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街灯

 日が暮れた街中にて。




「こんにちわ。宮倉小春さん」

「二度目ですね。今回、何のようで?」

 優雅に現れた金髪の少女と小春との空気はいいものとは言えない。

 町行く人々は二人のことなど気にも止めようとしていないが、裏路地からこちらを覗いている黒猫は警戒するように毛が逆立っている。

「覚えてくださってたのね。光栄だわ。もう、力は戻ってるようね。記憶が戻ってきた本当に良かったわ」 

 口を手で隠しながら笑う姿は品があった。

 町は街灯や店の明かりによって明るく照らされているようだが二人の空間だけは異様であった。

「私に何か?」

「あら? 随分と冷たいのね。私はもっと貴女とお話し、したいわ。貴女はそうではないみたいだけど」

「用件は」

 金髪の少女は小春に手を差し出す。外国人特有のきれいな白い肌だ。

 小春はその手の意味が分からず、無言で金髪の少女に目で訴える。

「私と手を組まない?」

 口角をを上げた姿はさながら天使のよう。少し童顔だからかよりそれっぽく見える。

「お断りします」

「決断が早いこと……。最初から承諾をしてくれるとは思ってはいないけど……ねぇ? では、少しお話をしましょうか。場所はきちんと用意してあるの。安心なさって。人の目が気にならないとっておきの場所を」

 小春は固唾をのみ拳を握る。

「来てくださらないの? でも、どうなってもいいのかしら」

「どういう意味ですか?」

「この町の人々を……そうねぇ。夢から目覚めさせないってところかしら」

「……分かりました。案内してください」

「いい判断ですね。さ、参りましょう」


「小春……」

「大丈夫です……とは言えませんが皆を巻き込みたくはないんです」



 ーー約束、破ってごめんなさい。



 小さく深呼吸をし、歩み出した。















 数日前……。




 小春が以前に奇妙な人物の事を皆に話したことだった。

「おねぇさま、もし成りすましの人物が接触したら私たちに連絡してください」

 懇願するような面持ちで、小春に言葉を投げ掛ける。

「遠慮しないで、僕らを頼って」

「皆……ありがとう」

「そうです! おねぇさま。約束ですよ?」

「……うん」







 そう、約束した矢先だった。


 少し帰りが遅くなり家路を急いでいた。


 突然人混みから現れた見覚えのある人物。


 その場で体が固まり、その少女から目が離せなかった。



 それと同時に紗智菜と桜庭と交わした約束を思い出す小春だが、スマホに伸ばしかけた手が止まる。



 ーーごめん。



 そう、心で謝る。




 歩き出した二人が向かったのは工事現場だった。

 辺りには人影など見当たらず、現場に取り残されているショベルカーだけが存在してるだけだった。





「さぁ、始めましょう」



 少し強めな北風が少女逹の髪を揺らした。



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