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不安要素

 教室にて。


 窓の外は冬らしく澄んだ空だった。

 生徒会選挙も無事に終わった。結果は当然小林に決まり、見事な演説だと学校の教師たちは誉めてたが、小春は漸が生まれるきっかけになった昔話を思いだして、心ここにあらず状態だったので全くもって聞いてなかった。

「おめでとうございます、小林さん」

 社交辞令に近い言い方だったが、フレンドリーにおめでとうとは到底言えない。コミ力が低いのは当分の間回復する兆しは見えなさそうだ。

「ありがとう、宮倉」

 ニッコリと笑う小林は小春には少し眩しい。

 小林はそれから、クラスメートに祝福されて少し照れ臭そうだった。


 銀行強盗の件は少し注目を浴びていた。

 気絶して状態で発見、逮捕したらしくその後の取り調べで強盗犯は、何故気絶してたのかと聞くと口を閉ざすとニュースで報道されていた。その事に安心した記憶はまだ新しい。

 あれからまだ数日しか経ってないが、その事件の話題も収まりつつあった。

 


 世の中はクリスマスやら、年末で賑わっている。

 もう二学期も終了までそこまで日はない。何事もなく終わるのを望むばかりだ。

「あの……透くん」

 何やらもじもじした様子の学級委員こと唐木が小林に話しかけている。

「ん? どうした、唐木」

「えっとね……あの……」

 唐木は僅かに頬を染めながら、何か言いたそうだ。周りは女子の皆さんがその光景は睨み付けているが唐木は気に様子もない。

 男子は今にも冷やかす雰囲気だ。そんな中で動いたは城島だ。今日も綺麗にセットされている髪を揺らしながら、何故か小春に話しかける。

 それはもう、不機嫌そうな顔で。

「ちょっと、宮倉さん。手伝って欲しいんだけど」

 小春はもう嫌な予感しかない。

「な……何でしょうか」

(あの二人の恋路を邪魔しろとか言わないで……頼むから)

「あの二人の前で転んで、会話を中断させてきて」

(無理です……出来るわけない。無理無理)

「お断り……」

「させないわよ。学級委員はきっとイルミネーションを見ようとか言ってるから」

 なんとなく、それは小春も分かっている。イルミネーションは絶好のチャンスなのだ。恋する乙女なら意中の男子と綺麗な光に包まれ、見事に恋の成就させたいはずである。

「城島さんは……その……小林さんを誘わなかったのですか」

「は? 誘うに決まってんじゃない。誘おうとしたら泥棒猫に先越されたのよ」

(泥棒猫……)

「ハハハ……」

 と小春は乾いた笑いをした。

 隣にいる漸に目で助けを求めたが、目を逸らさされてしまった。漸の力の対象外なので致し方ない。

 唐木が遊びと称したデートに誘ったにしてもあの鈍感野郎の小林が唐木の好意に気づかないだろう。決定的な言葉を言わない限り。

 小林に好意を抱く女子が少し可哀想な気もする。

「……城島さんもあの……一緒に唐木さんと誘ったら……どうですか……?」

 小春は我ながら良い提案をしたと思っている。

「学級委員と……?」

「えっと……唐木さんも二人だと緊張すると思いますし……城島さんも小林さんと行けると思います……一石二鳥……みたいな……」

 城島は少し考え込む。

「そうね。泥棒猫に捕られるよりましかな。小林くんも断る可能性はないわね。小林くんのことだから友達を連れてきそうだけど」

 小春は心でガッツポーズ。はっきり言って自分のことで精一杯で面倒事は御免だ。

「宮倉さん、何時もボーッとしてたけどやるときはやるわね」

 思わず苦笑いを浮かべる。城島は少し角がなくなったのは気のせいだろうか……と思った小春。以前、あんな言葉をかけてきたとは思えない。もしかすると、小春の被害妄想だったかもしれないと思いもした。

「じゃぁ、言ってきて」

「はい?」

「聞こえなかったの? 言ってきて。私は先生に頼まれていることがあるの。友達に頼んでも良いけど一緒に付いてくるって言いそうだから。……で、お願いできる?」

(思ってたのと違う……取り巻き、あんたらもか。あんたらも、鈍感が好きなのか。何故……)

 小春、プチパニック。

「休み時間終わるまでに言っておいて。じゃぁ、もう行くから」

 そう言って、立ち去ろうとする城島に声をかけようとするが「まだなにかあるの」と言われ、渋々「なっ何もありません」っと承諾した。

 その一連を見ていた漸は笑いを隠そうとせず吹き出していた。

「こんなことしてる場合じゃーないのに」

 ポツリと小春は呟く。








「あの……」

 二人の視線が小春に向けられる。もちろん、小林と唐木である。

「どうした、宮倉」

「何?」

「唐木さん……イルミネーション……その」

(あぁ、なんでこんなことにぃぃ)

「城島さんも……一緒に行きたいそうです……はい」

「は? なんで私が」

 怪訝そうな表情を唐木は浮かべた。

 しかし、

「なんだ、唐木、城島と仲悪いのかと思ってたけど違ったのか。イルミネーション……そんな季節かぁ」

 唐木は慌てたように

「ちっ違う……私は……透くんを誘おうとして」

「そうだったのか。用事なければ行くよ」

 思わぬ方向で誘えたことに驚きを隠せない唐木はポカンとしている。 

「ほ……本当に」

「あぁ。宮倉も行くのか?」

「いか……」

 行かないと言う前にタイミングよく桜庭が教室に入って来るなり「席についてぇ」と言葉を遮った。

「小林さん……私は行かないから……」

「何人か連れてきた方がいいよな」

 と口にしながら考えていて、聞こえてない様子。

(えっ……嘘……何このご都合主義展開は……)



 そのあと、何度も行かないと言うチャンスを待った。

「待ちなさい……貴方責任とって。透くんならまだしもアイツとは一緒に行きたくない。城島さんを見ている間引き付けておいてね。罪滅ぼしと思って」

 と唐木から脅しを食らった。

 唐木を売ったのは間違いなく断る余地など存在しなかった。








 そのあとの報告で

「どうして貴方まで」

「不可抗力です」

 そして、舌打ちをもらってしまった。



 ーー私だって行きたくない




 漸がずっと笑っていたので小春は小言を言ったのは言うまでもない。


久々の恋愛要素ですね。

これからもよろしくお願いいたします!

誤字脱字ご報告お時間がありましたらお願いします。


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