見えない
かなり短いです。
公園にて。
キィーキィーと音を出しながら交代交代に上下するシーソー。八歳くらいの女の子二人が遊んでいた。
唯一のベンチに腰ををろしていた小春と漸。
二人は何も言わず、誰かが遊んでいたのか一人てで揺れているブランコを眺める。
遊ぶ音だけが聞こえるが、小春と漸は沈黙していた。
「……」
小春は白いマフラーに顔を僅かに埋めた。目線は下を向き守られていた沈黙を破った。
「漸さん、ごめんなさい」
「小春が悪いわけじゃない」
そう、どこかに置き忘れていた感情が突如何のイタズラか小春のもとへ戻ってきたのだ。
小春は自分は弱い人間ということを再認識させられている気分と自分への不甲斐なさを感じた。
「社会に与える影響を怖がった訳ではないんです……覚悟はしてしました。でも……怖くなったんです……殺すのが……」
小春はぎゅっと自分の手を握りしめる。
「あの時は怖くなかったのに……どうして……私が分かりません」
「……」
「私は自分が分からない……」
「俺も自分が誰かは分からないよ」
その言葉に顔を上げる小春。
「長くなるが聞くか?」
「えっいいんですか?」
「あぁ」
これまで漸はこの世でどんな存在か聞くのは気が引ける……そんな風に感じた。だから、漸から教えてくれるとは思わなかったのだ。
漸は懐かしそうに話始める。




