噂から
和菓子屋前前にて。
あの話から翌日は体調を崩し、数日は家から出られなかった。またあのときの光景が頭を過り苦しくなる。
何もできなかった自分が悔しいそんな日々を過ごした。
やっと外に出てこれるようになり、鈴音は家の近くで近所の友達と話していたときにに聞こえた風の噂。
「お前さん、鍛冶屋を知らねぇか?」
「あぁ、知ってるぜ」
武士といった風貌の男二人。立ち話をしてる様だった。鈴音は耳を傾ける。強くなるにはやはり力がほしいと思った。力とは武力それが一般的で、言葉が武器になるには少し早い。
「しかし、曰く付きでな。何しろ刀に意志が宿るというんだ」
「お前さん、おかしくなったか? 人を切るための刀とはいえ物は物だ。刀に意志が宿るなんておかしな話だと思うのだが」
「そりゃぁ、ワシだってバカな話さ。最初から信じていなかったさ」
「過去形だな。信じる出来事があったというのかい?」
「あぁ、ワシの友人の話だがその鍛冶屋から刀を買った者は二人。今ではお偉いさんだそうだ。」
「それとこれがどうしたんだい」
「その二人はあまり有望の武士じゃなかったんだ。それなのに戦になると圧倒的な強さで敵を蹴散らすんだそうだ。」
「別に、命かけて戦ってるんだから土壇場の底力というし、元々戦で力発揮するタイプじゃないのか」
「いいや、それだけだったら良かったんだけどよ。目撃者は少ないが甲冑から出てる髪の色が変わったらしい」
「何言ってんだか」
「まぁまぁ聞いてくれ。髪だけじゃない。瞳の色も。一人が若葉を思わせる緑色に。一人は毒を連想させる紫に変わるらしい。力も比べ物にならないほど化け物に変貌らしいぞ」
「見間違いだ。そんなのある訳ない」
「信じるのも信じないのも人しだい。町外れで鍛冶屋をやってるぐらいだ。ワシとしちゃぁ信じたいな」
「そうだな。夢見ぐらいだったら信じてやってもいいが首は突っ込みたくないもんだ」
「同感だ」
そう言って笑いあう武士。
「ーー行こう」
一大決心をした鈴音は鍛冶屋に向かう。
道がさっぱりだったので道行く先の人に聞いていった。その度になんで、お嬢ちゃんみたい子が鍛冶屋何かに用があるんだいと聞かれてたが鈴音は新しく包丁を注文だというその場しのぎの嘘をついた。
その度に、鈴音の胸がズキっと云いか痛んだが気づかぬ振りをした。
「やっと……ついた」
古びた民家という感じだったが中から聞こえる金属の大きな音で鍛冶屋だと分かる。
ドキドキと緊張する。胸に手をあて引き戸を引く。
「……すみません」
自分の声が緊張して僅かに震えていたことに気づいた鈴音。
額に汗をかき熱心に仕事をしている姿が目に映る。
大きく息を吸い、
「すみません‼」
やっと金属の大きな音が止んだ。
しかし、きちんと取り合ってはくれんかったが無表情の瞳から感じた寂しそうな色はしっかりと鈴音は見えた。
「やっぱり……ダメかぁ」
武士の子でもなく、まともに刀を扱う訓練なんて受けたこともない。そんな子供に刀を売れというもおかしな話で、刀を買うお金も幼い鈴音にはない。
「はぁ」
大きなため息をつき、家に帰る。
母に心配そうな顔を向けられ絵がをつくる。最近作り笑顔が上手くなったことに鈴音は気づかない。周りは勿論気づいてない。
「強くなりたい」
最近、何度も口にした言葉。
言霊として返ってこないことに寂しく思えた。
過去編もう少しだけ続きます




