、大体は瞬時の強化だけですんでいる為もちろん習得する予定はない。
そんなどうでもいいことを考えつつ、レイナはすぐさま二人目を再び拳で潰した。剣? そんなものはきちんと対峙したときにでも使えばいい。今は効率重視である。
剣に下手に強化をかけると力の入れ具合によっては剣の方が負けるときがあるのだ。しかも今回持ってきている剣はどこにでもあるようなただの長剣だ。叩いて強くなるような剣ではない。叩いて折れる剣だ。
そんなものを使うくらいなら強化を何度も出来る自分の拳の方が早い。
そうしてレイナは三人目へと向く。
「スイマセンでしたー!!」
綺麗な土下座が決まった。目が合った獣人の。
おおっと、流石にこれにはちょっと驚いたぞ。レイナの動きがつい止まる。レイナの動きが止まったのをいいことに他の獣人達も意識がはっきりさせたようで武器を放り出して平伏した。なぜだ。
思わずジロジロと目の前の獣人達を眺めるレイナだが、やはり獣人達に戦意はなさそうだ。尻尾がプルプルと股に挟まっている。
そこでふと思い出す獣人の習性。
獣人は上下関係をはっきりさせる傾向がある。種族によっては主を持つことが誇りだというものもいるそうだ。
上に立つものはその力に誇りを持ち、主を持つものはその忠誠に誇りを持つ。
一番わかりやすいのが実力の差である。そしてレイナは先程の動きでどうやら目の前の獣人達より上だと見られたようだ。
しかし、果たして本当にそう判断していいのだろうか。
何せ相手は盗賊。一度は悪に手を染めた奴らだ。相手を欺くことくらい簡単にやるだろう。
下手にみせて隙を突いて相手を蹴落とす……くらいなら可愛いが、まぁ確実に殺るつもりだろう。
さて、ではどうするか。
少し考えてレイナは獣人達へ歩み寄る。そうして一番最初に土下座した獣人の前まで行くと、その獣人の肩に思いっきり力を込めて足を置いた。
「っ!」
「おい、下を向いているからって侮るなよ。信用などしないがその形だけの土下座程度には使ってやる。一度は平伏したんだ。精々私のために励んでもらおうか」
それなりに圧を込めて上から目線で言ってみたがどうだろうか。嘲笑っているならこれで本性がでそうだし、本当に謝罪の気持ちがあったならこれで萎縮していきなり後ろから殺ろうなんて気持ちは多少はなくなるだろう。
などと考えつつ最後に顔を俯かせていた獣人の肩を蹴り上げて顔を上げさせる。
やたらキラキラした視線で見上げられた。
「はい! 是非、俺達を使って下さい!」
「俺もよろしくお願いします!」
「お、俺もついていきます!!」
と、なぜか獣人達がまとわりついてきた。なんだその崇めるような視線!
……獣人ってマゾなのか。そうなのか……
やべぇ、失敗した……と足元にまとわりつく大きく尻尾をフリフリしてる獣人達から目を逸らしてレイナは遠い目をして現実逃避へと走ってしまいそうになった。
取りあえず深くは考えずその獣人達に自分達のボスまでの道案内を頼んだ。やたら嬉しそうに尻尾を振って獣人達は案内してくれた。この獣人達、多分犬か狼系の獣人なんだろう。尻尾の揺れ具合から見ての判断だが。
忠犬というかペットだな。これ。
途中、やはり盗賊達に出会ったが相変わらず即効でレイナが潰していく。
その度に道案内の獣人達はキラキラした目でレイナを見つめて尻尾を大きく振っていたが、お前ら仲間が伸されてるのにそれでいいのか。本人達が気にしてないなら別にどうでもいいし、どうやらこの獣人達が自分に危害を加える気が本気でないようなので、視線程度は気にしないことにした。
気にしない。やたら突き刺さるような視線を貰うが気にしない。気にしないったら気にしない。
「ボスはこの先の広い部屋でいつも寛いでいます」
「ただいつもより人気がないから、どうも怪しいです。気をつけて下さい姐御」
「おい、姐御って呼ぶな」
「姐御ならボスとも張り合えると思いますが! でもあの人は相当強いですよ!」
「というか簡単にボス売ったな。お前ら」
「「「姐御の方が格好良いです!!」」」
だから、やめろ、キラキラした目でみるな。姐御って呼ぶな。
さて、そのボスというのはどうやら竜人のようだ。
巨漢で二メートル以上はあるそうで、やたら硬い翼と尻尾があるという。得意な武器は斧だそうだが、「竜化」できないそうだ。
