再会
更新‼
いつも、ありがとうございます!
鍛冶屋にて。
「小娘、名前はなんという?」
「鈴音と申します」
「そうか。鈴音、あんたが前に言った通り、刀に意思を宿せる。それは新たな力と共に自分自身の人生を賭けることもある。今まで作った刀は三本。一本はこの形の悪い小刀。だが今は見えん」
「どうしてですか?」
孝文はニヤリと不定に笑うとそのうち分かると言った。
「さて、鈴音は世のためと言ったが具体的には? そう心配するな。どんな理由とはいえその覚悟した目が有る限り刀は作ってやるから」
鈴音は浴衣の袖を握り、
「人間の扱いされてない人を助けたいです。そして、こんな辛い世を変えたいです‼ 孝文さん、力を貸して欲しいです」
孝文は少し驚いたように眉を上げた。
「よかろう。鈴音、願いは叶えよう。しばし、時間を貰おう。半年後また来るがいい」
「あっありがとうございます!」
鈴音は勢いよく頭を下げる。孝文は手を行った行ったという風に振った。
「これで……きっと変わる」
鈴音は大きく深呼吸し家路を急いだ。
それから、数週間が経った……。
鈴音は、町が寝静まった頃に月夜を頼りに人知れず孝文から譲り受けた練習用の木刀を人知れず振っていた。
勿論、師などいないので見よう見まねであるが。しかし、確実に手のひらには努力の証の血豆が増えていた。
「絶対に……助けるんだ! 救うんだ……私が!」
時々、そう呟いた。
12の年を迎えた今日この頃。
空は青く澄みきっていた。町はいつものようの賑わっており、客寄せの声もよく聞こえていた。
鈴音は、母にお使いを頼まれ八百屋に来ていた。
あれから、鈴音は身分のことについて口にはしていない。心のなかにひっそりと考えていて、夜な夜な刀を振ることで押さえていたのだった。
「おじさん、じゃがいも五つお願いします」
健康よく焼けた肌は筋肉が付き逞しいく、声も張りがあった。
幼い頃から顔馴染みであった。
「おっ、鈴音はお使いか? 偉いなっていくつだっけ?」
「もう、12になりましたよ」
「そうだったけか! 前はこんなに小さかったのに」
そう言って、親指と人差し指を隙間がないくらい近づけた。
「そんなに小さくありません‼ じゃがいも、早くお願いします」
「おぉ、すまねぇな。怒らせたお詫びだ。人参一つサービスな」
「許しますよ。ありがとうございます。」
「おぉ、じゃぁな」
逞しい腕を降り、鈴音も振り返した。
思いがけないことで得したことに思わず口角が上がる。道の脇には菫の花が穏やかに咲いていていた。
「えっ……」
菫の花から目を逸らそうとした時、脇道の角からはみ出るわらじを履いたひとの足が見えていて、近づくといくつもの内出血。
見覚えのある光景に息を詰まらせ、顔をそっと覗き見る。
「あの時の……」
数年前の暴力を受けていた男の子だった。もう男の子ではなく青年に近くなっていた。
表情は苦しそうで、脂汗をかいていた。顔色も悪い。近づき、額を触るとかなり熱かった。
「酷い熱……」
高熱……このままでは命にか変わるだろう。只の熱と侮ってはいけないのだ。またあの時のように脇の下に腕をいれ立ち上がらせる。
ほとんど、鈴音が抱き抱えてるようなものだが日々に鍛練でそれほど重くはない。体重が人より軽いという理由もあるが。
「頑張って……」
向かった先は自宅だ。
向かってる途中は周りからジロジロ視線を感じたが、直接何かを言うこともなかった。
裏手から入り、居間に布団を掛けて寝かせた。
「ふぅ……」
一息尽きたいところだが、熱を下がらせるため薬草を飲ませなければならない。
「鈴音……その子は誰?」
「母上……」
ここは自宅であり母に会うのも当然だ。決して鉢合わせではないが数年前あんな話をしたので少し気まずい。
「鈴音?」
「これは……母上」
どうせバレることだと自分を納得させ、思い口を開いた。
「この人は、えた身分かひにん身分かどうかわからないけど、意味嫌われる人なの。」
母は目を見開き、驚いた表情をした。
「母上、一日だけこの人を置いて欲しいの。すごい熱で……だから」
「鈴音……」
「母上、ダメですか? 母上は前に同情するような発言は嘘……なの。この人達を庇う発言は偽りなの」
「そう訳じゃないわ」
「だったら、どうかお願いします」
正座のまま頭を下げた。
母は大きく息を吐き、
「わかったから。頭を上げてちょうだい。薬は飲ませた?」
「ありがとう、母上! 薬はまだなの」
「そう、今から持ってくるから、鈴音はその子の汗でも拭いて上げなさい。責任もって看病するのよ」
「はい、母上」
物分かりの良い母を持ったことに感謝しつつ、軽く濡らした布で額の汗を拭う。
「大丈夫だから……」
と、呼び掛けた。
もうすぐ、変えて見せるよ。
もうこんなの終わらせよう……
身分で人間の価値を決める酷い世界なんて終わらせないと駄目なんだ……
まだ、不定期更新になりそうです。
申し訳ありません……。




