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悪魔の微笑み

 電灯が照らす住宅街の道にて。



 小春はごくりと固唾を飲んだ。

 寒い季節だというのに小春は若干冷や汗を流している。

 肩に掛けているスクールバックの持ち手を小春の持っている握力全開で握っていた。

 その理由は言わずとも一歩手前を巻き髪を揺らしながら歩く城島の姿。

「……」

 二人の間には会話など存在しない。コミ力の低い小春から到底自分から話しかけるというのは至難の技である。そうなったら城島から会話の振りを待つだけの時間がただただ過ぎるのだった。

 城島が話しかける=行動に出ると思って警戒をしている小春だが、一方の城島は鼻唄を歌い出すのではないかというほどご機嫌に見えるのは小春の気のせいだろうかと首をかしげるが一向に分からない。


 辺りはもう暗闇に包まれ人通りも少ない。

(詰んだ……漸さんは家だし。これは危機だ……)

 小春に武器というものは存在せず武器となるものはスクールバックぐらいだろうか。もし、襲われそうになったらバックを投げつけ一目散に逃げようとひっそりと決意する。

 ただただ心拍数と嫌な汗だけが小春を蝕んでいた。

「ねぇ、宮倉さん」

「な、なんですか」

 急に話しかけれ、動揺してからか声が裏返る。

「そんな身構えないで。私たち友達じゃない?」

(断じて違う! 友達のとの字もないですから)

「フフッ、可愛いなぁ。食べたくなっちゃう」

(危ない、危ない。危ない人がここにいる! もしもし、警察ですか……っとふざけてる場合じゃなかった。どうするどうする……)

「宮倉さんにお願いしたいことがあるんだ」

(……食べさせてとか言わないでよ! 頼むから。もう既に城島さんのキャラじゃないような気が……)

 電灯に照らされた城島は妖艶な笑みを浮かべる。酔っぱらいの中年が見たら襲いそうなくらい大人顔負けの色気が城島には備わってるようだ。

「お、お願いとは?」

 若干小春は腰が引けているが勇気をもって聞いてみた。

「ちょっとついてきてくれる?」

(あ、無理です。全力で拒否します。怖いから。完璧にまっすぐ死亡フラグ立ってます)

 首をかしげる城島は大変可愛らしいのだが小春の頭は既にプチパニック状態。

 あと少し歩けば、突き当たりを右に行くともう家は目の前なのだがそれを見張らってか素晴らしいタイミング、より恐怖を与える時に話しかけた城島は恐ろしい。

「ねぇ、ついてきてくれる? 忘れ物しちゃってさ。もうこんなに怖いから一人ではいけないの」

(理由、荒すぎですよ……完璧嘘じゃない? 私の人生はここまでかな……いや、諦めたらなんとかって言うのだから……逃げましょう。 逃げるが勝ちー)

 

「っ!」

 スクールバックを小春の持つ限りの力で城島に投げつけた。城島にバックが届く前に走り出す。

(一刻も早く家に帰らなければっ!)

 しかし、それは夢となって消え去ったのだった。理由は城島からガッチリと右手首を捕まれたからだ。女子とは思えない力でだ。

「やっぱ、人間って本能で分かるの? ねぇ、教えてよ? こ·は·るちゃん」

 ゆっくりゆくっり小春は振り向く。

「……」

 振り向いた先には美しく微笑んだ城島の顔がそこにはあったのだった。

 小春にはもはや悪魔の微笑みにしか見えなかった。


 夜闇が小春を包み込む……。

 




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