実行
若干長いです
博物館にて。
博物館に黒ずくめまでとはいかないが、あまり色みないものを着た、何やら黒いボストンバックをそれぞれ持った三人の男たち(一人、自称女)が博物館に入館した。
観光客が多いこの博物館なので余り気にせず受付の女は応じた。
「お客さま。三名でよろしいですか? 」
「あぁ」
「では、三名でで三千六百円になります」
金額通りのお金を取りだし受付の20代前半の女性に渡した。
「三名分のチケットと領収書です。どうぞ御ゆっくりご観覧してください。」
セミロングの茶髪を揺らしながら頭を下げる。
男たちは一階の展示品に目もくれない。
「健治くん、少し急いだ方がいいかも」
「そうだな、時間が惜しい。」
三人は足を速める。
博物館には、制服を着た中学生や高校生がちらほら見えた。
「健治さん、嫌なときに当たりましたね」
「子供を捲き込むが、いつものことだ。余り気にするな。計画に支障を来す。無理なら帰れ」
「すみません、大丈夫です。」
三人は二階に続く階段をかけあがり、ボストンバックから黒く危険な雰囲気を醸し出すゴツい黒い金属。ーーマシシンガンを取りだし天井に向かってだーだらだらと大きな音を出しながら撃った。
「お前ら! 殺されたくなきゃぁ、中央ホールへ移動しろ‼ 」
健治の怒号がとんだ。二階にいた人々は悲鳴をあげた。すると、ドンッという鈍い音と立ってられないほどの足元が揺れた。
「俺たちは本気だ! うるさい奴、抵抗する奴はすべて殺す」
人々は息をのみ、あまりの恐怖に失神するものもいた。
「分かったら、さっさと中央ホールに行けっ! 」
人々は前のめりになるほど走り出す。まぁ、必然的に転ぶ人たちがいる。ホールの扉の前は超満員。殺されたくないーー殺されたくないその感情だけが人々を渦巻いていた。
「順調だね、健治くん」
健治は逃げ惑う人々を見張りながらただ頷く。
数分後……。
「お前らは、俺達の目標のために人質になってもらう。先程も言ったが少しでも妙な動きをした奴はその場で射殺する」
総勢百人はいつ殺されてもいいこの状況にただただ震え上がるしかなかった。手足の震えが止まらない者、顔が蒼白になり唇も真っ青になっっている者。恐怖に怯える症状は十人十色だった。
「健治さん。多分もう来てます」
来ているのは勿論警察官だ。しかし彼らの目的は
「おいそこの女!」
「……はっひ」
「ちょっと協力して貰うだけよ」
武司は目が急に据わり
「まぁ、抵抗したり健治くんに害があることしたら一発で楽にしてあげる」
協力するように言われたのは小柄な女性で細身のスーツに身を着せた博物館スタッフ。女性は首に回転式の銃を当てられ、腰が抜け座り込んでいたが健治に腕を捕まれ立ち上がった。女性は膝が笑っていた。かなり怯えてるらしい。この状況では無理もないのだが……。
「マスコミ関係者! よく聞け! 」
武司だけホールに見張りとして置いてきて、女性を含めた三人は二階の窓から警察や、マスコミのカメラが見える見晴らしの良いところに人質を見せながら叫んでいた。
「俺たちはここの館長の横領を突き止めた! しかし、館長はしらばっくれ、働いていた俺たちを首にし、横領の罪まできせた。館長を殺すのは勿論のことこんな理不尽な社会を変えるために俺たちは動いた! 」
復讐心……彼らを動かした感情だった。彼らは正義感が強すぎた。行きすぎてしまった。感情に支配された彼らは暴走したのだった。
博物館前のマスコミにて。
「どうやら、彼らはこの博物館の館長に濡れ衣をきせられたようです!? 警察はまだ何も動けない状況のようで、博物館の一階では大きな爆発が起こりここから見る限りは、絶望的な状況とも報告を受けました。一旦お返しします」
中央ホールにて。
「お疲れ様、どうだった? 」
「大丈夫だろう。ここの博物館の実態は世に知れ渡っただろうがな」
次回は、小春ちゃんと謎のサムライ出てきます。
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