色
廃ビルにて。
「おりゃあ!」
沢本は性格……いや人が変わったような気迫で小春に迫る。
ーー小春!
何手を抜いてる!
向こうは本気で殺そうとしてるんだぞ!
(分かってる……分かってるよ。でも……この人は城島さんなんだよ)
中身はどうあれ今小春の瞳に映る乱れた髪を払おうとしてないが正真正銘、城島の姿なのだ。以前の城島とは友情の欠片もなかっただろう。
しかし、何かの縁か分からないがクラスメートで、理由は自分が巻き込まれただけだろうがあの日イルミネーションに行った。
その時間を過ごした人間を果たして中身は違えど簡単に殺すことなどできるだろうか?
少し前の小春なら殺せたかもしれない。
ーー自分が生きるために。
躊躇いもなく。
その心臓の鼓動を止めれたかもしれない。
しかし、今の小春は以前の小春とは違ったのだった。少なくとも、漸に自分の中のものを吐き出し人間らしさを取り戻している。前のように冷めた人間ではなかった。
だからこそだとも言えるだろう。
今はそれが足かせになっている。
「っ!」
「追い詰めたわぁ‼ これで終わりよぉ‼」
ただの切り合いだと思われたが沢本が一枚上手だった。小春を大外刈で倒したのだ。
沢本は小刀を持っている右手を振り上げ、刺すモーションに入っていた。
ーー小春!
(分かってるよ……しないとダメだってことぐらい、分かってる。でも、私は……!)
ーー殺せないよ。
狂喜に染まった沢本の瞳はしっかりと小春を捉えていた。
小春が数分前まで知らなかったが、城島は正真正銘社長令嬢。しかも、全国に支社をもつ大企業だ。最近では外国にも規模を拡大している上昇企業でもあった。
誰もがそれ地位を羨望の眼差しで見ていた。
そんな城島は社会に求められる存在であることは間違いないだろう。大企業の一人娘なら尚更だ。
だったら、小春に出来ることは限られていた。
「あなたの本当の名前はなんですか?」
小春の唐突な質問で沢本の動きがピタリと止まった。
沢本の瞳の色は先程の狂喜の色は失い、悲しみの色と困惑の色が同時に伺えた。
「……」
「あなたの名前は何ですか?」
50話突破です。
ここまで読んでくれた皆様、ありがとうございます。
まだまだ拙い文章ではございますが、これからもよろしくお願いいたします。
物語は続きます。




