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尋問

 

 あれから数ヵ月が経った。


 エミリーとはあれから何度も根気強く話した末、友達(仮)となっていた。

 あの廃ビルの被害者は奇跡的におらず、その周辺に住人を驚かせたのが被害だろうか。


 そして、慌ただしかった受験戦争が終わり中学校生活は残すところ2週間だ。


 その日曜日だった。

 紗智菜からの提案で女子で出かけることになった。メンバーというと紗智菜、小春、無理矢理エミリー。何だかんだ紗智菜とエミリーが仲が良いことを小春は知っていた。


 朝から何だかんだ買い物して、近くのファミレスで昼食をとることになった。


 そして、紗智菜はいきなりテーブルのお冷やがカタカタと揺れるほど叩いた。ビクッと肩を震わせる小春と「ったく騒がしいわねぇ」と言いながら紗智菜を睨む。

「騒がしいのはおねぇさまの周りです!」

 エミリーはじと目で紗智菜を見ながら「ほんとね。ほんっと煩いわ」と呟く。その意味を理解していないのか紗智菜は言葉を続ける。

「煩いです。今日はしっかりと骨の髄まで話し合いおねぇさまの気持ちをはっきりさせましょう」

 そこでちょうどお冷やを飲んでいた小春が吹き出しそうになり手で押さえ、ゴホッと苦しそうに咳をした。その所為なのか若干涙目の小春「な、なんの話?」と聞き返す。

「本当になんの話? 全然見えないわ」

「そうね。エミリーは知らなかったわね。ちょっと耳貸して。カクカクシカジカ」

 暫く耳打ちをして、終了するとエミリーは小春をみて「なるほどねぇ」と意味ありげに呟く。小春は話に着いていけず時間が経つのをただただ待っていた。

  

「エミリー、気づかないのにもほどがあるでしょう?」

「まぁね、それは否定しないわ。最早才能ね。本当にお花畑なのね」

(貶されてる気がするんですが……)

 勿論、小春の才能とは自分へと向けられている好意だ。

 卒業を間近にしているが気づく気配さえない。その事に紗智菜は言わずにはいられない。尊敬する小春がもし誰かに思いを寄せているのなら全力で応援したいと思っていた。特定の誰かが出来るのは紗智菜にとっても辛いのだ。だがしかし、どこの骨の馬かさえ分からない男に小春に取られ、いつかは押し倒されることなど断じて許せる気がしない。

 3人のうち1人は人間でさえないが、関係ない。

 卒業までに、いや今日までに自分の気持ちに気づいてもらわないと後がない。桜庭は教師でまだあの学校に留まるだろうが、小林は医者になるために県でも有数の進学校に行くと聞いていた。漸は今まで変わらない。

 小春の鈍感には舌を巻いていた。

 しかし、今はエミリーという新たな味方がいる。

 今日はどうにかなる気しかない。自信しかない。




 紗智菜は小春とは対極に座り、エミリーは小春の横に座った。

「さぁ、おねぇさま?」

「な、何? 紗智菜ちゃん」

 不敵な笑みをに思わず体が引いてしまう。

「おねぇさまってー、恋したことあります?」

「き、急にどうしたの!」

 ビックリして心臓が跳ねた。

 タイミングよく「お待たせしました」と料理を運んできた。

 一旦休戦したと思ったらエミリーが店員が行ったのを見計らい「で?」とほじくりかえした。小春は「エミリーさんまで……」とぼやいた。

「おねぇさまは興味ないんですか? 恋愛に」

「え、ないよ」

 エミリーが嘆息していたが小春は気づかない。

「気になってる人とかは?」

「みんなどうしたの? 急に」

 エミリーは料理を口に運びながら「貴女があまりにも鈍感だから痺れを切らしたのよ。お宅の妹さん。まぁ、そのうち野獣どもに襲われないように気をつけなさい」と小春に助言した。

「おねぇさま。もし……“もし”ですが桜庭、小林君、漸に」

「に?」

「同時に告白されたらどうします? 誰を選びます?」

「告白って……」

「恋愛です。さぁ!」

 切羽詰まる勢いで聞いてくる紗智菜に呆気を取られる。

 するとエミリーが小春の左腕を掴み、「逃げなさんな。私も気になるの?」と静かなる圧が小春を襲う。

「うーん、そうだなぁ」

 ファミレスに緊張が走る。

 紗智菜の周りを気にせず話していた所為か述べ10数人が話の内容は掴んでいた。


『この少女は天性の鈍感で、無意識の逆ハーレムを作りあげている!』


 と。

 客の話が静まり、皿の音さえ聞こえない。ファミレスらしからぬこの静けさ。

 誰もが小春の答えを今かと今かと待っている。一字一句聞き逃さないと耳をすませる。


「そんなことないけど、もしもだよねぇ……うーん」


 ……。



「そうだなぁ」


 ……。


「私は多分」


 ……。


「きっと」


 ……。


「逃げる」



 ズコォォォォ。

 お客はそんな気持ちだった。


「いや、選んで下さい」

「えー、じゃぁ、漸さん」

「え」

「は?」


「「えぇぇぇぇぇぇ!」」



「まって、落ち着いて。そんなんじゃぁないからね。漸さんと一緒にいる時間が長いからで特別な感情があるわけじゃないよ」

「そ、そうですか」

 疲れきったような表情紗智菜。

「まぁ、こんなもんよ」

 平然としてるのエミリーだった。




 モヤモヤしたまま終わった『小春の恋ばな』だった。



もう少しで終わりますね。笑

最後まで良かったらお付き合いください‼

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