写真騒動
廊下にて。
スキップしそうなほどの上機嫌な紗智菜は艶やかなツインテールを揺らしながら、歩いていた。
(うへへ……いいもの手には入れたー麗しのおねぇさま!)
「わっ! ごめんなさい」
「いや、俺こそごめん」
紗智菜にぶつかったのは小林であった。
「城島何か落としたよ。写真? ……なっ!」
「小林君、そ、それは!? 見たらダメ……って遅かった……はぁ」
小林が拾ったそにブツとは写真だ。勿論、ただの写真ではなかった。
その写真には小春が写っていた。スクール水着を着た小春。
小春の陶器のような白い肌の太ももは露になり、濡れた髪は肌に張り付いていた。水を吸った水着は体のラインを明確にし、小春は控え目な胸だがその形もより分かるようになっているなど言うまでもなかった。
その写真の破壊力は効果抜群だったわけで、小林の顔を赤く染めるのには十分すぎるほどだ。
「じょ、城島。返す。な、何も見てない!」
「は、はぁ。小林君はバカなんだろうか? 何故持っていたとか気にならないのか? それどころじゃないだろうな……」
走り去る小林は紗智菜の目には少し哀れに見えたのだった。
「頑張りたまえ。小林少年よ。おねぇさま、罪深い女になったのですね……」
「ったく。漸さんの宣言がイマイチ分からないのですけど」
「そんなことないぞ、小春。未来が輝くためには今が大事なんだ」
「ビッチって……。その意味って嫌な女とか尻軽女ということですよね?」
「大丈夫。小春が気づかない限り、ビッチになんかならない。いや、俺がならせない!」
「いつの間に、漸さんは過保護になったんです?」
「安心しろ! 俺が何があろうと、魔の手から守ってみせる」
「……訳が分からないです」
何のいたずらなのかそこにちょうどブツを見てきた小林が教室に入ってきたのだ。
「こ、小春!?」
「ん? 何? 何だか顔が赤いけど……熱?」
当然、名前を呼ばれた小春は振り向く。
小林は小春を呼んだわけではない。あの後の遭遇で心の準備が出来ていなかったのだ。
小春が分かるほどの赤さは熱だと思われてしまう。
「い、いや。俺は何も見てないぞ! うん、見てない。決していやらしいことなんて考えてな……ごめん! 小春!」
「ま、まって! 透さん」
小春は呼び掛けるがそれは叶わず、再び教室を出ていく小林。
「どうしたんでしょう?」
一部始終を見ていた漸は呟いた。
「ま、所詮男だったと言うことだ」
その日の廊下で叫び声が聞こえたというちょっとオカルトな噂が流れたのだった。
「うわぁぁぁ!」
ーー見てしまった!
どう、顔向けすれば‼
写真事件は幕を閉じた。




