恨んだ先に
少し時間を遡り……。
中央ホールにて。
「一時間経過したわ。そろそろ動いた方がいいわ。突入されると都合が悪いしね」
武司は二人の仲間に向かって提案した。聡志が「そうですね」と答える。
「お前らはここにいろ。館長は何処に居るか分からんがまぁ、一階の爆発で死んだことを願うが……」
爆発から30分ほどたち、一階の見回りに行ったが一階は悲惨な状況で誰が誰だか分からなかった。爆発から離れているところは原型をとどめていたが、館長らしき人物は見つからない。薄暗かったので、見落としがあるとも言えないが……。入り口付近は外部のものに見つかる恐れがあり、健治は爆発の近くまでは確認できなかった。それを武司と聡志に告げると「そうですか」「残念ね」と肩を落としていた。
健治は先ほどの博物館スタッフをまた立たせ、同じ窓から警察に向かって叫んだ。
「30分時間をやる!逃走用のワゴン車と1000万金を用意しろ。出来なければ……」
健治は博物館スタッフの女性を前に突きだし、こめかみに銃口を付けた。
「ここで公開処刑だ!」
その言葉に待機していた警察やマスコミ、いつのまにか増えていた大量の野次馬がざわつき始めた。そして、画面の向こう側で立てこもりを見ていた視聴者はゴクリと息を飲んだ。そのとき人々は二つに別れた。これは放送事故になる、そんなもの見たくないっと処刑を止めてほしいもの。興味本意で見たお者、こういうグロい系の趣味を持つ者は処刑を執行してほしいもの。理由は人それぞれであった。
健治はそれだけを言い残し、中央ホールへ戻った。
「お帰りなさい、健治さん」
「お帰りー健治君」
「あぁ、やっぱり気になるからもう一回見回ってくる」
館長の死をこの目で見ないと気がすまないようだと二人は悟り、「ここは任してください」「いってらっしゃいー」と見送った。
そんな二人に感謝しつつ、一階に続く階段を下りようとしたとき、
「理解できるわけないじゃないですか」
と突っ込みに似た声が聞こえた。
いや、ツッコミだ……と健治は判断。
しかし、何故こんな状況でっと疑問が浮かぶ。
声からして性別は女だがあの悲惨な状況でそんなに余裕があるほどの軽傷の客が居たことに少し驚きつつ階段を下りる。
階段を足音を立てずゆっくりと下りるが、あれから声は聞こえない。銃を行く方向に常の向けながら、警戒を怠らない。しかし、一階に降りても気配がなく「気のせいだったか……」と自分を疑った。威嚇で一発の天井に撃ち、ついうっかりと
「誰かいるのか?」
と呼び掛けた。当然問いに答える者はいない。そのミスが小春と漸に危険を知らせたことになる。
一歩ずつ慎重に先を歩く……その時、ショートケースの裏側に突然人影が現れ、一瞬驚き遅れをとったが素人にしては素早い反応を見せた。引き金をに触れようとしたとき、何故か髪がピンクの中学生ぐらいの少女だと気づく。子供であろうと容赦しない……と計画前に決めていたので躊躇なく引き金に触れた。腕に軽く発砲による衝撃に耐えながら、弾の行方を目で追う。勿論、殆ど見えていないのだがしかし真っ直ぐに女子中学生に向かったことを確認……しかし、居なかった。女子中学生は見当たらない。焦りを覚えた健治。次に少女を見たのは、自分の腹部に潜り込んだ髪と同じくピンクの透き通った瞳だった。
心臓にうっとした痛みとともに意識が強制的にシャットダウンされた。
首謀者 健治 死亡
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