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還らざる翼  作者: pal
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初授業

一条がその場を離れてからしばらくして分隊長がやって来た。


ガラッ!っと引き戸を開いてコツ!コツ!と床に靴音を響かせながら教壇に上がる。


「気をつけ!」

「敬礼!」

号令を受け、みんなが一斉に起立して分隊長へ敬礼をし、「着け!」と言う分隊長の合図を受けて全員が着席する。


分隊長は教壇の上からジロリと見渡してから口を開いた。


「貴様たちはえある帝国海軍の飛行兵に志願し、難関を突破したつわものどもである。ここに入隊したということは、優秀な人材であることは間違いがない。その優秀な人間の能力をさらに伸ばすために日々磨きを掛ける必要がある。辛いことも多かろうが、決して弱音を吐かず、根性を持って立派に精進してもらいたい。全員、このことを肝に銘じておくように。わかったか!」


「はい!」

全員が一斉に大声をあげて返事をした。


「次に、我々軍人が天皇陛下よりたまわった勅諭ちょくゆべる」

そう前置きした上で、分隊長は後ろ手を腰にやると大声を上げた。

「上官の命令は天皇陛下の命令と同じである」

「復唱!」

そう言われて全員が一斉に「上官の命令は天皇陛下の命令と同じである」と復唱する。


さらにに軍人勅諭ぐんじんちょくゆ5ヵ条を全員で復唱する。

「一つ、軍人は忠節を尽くすことを義務としなければならない」

「一つ、軍人は礼儀を正しくしなければならない」

「一つ、軍人は武勇を重んじなければならない」

「一つ、軍人は信義を重んじなければならない」

「一つ、軍人は質素を第一としなければならない」


その、分隊長が軍人勅諭5ヵ条の意味を練習生にたずね、答えさせる。

すべて暗記する必要はなく、大まかな意味さえわかっていればそれでいいらしい。


分隊長の授業が終わると次々に担当の教官が講師としてあらわれ指導する。

授業は訓育として精神講話、体育、普通学として数学、国語、理化、地理、英語

軍事学として運用、砲術、水雷、通信、航空、機関、短艇、等、ありとあらゆる授業が行われた。


体育は走りが基本で、とにかく走らされた。

分隊単位で騎馬戦なども行われるが、負ければ当然、罰直ばっちょくとしてバッターやあご(鉄拳制裁)にさらされる。


分隊単位で制裁するのは流石に殴る方も負担が大きいため、

「いいか、手加減などするんじゃないぞ」

「お互い思い切り殴らんと、いつまでも繰り返させるぞ」

そう言って、練習生にお互いに殴らせる。


普通学にしても、問題に答えられなければ

「貴様!こんな問題も解けんのか!」

と言われて鉄拳による制裁が待っている。体罰など日常茶飯事だった。


授業の最後に小試験があり、これがのちに成績となって順位づけされる仕組みなのだ。

この成績がかんばしくない場合、班員全員に対し、班長からのありがたい激励げきれいのバッターが全員にくだされる。

すべてにおいて連帯責任を取らされるのだ。


初日から文字どうりボロボロに疲れ果てた。

こんなことで続けていけるのだろうか、明雄は少し不安に駆られた。

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