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平和

 窓の外では桜が咲き誇る教室にて。


 

 濃い濃い時間を過ごした中学二年を無事進級し、中学三年となり同時に受験生ともなった。

 担任はそのまま引き上げとなり、桜庭が小春の担任だ。

 クラス替えと言えば、小春の身の回りの人間は一人は除いてはあまり変わらなかった。


「おねぇさま……どうして、あの糞鈍感野郎が同じで……どうして愛しき妹が同じクラスではないのですか?」

「な……何でだろうね?」

(あらかた、私は違うと思ってるけど先生たちは紗智菜ちゃんのことリアル百合と思ってるかな……たぶん。そもそも、妹ではないよ。見てるって言ったけどこの形は想定外だよ……)

「宮倉、今年もよろしくね」

「え……はい。こちらこそ……」

「おねぇさま、その糞と話さないでください。糞がくっつきます‼ でも、大丈夫です! 私が手となり足となり手伝いますから! いえ、ぜひさせてください‼」

「えっと……うん」

「キャラ変わって俺の扱いが酷くなってるのは……気のせい?」


 と、この3人の関係の話が生徒たちの間で話題の十八番になっていることなど知るよしもなかった。




 紗智菜の本当の年齢は11歳。小学5年生頃だ。


 小春の察し通り、両親からの家庭内暴力、学校での悲痛ないじめが紗智菜の心の闇であった。

 そんな中、空き地にずっと放置してあった小刀。錆び付いていてとても本来の使い道など出来そうになかったが、幼い少女の体を傷つけようとするには十分であった。


 しかし、何のいたずらか死に至るまでの痛みに耐えきれず未遂に終わった。

 紗智菜の目の前に現れた自分より小さな男の子。

 金髪に赤い目その出で立ちに怖がる紗智菜だったが害を与える者ではないと分かると仲良くなるのは早かった。

 勿論、力が与えられたということを聞いてからは憎悪の感情が収まらず、親でありながら自分をいじめたことで母親の心臓をぐさりと体を奪い、その体で帰ってきた父親をぐさり。


「若葉……紗智菜やったよ」

「うん。よくやった。紗智菜は強い」

「紗智菜は強い。誰にも負けない」



 それから、紗智菜をいじめていた主犯格のクラスメートの体を奪い、次は親友であったのに自分を裏切った報いで自分と同じように悲痛ないじめを行った。



 そして、何人かの体を渡り歩き今に至る。

 そんな中で身につけた技術が一つ。

 そのものになりきることだ。

 しかし、その慣れ側は油断に繋がったのだろう。それもあったがタイミングが悪かったのであった。




 まぁ、それが最善なルートかは分からないがそうだと信じることをした小春であった。





「錆びていた刃はどうしたの? 綺麗みたいだけど」

「あぁ、城島さんの体奪ったときに財力はあるんで最初に綺麗にしました」

「そ、そうなんだ」

「じゃぁ、中身は小学5年生なんだよね。勉強とかは大丈夫なの?」

「大丈夫ですよ。城島さん、良く勉強してるみたいだし」

「い、至れり尽くせりだね。そのスキル」

「でも、もう使いません」




「若葉君に……ずっと睨まれてるけど」

 若葉は紗智菜の後ろで制服を掴みながらじっとこちらを見てるのだ。

 若干小春は怖い。

「若葉君可愛いですよー! 紗智菜がおねぇさまに取られてるみたいでおねぇさまに嫉妬してるんです!」

「へぇ……」

(止めよう、それ)








「宮倉、ずっと聞きたかったんだけど。いつ、そんなに城島と仲良くなったんだ? 宮倉、基本人と話すとき敬語なのに?」

「えーっとですね。……雨降って地固まるみたいな……ことがあっただけです」

(嘘でーす。嘘つきました。いや、ある意味ホントなのかもしれないけど紗智菜ちゃんにタメで! と懇願されたからです)

「そっか」

「ハハハ……」

(首突っ込む人じゃなくてよかった)








 今日も無事平和な日を過ごしたのであったが、直ぐ側に影は近づいていた。









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