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偽善と選択

男は暗闇の中で目が覚めた、目の前には2つの分かれ道と看板が2つ。

そしてどこからともなく、不気味な声が響いた。

「2つの選択肢のうちどちらかを犠牲にしなければ、先には進めない。5つの選択を終えれば、外に出られる。」

男「選択?」

看板1「財産を失う」看板2「年老いた母を失う」

男「なんだこれは。どちらかを失わなければ先には進めないってことか。」

男「財産なんかより、母の方が大事に決まっているさ。母には沢山迷惑をかけてきた。ここから無事に出られたら、沢山恩返しをしなければいけない。財産を失う方の道に進もう。」

男「ここは?前にいた場所と変わらないようなところに出たが、まさか?」

看板1「年老いた母を失う」看板2「男の子供を失う」

男「どちらか一方の命を見殺しにしろってことか?そんなこと…できるわけがない。」

男「どれくらいここに居たんだろう…お腹も空いた。このままここにいたら死んでしまうだろう。すまない…僕は年老いた母よりも未来ある子供の方を助けるよ。本当に…すまない。」

男「また同じような場所に出たな。今度はなんなんだ?一体。」

看板1「男の子供を失う」看板2「男の妻を失う」

男「もう…怒る気にもなれないな。子供を失おう。子供には悪いけど、子供ならまた作れば良いさ。」

男「あと選択は2回か…。今度はなんだ?」

看板1「男の妻を失う」看板2「男の命を失う」

男「僕が外に出るための選択なんだろう?僕の命がなくなったんじゃ、話にもならないよ。妻を失おう。」

男「さて…。最後の選択だ。」

看板1「男の命を失う。」看板2「地球を失う。」

男「ふっ…ふははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは。なるほど、どう足掻いたところで僕は助からなかったのか。ふっ…ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは…」

暗闇の中に男の声だけが響いていた。

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