日常
短いです。
教室にて。
教室にはいるとお馴染みの光景になりつつある。
「おはよう、宮倉。宮倉にしては遅かったな?」
「あっうん。忘れ物取りに行ってたら遅くなりまして……小林さん、おはようございます」
「そっか。宮倉疲れたか? 目元も少し晴れてるし」
「あっこれは……昨日読んでた本に感動したからですね……あまり気にしなくてもいいです」
とっさに思い付いて言ったが信じてくれたようなので安堵した。
「そんなに良かったんだな、その本」
「……はい」
小林は小春に、宮倉が良かったら今度貸してくれないか? と聞かれたのでその場しのぎで頷いてしまった。
女子の痛い視線を浴びながら席に座るとちょうど担任である櫻庭が入室した。
「12月に入って一週間過ぎました。二学期も残すところ二週間ですね」
博物館の事件は修学旅行の二日目で11月半ばだった。もうすぐ一ヶ月……あれから長く濃い時間を過ごした用に思えたのは致し方ない。
先程のことが浮かんだが無理やり思考から除き、櫻庭の言葉を聞く。
「生徒会選挙も明日に迫りましたね」
櫻庭の言葉と同時に次期生徒会長候補の小林に注目が集まった。
小林は思わず苦笑い。
「最近、物騒なことが多いので気を付けて下さね」
櫻庭が微笑むと大半の女子がうっとりした目になった。
イケメンスマイル、それに加え癒しさえ感じるのだが。
「以上ですね」
その言葉をきっかけに学級委員が号令をかける。
いつもの、日常がそこには広がっていた。
騒がしくなったクラスをしばらく傍観する小春。
小春からすれば皆キラキラと輝いて見える。目を眩しく細めたいくらいに。
「……」
小春の場所だけ違う雰囲気を纏っていた。今朝、何故あんなことになったのか?自分に問いかけるが一向に答えが出てない。冷静さを取り戻したかのように思えたが、内心、不安であった。
漸は空気を読んでか、この場にはいない。
「……」
きれいな道を通っているクラスメート。博物館の事件でクラスメートを亡くしているがそれを感じさせないのは何故だろう。
一人減ったことが嘘のよう。
皆は何をどう受け止めているのかーー分からない。
亡くなった友人のショックで休んでいた者もきちんと学校へ来ている。時間が止まってるのは小春だけに感じ、遠く別の世界にいるよな錯覚を覚えた。
酷く、眠い……。
朝から色々あって疲れてしまった。しかもこれから国語である。
耐えられるだろうかと一抹の不安を抱いたが、何とかだが耐えた。
今日はその繰り返しだ。
「宮倉、眠そうだな?」
「大丈夫です」
面倒見のいいお兄ちゃん……そんな印象を小春は抱いた。




