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日常に潜むかもしれないちょっと怖いストーリー コンビニ編

作者: エジョフ

──── 物事には必ず”トリガー”がある。


「ちょっと自販機に飲み物を買いに行った」だとか

「いつものテレビが今日はないから早く寝よう」とかだ。

その行為自体に深い意味が無くても「物語」は知らないところで動き始めるのである。


ある日「私」は夜中に目が覚めた。 妙な「悪夢と言えば悪夢」のようなモノを見て起きてしまったのだ。

「まだ3時じゃないか...」

まだ夜が明ける訳でも無い時間に目が覚めてしまった私は再び眠りにつこうとする。

だが、こうも変な時間に目が覚めてしまえば「再び寝る」という事が難しいのが人という生き物である。


「しょうがない、もう寝れそうにないしコンビニでも行こうか...」

クローゼットのハンガーに掛かった服をサッと着ると私は深夜3時のコンビニへと足を向けた。


季節は春先、まだ深夜は冷えるのだが中途半端な眠気覚ましには丁度いい寒さではあった。

私はちょうど流行りの歌を口ずさみながら誰も居ない街灯がただ照らすだけの道を歩む。


家から4・5分歩けばそこには行きつけのコンビニがある。

まあこんな時間に来たことはないのだがな。

と、心の中で思いながらも、いつものようにたどり着いた「コンビニ」は普段とは違う感じがしたのだ。

「ここってこんなに奥行きが広かったっけ...?」


いや間違いなく広い風にしか見えないのだ。 例えるならば郊外のホームセンターレベルの奥行きである。

しかもBGMは大凡のコンビニでは絶対に流れないであろう古い民謡だかなんだかが流れている。


──── いらっしゃいませ~


コンビニらしくいつもの様に店員の声が聞こえてきた、 と思ったが明らかに声がおかしい。

筆舌に尽くし難いのだがあえて表するならば昭和のテレビから聞こえてきそうな妙に高い声なのだ。


気味の悪さを多少感じながらもいつもの様に「唐揚げ弁当」と「お茶」をカゴに入れてレジへ向かう。

そのついでに最初に感じた奥行きの気持ち悪さも確認したのだが実際は普段と同じであった。

「夜中特有のちょっとアレなアレだよアレ」と、私は気を紛らわせてみた。


さあレジに着いた。後は会計をして気味の悪い深夜のコンビニを脱出してやろう。

そんな事を考えると裏から店員さんがやってきたのだが、見た目が明らかに「人間のソレ」では無いのだ。


見慣れた制服は来ているのだが、頭からはいわゆる犬みたいな耳が、

そしてお尻には映画の世界でよく見る太いちょっと傷ついたトカゲの尻尾みたいのが生えているのだ。


「明らかにこれは普通の人間じゃないぞ...」

仮に普通の人間だったとしてもこんなコスプレをして店員をやってる時点で

ヤバイのは火を見るより明らかだし、しかもそれは見た目年齢50代後半のおじさんなのである。


─── 「合計2つで320円となります。」


「ん?」

私は当然の疑問にたどり着いた。 普通に考えて鶏の唐揚げ弁当とお茶がこんなに安い訳がない。

だが安いのだからコッチとしては文句はない。 コンビニ弁当に求めるのはコスパだからな。


私は320円ちょうどを出すと店員さんは普段どおりに「お弁当温めますか?」と聞いてくる。

そりゃもちろんチンしてもらうのだが、この待っている時間に居たたまれない気分になってきた。

                   ・

                   ・

                   ・

ちょうど1分ぐらい経って温め終わったらしい。

店員さんはお茶とお弁当のレジ袋を何も言わずとも分けてくれて、

私はレシートを受け取り買った商品を持って帰ろうとしたその刹那...



── 私はさっきまで見ていた夢の中身を思い出した



ちょうど目が覚めてコンビニに行ってよく分からない店員に会った...


まさに今の状況と同じである。それに気付いた私は軽くゾッとしながらも家路を急いだのだ。

「嘘でしょコレって正夢? それとも私はまだ夢の中に居るの...?」


気が付くと後ろから足音がする。 確かに人の足音である。

「タッタッタッタッ」 明らかに私を追いかけている!?


私はただただ走った。 家に戻らなければどうなるか分からないと瞬時に感じ取ったのだ。


どんどん足音は近づいていて遂に私は・・・追いつかれてしまったのである。

振り向くとさっきの犬耳でトカゲの尻尾の生えた店員のおじさんだった。


──── 「お客さんスイマセン、お箸を入れ忘れてました。」


私は腰を抜かして立てなくなってしまった...。


ただそんな事のためにおじさんは私を追いかけてきたのか?  このいたいけな乙女を?


──── 「お嬢さん大丈夫ですか? 立てますか?」


案外おじさんは紳士だ。 獲って食われると思った私が恥ずかしいレベルである。


そんなこんなでなんとか家にたどり着くと、一息つくために買ったお茶を

開けようとしたらここで一つ気付いた事がある。


「これお茶じゃなくてポン酢じゃん...」 

そう、彼女は不気味な雰囲気にテンパってお茶じゃなくポン酢を買ったらしい。



「それにこの唐揚げ弁当・・・トカゲの尻尾って書いてない?」



どうしてもオチを付けてしまう関西人の業

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