ネジが外れる
長いです。
博物館:一階にて。
小春はは現実に引き戻されることになった。その理由は、左脚の太股に激しい痛みが走ったことだった。
「っ! 」
その原因はすぐに分かった。割れたガラスの鋭い刃となったものが刺さっていたのだった。
「おー、やっと起きたか」
何やら聞きなれない声。聞こえた方向の頭上を見上げると小春は固まった。
「早く起きないとここの博物館崩落するぞ」
混乱する小春をよそに小春に助言を告げている。
「……誰? 」
小春は絞り出した言葉は短い。なんせ、小春には身を覚えのない青年がいた。その青年は漆黒の黒髪、日本人かと思えば藍色の透き通るかのような瞳。着崩した瞳の色り明度を落とした藍色の浴衣のようなものを着ていた。そして、地味に整っているーーつまりイケメンというのが小春の癪に障った。
割れていない小春の頭上にあるショートケースに座り、こちらを見下げていた。
「知りたいか? 」
太股の痛みを耐えながら青年の問いに答える。
「……目の前にいるのに助けない貴方の心情を知りたいとは思うけど、江戸時代にいる人のようなコスプレのわりには違和感無いけど知ったら知ったらで後悔しそうです」
小春にしては流暢な話し方だった。
「助けてないのは、致命傷じゃないし今までは眠ってもらった方が都合がよかったから。」
「なにか分からないですけど、……貴方自身は誰ですか? この状況が理解してるような口振りですけど……」
遠慮がちに聞いた小春。すると青年は
「俺はお前が鞘を抜いた刀の魂のようなものだ」
(はっ?待って……)
「爆発があっただろう? その時に、あの刀はお前の血を取り込んだわけで、理由は追々説明するが……要するにあれは曰く付き刀だということで理解すれ……」
「理解できるわけじゃないですか! 」
青年の言葉を遮り、今年一の声を出した。
「だろうな」
「だろうなって……私は霊感の欠片もないですけど百歩譲って貴方が幽霊的な存在だということは理解したくないけど理解している冷静な自分がいることが悔しいですけどってえっ!」
二階からダダダダッとリズムが良いーー銃声が聞こえた。
(忘れてた……どんな状況かは何となくわかるけど……)
「誰かいるのか? 」
低くどぎつい声が足音と共に聞こえた。近くなる足音。息を潜ませる小春。心臓の鼓動がドッドと並みを打つ。身体も動かない見つかったら絶体絶命な状況は間逃れない。
「ここを襲った奴らに一人が30秒ほどで来るけど」
(分かってるよそんなこと! 少しこの人黙ってくれないかな……)
「酷いな、黙れって」
(エスパーなのあっ刀の魂って言っているから今更か……)
「心は俺は読めないからな……顔に出てる」
(やっぱり、この人エスパーです)
小春の中でエスパー認定された。
「俺ならこの状況を打破出来るが……どうする? 」
(すごく嫌な予感しかしないけど……)
小春は動かない体を憎みながら、コクりと小さく頷いた。
「本当に良いのか? 五分五分で逃げ切れる可能性もあるが、俺と契約を結ぶか? 」
(契約……まぁそんなこともあるだろうと思ったけど)
小春は何やら決心したようで、先程より深くコクりと頷いた。
「さぁいくぞ」
そう言った青年は小春の前から消えた。しかし小春の目の前の床には鞘が抜いてある状態に黒光りしたあの刀があった。それと同時に、さっきまでの全身の痛みがフッと消えた。突然なことが次々に起こる自分の身に若干恐怖を覚えた。
ゆっくりと立ち上がった瞬間、いつに間にか襲撃したであろう男と目があった。一瞬の沈黙ともに、銃口から火を噴くのが見えた。飛び出した肉眼ではとても追えない銃弾がとてもゆっくりと見えた。小春は体が軽く感じたことに驚きながら相手の腹部に向かって走り出す。その距離十五㍍。数秒もかからないうちに腹部にたどり着き、持っていた刃渡りが長い刀で斬った。
その時にゴツい顔の男と再び目が見開いた状態で目があった。バタンっと鈍い音を一階に響かせながら男は倒れた。
「ふぅ」
と安堵してから頭の中で響く青年の声。
「最初にしては上出来だ」
「死に物狂いですから……ありがとうございますえっと……」
「あぁ、俺の名は漸だ」
「漸……漸さんありがとうございます」
「ふっ、これはもうお前の力だ。館長の野郎と話してたときとずいぶん違うな」
「宮倉小春です。コミ力低いんで。漸さんは人じゃないですから」
「毒舌だな……」
「後悔しました?」
漸は得意気に
「いいや、逸材だ」
「お褒めいただきありがとうございます。っていうか斬ったのに血さえ流れてないことについて教えてほしいのですが……」
ーー色々と私は……可笑しいのは気のせいじゃない
ーー人殺し
そう、耳に幻聴が聞こえたのは気のせいにしておこう。
ありがとうございます。
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