竜人とはそのまま人と竜のハーフのような種族だ。あくまで「ような」であって、人間と竜のハーフというわけではない。
人型で角があり尻尾とツバサがある。それが基本体型で他にも鱗があったりもっと体型が竜に近かったり、様々な容姿をしている。竜人の能力によってはツバサと尻尾は収納することも出来るようだ。
能力も全体的に高く、体力、魔力、知力どれをとっても種族の中でも上位に食い込む有能さを持つ。
しかしその上をいくのが当然ドラゴンであって、竜人は竜には勝てない。あくまで竜に近い存在だ。もっとも能力は個々に違うのでもしかしたら竜より優れている竜人もいるかもしれないがここで語るのはあくまで平均値の話だ。
竜は人型になることも可能だが、竜人は竜型になることは出来ない。基本は。
その辺は「スペルティ」が関わってくるので、今は置いておく事にしよう。
見た目の特徴を聞いただけなら脳筋っぽいなぁと思うが、竜人ならばそれなりに知恵は働くのだろう。
さて、ではどうやって対処するか。
そんなことを考えていればやたらデカイ扉の前へと来た。見張りはいない。
「怪しいな」
「いつもはいるのにな」
「なんで今日はいないんだ?」
首を傾げる獣人達を他所にレイナはさっさとその扉へと近づくと、そのまま思いっきり力を込めて扉を開け放った。
「さぁ! 来てやったわよ! さっさと勝負しなさい!」
堂々と言い放てば獣人達はぎょっとした目でレイナを見た。
慎重に? そんなものは必要ない。
見張りがいない時点でバレていたのだと確信した。
ならばこそこそする必要はない。どうせ対面する予定だったのだ。むしろ余計な手間が省けたと思えばいい。
開け放った扉の中は広い空間だった。ドームのような形をしていて扉から真っ直ぐ前の一番奥にボスと思われる人物がいた。
その周りにわらわらと盗賊達が連なっている。大体は集まっているんじゃないかと思われる数だ。
後ろにいる獣人達が息を飲んだような音が聞こえたが、取りあえず私には関係ないのでそのまま無視をした。
ソファーのようにでかい椅子に持たれながら座る巨漢は特に驚いた風もなく、ニヤリと笑いながら体を起こす。
「ほぉ、思っていたより威勢がいいな」
「そのくらいでなきゃこんなところに少人数で来ないわ。それで? お前からしたら予定通りの範囲?」
だいぶ離れているのに巨漢の声ははっきりとレイナにまで届いた。逆にレイナの声は少し張らないと響かない。
少し面倒だったので近づくことにした。後ろの獣人達が止めるような素振りをしたがやはり今回も無視をした。
中程まで歩いて立ち止まる。多分この辺までがギリギリだろう。
それをみて巨漢の竜人は声を出して笑った。
「さすがだなぁ! なかなか読みのいい間合いの取り方だ! その据わった度胸もいいねぇ!」
「そりゃどうも」
「知ってたぜぇ。お前らが町に来たときからな。仲間が町にも入り込んでるからなぁ」
「大方そうだろうと思ってたけど。じゃああの馬車もわかっていたってわけか」
「いいや? ありゃあ見事に釣られたようだぜ。だが別にたいした問題じゃなかったからそのまんまにしてたがよ」
「へぇ?」
「エルフも妖精もあの魔力の高い魔法使いも結構な値で売れてくれるからな。女騎士も貴族には人気たけぇぜ? 見た目も悪くねぇしなぁ」
なるほど。最初から餌として見られていたわけか。自らここに来てくれるなら願ってもないってことなのだろう。
まぁ悪くない考えだ、とレイナは思う。
しかし、まるであの竜人の思い通りになってるような状態だと思われているのが若干癪に障る。
町に盗賊が入り込んでいた時点でこうなることもこちらとて想定済みだ。グリーン達には話していなかっただけで。
あくまであの馬車の囮は場所を把握する為と人質の保護だ。
保護さえされていれば、どれだけこちらが暴れようとも気にする必要はないのだから。
ニヤリと笑っている竜人を見て、レイナも同じようにニヤリと笑った。
そしてここに来て初めて剣を抜く。
「予定とか罠とかどうでもいいわ。ここには来れたんだし。さっき宣言したとおり、さっさと勝負しましょうか?」
言い終わると同時に、それは始まった。
長くなった為、一度切りました。
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