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某国の女騎士と仲間達の日常物語?  作者: しんり
第1章 女騎士とその仲間達
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1、東の森騒動と魔法使い 1

 

 とある世界によくある剣と魔法のファンタジー世界がある。

 その世界は大地と魔王と女神がいて……その辺の話はまたそのうち詳しく話すことにしよう。

 そしてその世界は外界と内界という二つに分かれている……ここも今は関係ないので飛ばすことにしよう。

 二つに分かれてる内界側のとある国、大国とよばれる内界最大の国、レインニジア。

 この話はそのレインニジアから始まる。

 レインニジアにいる国王とその国王専属騎士の日常茶飯事な出来事が今日もやりとりされている頃だろう。



 レインニジア国の王城は広い。とてつもなく広い。何せ山すらもぐるっと囲むほどでかい城である。

 おかげで城の中だけでもいくつか管理局が分かれているくらいだ。いや、今はそんな話は置いておこう。

 そんなでかい城の中、一般人にも解放されている南地区。

 各所に取り次ぐ窓口を扱うこの場所には日々様々な人々がいる。

 城に仕える人々はもちろん様々な用件で訪れる民、様々な種族……そう人間だけではない。この国には様々な種族が共存している。

 人間、獣人、亜人……ちなみに獣人と亜人は種族が違う。そしてエルフに竜人、魔人もいる。

 色々思うところがあるかもしれないが、これがレインニジア……いや、内界と呼ばれる場所では普通の光景だ。

 そんな様々な種族が行きかう中を一人の青年がとある場所に向かって歩いてた。

 少年というほど幼くなく、成人男性というほど大人びてもいない。16、17歳くらいの男性。

 帯剣しているがローブのようなマントを羽織り、表情はとても穏やかだ。そして手元には数枚の紙の束を持っている。

 偶に知っている人物に会って挨拶を交わす。しかし留まりはせずそのまま目指す場所に向かって迷うことなく歩く。

 しかしそんな青年が足を止める。先程まで穏やかだった顔に嬉しそうな笑みが加わった。


「姉さん!」


 そう声に出して目の前の人物を呼んだ。

 前を歩いていた人物は足を止めて振り返った。

 騎士の服装をした一人の女性。肩までの癖のある色素の薄い青髪、少し釣り上がった目尻だがきつくはなくその顔には凛々しいなりに穏やかな笑みを浮かべている。緑色の双眸は近づいてくる青年を見つめていた。


「レイ」

「おはようレイナ姉さん。こんなところで会うなんて珍しいね」

「おはよう。そうだね、今朝は先に別の部署に用があったから」

「これから謁見?」

「そうだね。謁見……だね」


 レイナと呼ばれた女性は苦笑する。

 そしてレイと呼ばれた青年もまた姉が苦笑する理由を知っている為、同じように苦笑した。


 謁見とはもちろん国王にである。

 レイナは女性でありながらこの国の騎士、魔導騎士と呼ばれる役職についている。

 そして国王専属騎士としても名を馳せていた。

 常に国王の側にいて国王を守る、しかしそれは側近ではなくあくまで専属騎士。国王の意思を汲み取り、その剣を振るうのだ。

 国王からの信頼もあり直々に任命されるその役目。

 騎士であるなら誰もが憧れるものであり、その役目についてるレイナは今は男女からも憧れの存在として見られている。

 誇り高く、堂々とし、常に前を向き凛として声を張る。その姿は騎士の象徴とも言われるほど麗しいものだ。

 ……という噂が流れていることをレイは知っている。

 もちろんその通りだし自慢の姉だといいきれる自信はレイもある。しかし、残念ながらもう一言そこに言葉を付け加えねばならないが。


「レイはこれから演習場? それとも役所の方?」

「演習場。書類は団長に。その後、訓練に参加するよ」

「そう。頑張ってね」

「うん。姉さんもね」

「ええ……そうね……それじゃ、もう行くよ。レイ、いってらっしゃい」

「姉さんもいってらっしゃい」


 そこまで会話を交わし、にっこりと二人は笑って別れる。別れる際、レイナの微笑みは若干翳っていたがそれがまた麗しく見え、周りで此方を見ていた者達がうっとりとした視線をよこしていた。

 正直、その視線に対して正しい感想を持ち得ないレイはただ笑ってレイナを見送ることしかできない。

 こうしてレイのスルースキルが本日も上がっていく。


(姉さんも色々大変だなぁ…)









