罪意識
公園にて。
もう辺りが暗いせいか公園には小春以外は人気はない。公園にあるいくつかの電灯のうち一本がチカチカと不安定に辺りを照らしていた。
すっかり寒くなった今日この頃。
小春は紺色のマフラーを巻いて白い息を吐いている。気温0℃を下回り、葉は地面に落ちていて、木は少し寂しそうだ。
以前より少し長くなった髪を突き刺さるような風が揺らす。
一度ため息を吐き、スクールバッグからスマホを取りだしイヤホンをつける。何度かスクロールし、目を閉じた。
小春の耳から聞こえる澄んだ女の人の声。それは、アニソンだが最近よく聞いている。
シリアスな歌詞が独特でダークなところが小春は気に入ったのだった。
僕は逃げるんだ
その目と想いから逃れたくて僕は必死になって動かしている
でも、どこかで願ってしまった
本当の僕を誰かが見てくれるんじゃないか
どこかで願ってしまった
希望の光が目の前に現れることを
心臓の鼓動が動き出す
僕は一人になることを願っていた
孤独を望む
月のように冷たく
鉄のような感情は
いっそのこと感情はいらない
感情なんて死んでしまえば
僕が望むことも何もないのに
小春にはまだこの歌詞の主人公がどんな感情から逃れているか分からない。 でも、どこか共感するのだ。
その事の思考を停止し、帰ろうと立ち上がる。
ふと、空を見上げると空が澄んでいるせいか満点の星まではいかなかったが多くの星がそれぞれの光を放っていた。
漸がどうして小春と同じ力の恩恵を受けているかもしれない人が敵になると言い切ったのか分からなかった。
少なくとも、昔話では同じ力同士が敵対したとは聞いてない。
小春はまだ漸のことがよく分からない。
いつか聞こうと心に決めたのだった。漸が何故敵だと言い切ったのかを。
その日の夢は酷かった。
今まで殺した三人が小春の足元の転がっていった。小春は小さな悲鳴を上げた。三人は苦悶の表情を浮かべながら死んでいた。
「ごめんなさいっ」
ーーじゃぁ、どうして殺したの?
死体に問いかけられる。
小春の瞳は揺れ、体は震えた。
ーーねぇ、答えてよ
「それは……」
それは何故だろうか?
命の危機に晒されたから?
大勢を殺したから?
動機が不純だから?
“騒がしいものを斬る”それが小春自身が望んでるから?
どれもしっくり来ないのだ。
世界を救う等という立派な目標を掲げているではなく、一時的な感情に動かされているだけなのではっと小春は自分自身に疑問を抱く。
「分からないっ! どうしてっ私は‼」
殺したのか。
そこで、悪夢から目覚める。
「大丈夫か? 大分うなされていたが……」
「えっ……うん、大丈夫です」
きちんと温まって寝てたのに手足は冷たく、背中は汗をかいていた。
夢だったことに安堵する。
「漸さん、私はどうして……」
殺したの……とは聞けなかった。
「なんだ……小春」
「いいえ、なんでないです。ちょっとだけ、精神的負荷がかかってりみたいですけど」
漸はそっと小春の頭に手を置き、乱暴に撫でた。
「髪がボサボサに……漸さん」
「ん?」
「ありがとうございます」
漸は珍しく穏やかな表情をした。
「珍しいですね。何時も勝ち誇った顔するのに」
「なっ……そんなに薄情じゃない」
面食らった顔をした漸に少し、満足しながら
「分かってますよ。たぶん」
「最後の言葉をいらないぞー」
笑って言葉を流した。
さっきの夢は罪意識からきたのは明らかであった。
銀行強盗のとき、罪意識から逃れてきたが、遂に罪に追い付かれてしまったのだ。博物館の時が狂っていたようにしか思えない。
理由は分かっている。
漸に以前、思いっきり子供のように泣きじゃくり、閉ざしていたものが外れたお蔭で、精神のコントロールが効かなくなったのだ。
一ヶ月と少し前の小春はコントロールしずぎだったのだ。今思えば、大変恐ろしいことだ。
悪夢は散々な恐怖を食らったが、理由が明らかになった。その点では、少し前に進めたのではないかと思ったのだった。
カーテンを開けると、久々の雨は降っていた。
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