言葉
一人の時間はどれ程経っただろうか。
先程から暗闇の世界、教室、小春の両親が亡くなる原因の交通事故にループする。
その度に小春の心は病んでいき、孤独感は増すばかりだ。
そんなときだった。
ーーこ……る!
何者かの声が聞こえた。
耳をすますと、
ーー目ざ……くれ!
途切れ途切れではあるが確かに聞こえた男性の声。
辺りを見回すが誰も居らず、暗闇が広がってるだけだ。
ーーこは……!
どうやら、この男性の声は誰かを呼んでるようだ。
「誰?」
そう問いかけるも聞こえるのは途切れた声のみ。
何と言ってるのかさっぱりだった。
しかし、どうもこに声の主は小春を安心させた。
「誰だろ……」
ぽつりと溢した言葉は異様にこの世界に響いた。
ーー小春!
初めてちゃんと聞き取れた言葉。
声の主は小春を呼んでいたのだった。
更に、
ーー目覚めてくれ!
ーー起きろ!
また、はっきりと聞き取れた。
その声の主は誰だと思考をフル回転させる。
(この声は……聞いたことのある。確かずっと側にいたような)
そして、気づく。
この世界で登場していない人物だということを。
暗闇の世界に向かって叫んだ。
「漸さん! 私はここにいます!」
声にすることで思考がはっきりとした。
ーー目覚めてくれ!
(目覚める……寝る。そうか。そうなんだ)
「夢……なんだね。漸さん」
すると視界は明るくなり安心感に包まれる。
「小春!」
「漸さん……」
小春は漸に抱き抱えられていた。
「チッ!」
乙女らしからぬ行為をしたエミリーの顔はあからさまに苛立っていた。
「あら、目覚めたの? しぶといこと」
小春は漸の手を取りながら立ち上がり、エミリーを見た。
「光栄です」
皮肉ぎみに言った小春に更に苛立ったようだ。
「小春、早いとこかたをつけろ」
「はい! 漸さん、ありがとうございます」
再び、小春は力を宿らせた。
北風に揺らされピンクの髪の色が視界に入る。
「ねぇ、エミリーさん? 私と手を組みたい理由、教えてもらってもいいですか?」
ずっと疑問だった。
なぜ、こんなことまでして協力したい理由があったのかを。
「いいでしょう。ご褒美に話しましょうか」
「……」
「私の目的は貴女とそう変わりません。腐った世界を変えたいだけですよ。理由なんてそんなもんですよ。この世界の平和を本当の平和を導きたいだけなんです」
(いい人なの?)
困惑する小春。
「でも、貴女がいれば恐怖の支配で争いもなく平和にできる」
「……」
「あなたもそう思わない? 無駄な争いをして命が消えるより、選ばれし者の私たちがこの世界を救うのです。だから貴女に心から協力をお願いしたいんですよ。そして、私の両親は紛争に巻き込まれ死にました。世界を救うと言いますが、復讐もありますがね。どうです?」
「お断りです」
「やはりそうですか。なら、最初に申した通り拳で語り合いましょうか」