「待っていたぞ。レイナ」

「只今参上いたしました。国王陛下」


 謁見の間、と呼ぶにはいささか小さい部屋の中。それでも小さなパーティーくらいは開けるだろう広さの場所。

 そんな場所に国王と女騎士が対面している。

 国王と呼ばれた人物は部屋の中央奥の椅子に扇片手に寛いで座っている。扇といっても女性物のような煌びやかなものではなく、シンプルで硬い素材で出来ている。偶に鉄扇も持っているから扇の種類は結構豊富なようだ。

 どこか裏の読めない笑みを浮かべ、黒髪を一つに束ね左肩にかけるように流している。目つきは鋭いが見下ろす視線はやわらかい。いや、気だるいともいえる。

 国王と呼ばれる割には見た目は若い。言ってしまえば童顔。しかしそんなことは決してこの国王の前で言ってはならない事項だ。年の割りに見た目が若いことを若干気にしているのだこの王は。

 そんな王が部屋に存在し、本来ならば護衛兵が控えている場所に人はおらず、国王の斜め後ろに一人だけ佇んでいる。こんなだだっ広い場所に三人だけしか人はいない。

 それはつまり


「あーいい、いい。そういうのは。もう用件はわかっているだろう。普通にしろ」

「……普通の対応をしましたが」

「普段、俺にどんな態度とっているのか忘れたとはいわせんぞ」

「言っときますけどね! そういう態度をとらざるをえないようなことを言う方もどうかと思いますよ!」

「俺とお前の仲だろう。そんな建前どうでもいい」

「建前くらい作って欲しい!」

「無理いうな」

「なんで建前作るのが無理なんですか! ちゃんと王様してくださいよ!」

「ところでレイナ、今日の用件なんだが」

「そういうところ! 国王様のそういうところだよ! 悪いの!」


 最後には敬うなんてのはすっ飛ばしてツッコミを入れるがそれもどこ吹く風とスルーされる。

 分かってた。こういうやり取りになるなんて分かってた。なぜならこれが日常だからだ。

 そう思って思わず額に手を当てるレイナ。溜息なんてついてしまえばここぞとばかりに国王にいじられまくる。

 後ろに控える宰相以外に人がいない時点でこの呼び出しが公式でないことくらい理解していた。

 むしろ呼び出された時点で分かっていた。何せ朝一で魔道具の伝達機越しに「これから俺のところに来い」と一言の連絡をよこして終わったのだ。

 来たくはなかった。しかし自分の役職は国王専属騎士。これが許してくれない。

 そもそも国王専属騎士なんてただの格好いい役職名だけだ。実際はそんな格好いいもんじゃない。

 これはアレだ。


「東の森でなにやら騒動が起こっているらしい。火柱も確認されてるらしいからレイナ、お前いって来い」

「もういつものことですけど! そうやってパシるのやめてもらえません!?」

「はっはは、何を今更。お前、俺のパシリだろうが」

「違うから! 私、騎士だから!」

「なんの為にお前を国王専属騎士にしたと思ってるんだ。自由に顎で扱う手足が欲しいからに決まっているだろう」

「本人に堂々とそういうこというのもどうなんですかね! 職権乱用反対! パワハラ反対!」

「ははは! 気にするな! 俺自身がこの国の法制だ」

「訴えすらも無効にされる」

「無駄な労力使う前にさっさと行け」

「詳細すらも渡されないとか……」


 そう。国王専属騎士という名の国王のパシリだ。

 非公式で呼び出されれば、あれを調べろ、解決して来い、あそこがきな臭い、といっては簡単に飛ばされる。

 悔しいことにあまりにも日常茶飯事として呼び出されては飛ばされるということを繰り返していた為にレイナもこのやり取りに慣れてしまっていた。

 それでも口で一応反論はする。打破なんて絶対出来ないと知っているが言うのをやめたら多分自分自身が(物理的に)駄目になってしまう気がした。

 もはや恒例というやり取りをしてレイナは溜息をぐっと飲み込み謁見の間を後にした。


「ちくしょー!! 絶対報酬倍高にしてもらってやるからなーーー!!」


 誰もいない広い廊下で地団駄を踏みながら叫ぶまでが流れである。

 麗しい国王専属騎士の女魔導騎士。

 そんなものは所詮猫を被った表の姿に過ぎないのだった。




さらっと読めて笑って楽しめるものを目指して。ただし、後半はシリアス展開です。そして結構長いです。気長に楽しんでもらえれば幸いです。

初投稿の為、少々色々お試しでいじっています。余裕が出来たら少しだけまとめて投稿したいところです。


●123


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