表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
還らざる翼  作者: pal
9/44

一条との出会い

その日の放課後、美沙はいつものように母親のお見舞いに向かうため、校舎をでる。


明雄が教室の窓から校庭を眺めていると、美沙の後ろから南井たち3人が後をつけているのが見えた。

一抹の不安を覚えた明雄は急いで美沙の後を追う。案の定、校門を出たところで美沙が3人に絡まれていた。

「お前の母ちゃん結核なんだってな」

感染うつるから明日から学校来んなよ」

「おい、何とか言ってみろ」


口汚く罵る南井たちに、美沙はすこぶる迷惑そうに懇願した。

「お願いだから、やめて、放っといて」


美沙の困った顔が3人のイジメっ子たちの嗜虐性を刺激したのか、ますますエスカレートする様相を呈していた。

明雄も美沙を助けに入りたいとは思ったが、3対1ではあまりにも分が悪い。


「やめてやれよ、可哀想じゃないか」

口頭で制止はするものの、割って入って止めることまではできなかった。


「おい!やめろ!」

明雄の背後から誰かが制止する声を上げる。

みんなが驚き、一斉に声のする方向へ視線を向けた。


その視線の先には、1人の男子がいた。

その男の子が近所の中学生であることは制服から推測できた。


「なんだ、お前は、邪魔すんな」

突然現れた中学生にやや怯みながらも、南井は強気にでた。

取り巻きが見ている手前、弱みを見せられなかったのも理由の1つだろう。


「3人でよってたかって女子おんなのこをイジメて、楽しいか?」

「イジメなんかじゃない、俺たちは一緒に遊んでるだけだ、な?」

「そうだ、俺らは仲よく遊んでるだけだ、邪魔すんな」

南井が同意を求め、山川、伊井が同調する。


美沙は黙ったままだったが、南井が親密さを印象付けようとしたのか、無理やり美沙の肩に手をまわす。

「やめて、離して!」

美沙は嫌悪感と恐怖で一瞬硬直したが、すぐに抗った。


「明らかにその子は嫌がってるじゃないか」

「うるさい!」

「おい、山川!木下を見張ってろ!」

「伊井!こいつを一緒にやるぞ!」

南井は2人がかりで殴りかかった。


「君、すまないが、助太刀を頼めるかな?」

その中学生は、やや分が悪いと思ったのか、近くにいた明雄に声をかけた。


「はい、もちろんです」

明雄も思いもかけない出来事に呆気にとられていたが、これも天祐と思い、意気込んで加勢する。


明雄は伊井と対峙する形となった。

「佐野!お前、裏切ったな」

裏切るもなにも、はじめから仲間になった覚えはないのだが、中学生の加勢に入った明雄に南井はそう叫ぶ。


一瞬、南井に気を取られた明雄の隙を突いて伊井が殴り掛かった。明雄は慌てて避けたが間に合わず、伊井の拳が明雄の額に当たる。

たまらずに明雄が倒れると、伊井が馬乗りになり、そのまま取っ組み合いになった。


南井は明雄と伊井の取っ組み合いに気を取られていた。

「おい、お前の相手は俺だ」

その隙に上級生は南井にそう声をかけると、瞬時に襟元を掴んで払い腰で投げ飛ばした。

さらに背後から馬乗りして、片腕を後ろ手に捻り上げる。


まさに電光石火の早業だった。

一瞬の出来事に南井は状況が把握できずに驚いていた。いや、その中学生以外、その場にいた全員が同じだった。


予想外の出来事に全員が驚愕して戦意を失っていた。


「痛ててててて、おい、放せ!」

「お前、もうこの子をイジメないと約束するか?約束するなら放してやる」

「わかった、もうしない、だから放せ」


口調から反省してない様子だったが、中学生が南井を開放した。

「お前、おぼえてろよ!」

南井たちは急いで離れると、捨て台詞を吐いて逃げて行った。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