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「拙者は国に帰る」
「うん」
塩や水を積んだ猪牙舟に乗り込む。
「気の使い方は一通り教えた。リックよ、決して気を和国の侍に習ったなどと言ってはならんぞ」
ムッとした表情になり
「何回言ってんのさ。そんなにバカじゃないよ』
ムキになる顔にふっと笑ってしまう。
「わかっている。念のためだ。そうだ。これをやろう」
「ん?」
佐村が首に下げていた何かを外す。
「何それ?」
「気積石という。気を溜められるんだ。お前の母上の形見だ」
「うん。ありがとう」
「奥義までは教えられなかったが、まぁ、自己流でも良い。精進するのだ」
「わかった。ありがとう」
紐の先に括られた青の石がきらめく。
「じゃあね」
「達者でな」
猪牙舟が静かに陸を離れた。
佐村は振り向かない。
「・・・・・さてと、俺には俺のやるべきことがあるからな」
アルとの戦いまで残り1日。
村の裏にある森に向かう。
「ここなら、良い木もあるだろうな」
一本一本に手を当てて気を流す。
佐村によると、同じ木でも自分の気が通りにくいものもあるという。
これで良いかな、と一本の木にあたりをつける。
気を登り、丁度良い枝を見つける。
村から持ってきた小刀に気を流す。
刀が薄く赤い気を纏った。
腕の筋肉に一瞬だけ気を最大に込めて振り抜く。
硬い木はスパッと切れた。
さぁ、もう一本、と同じように良い木を見つけ、枝を入手した。
「さてと、次は木刀を作らなきゃ」
村に戻った俺は村の『削り工』に頼んで木刀を作ってもらう。
二本の木刀は軽く、短い。
こんなんじゃすぐおられると言われたが構わない。
日本の木刀は練習で使っていたものよりも数段使いやすく、長さや太さも注文どおりで使いやすい。
俺のイメージは刀だが、大きさはナイフより少し大きいくらいだ。
だがこれで良い。
戦闘中は気で『強化』してるし、そもそも俺は剣が向いてない。
あれは重みで潰すためのもので切ることに特化していない。
俺は魔族の中では力がないし、何より圧倒的にリーチの差がある。
どちらも解決するには刀を軽くして相手の懐に飛び込むのが良い。
もしもやばくなったら奥の手だけど・・・・・・。
今日は早くねよ。
布団を敷いて横になる。
そういえば最近家で飯食ってなかったなぁ・・・・・。