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心の内側

 屋根の家にて。


 銀行のシャッターは中途半端に開いていて、外から僅かに中のようすが見える。

 しかし、誰が誰かは分からない。足元が見えるだけだ。

 黒いスニーカーがウロウロしている。

 多くの人の通勤時間になるいい時間だ。

 

「うん、もう大丈夫」

 小春は勢いよく立ち上がる。

 屋根上から、というだけで飛び降り誰もこちら側を見ていないことを確認する。

 道端にあった握りこぶし位の大きめの石を広い思いっきり投げた。

 何処にかというと、銀行の3つ右に行った廃墟ビルの三階辺りの窓にだ。

 パリンっとガラスが砕けた音に、人々の注目を集めた。

「なっなんだ!」

「向こうの方から聞こえたわ」

 野次馬からそんな聞こえた。

 その時、小春は裏口の防犯カメラをぶっ壊し、中に潜入完了していた。

 そんなこととは露知らず、野次馬は何があったのか論争を始めていた。中継のカメラもそれを撮していた。

 警察も一時論争の収拾に手こずっていた。


「ふぅ、っとうかうか出来ない……」

 小春は、何やら探していた。すぐ見つかったようだ。探していたいたのはブレーカーのよう。

 小春はためらいなく、ブレーカーを下げ予備電力の方も落とした。ビゥーという独特な音を出した。

 蛍光灯は次々に消え、薄暗くなる。

「本番……」

 小春は、怖がる素振りもなく襲われているはずのフロントへ向かう。すると、ガラスとガラスでの反射で覗き込まなくても中の様子が分かった。

 敵は、一人だ。断定出来ないのが歯がゆいが。

「……」

 ニット帽に目、口、鼻部分を切っているこれぞ強盗という格好である。どうやら、電気が消えたことで何やら言っているのだろうがこちらからは話してる内容は分からない。

 小春は足元に置いてある、赤い物体ーー消火器をハンカチ越しに持ち上げる。

 消火器のロックを外し、投げ入れガラスを破りパリンという音と同時に強盗犯の足元に転がる。

「……?」

 強盗犯がそれが何か理解する前にピンクの煙がフロントを包み込む。

「なっ!?」

 強盗犯は、それに一本後退り……その時に首根っこを捕まれたと思うと背中に衝撃は走った。

「ぐっほっ」

 強盗犯が背中の衝撃がお腹に伝わる。何だと思い顔を上げると当然小春なわけで……。

 強盗犯は気づいた。ニット帽から出ているピンクという異様な髪の色と瞳に。「っ……まさか」

 小春は何も反応しない。いや、反応しないことが肯定しているという意味が強盗犯は分かった。

 強盗犯が恐怖の色に染まる。

 (……殺される!)

 強盗犯も救世主もとい少女侍の存在を信じていた一人である。

 だからこそ、この少女が怖くてしょうがない様子の強盗犯……。

 小春は刀を振ろうとする動きが見えた強盗犯は腹がいたくて動かないことを理解し、反射的に目を閉じる。

 しかし、待てども待てども痛みは来ない。

 不信死だから痛みはないのかもしれないということも考えたがもしやと思いそっと目を開ける。

「……」

 この男の率直な気持ちは拍子抜けだった。

 (ガキはガキ……人を殺せるわけじゃないか……潜入完了に捕らわれすぎた)

 小春の持っていた刀は男の首筋の寸前で止めていた。

 戸惑った目で強盗犯を見る。

 強盗犯は冷静さを取り戻すと共に、目から恐怖の色は薄れていった。



 自分の頬に伝う涙に動揺を隠せない小春は何故斬れないのかとそれだけが脳裏を回っている。

 (どうして……? 博物館の時はあんなに簡単に殺せたのに……)

 博物館の事件の時、あっさり人を殺したと思っても罪悪感は僅かにしか感じない自分に嫌悪感を抱いた。

 人の端くれにも置けないそんな自分が腹立たしいそんな風に思っていたことを思い出す。

 どうして……今?

 首を斬ろうとした小春だが勝手に腕が急停止した。

 僅かに刀を握っている右腕が震えている。

 何に怯えているのか……? 涙が廊下に落ちている。

 視界が悪い……必死に涙を止めようと気持ちを落ち着かせるが気持ちとは裏腹にドンドン溢れる涙。

 首を斬っても、小春の固有スキルで血はで無い。外傷もなく殺せるこのスキル。

 仮にこのスキルの名称を《無血》としておこう。

 だからこの《無血》で罪の意識から逃れてたのかもしれない。博物館の事件からそう時間は経ってない。

 だから、今回もあっさり人を殺し銀行強盗を解決するつもりであり、これから起こることも、《無血》で罪の意識から逃れるつもりであった。

 ドクドクっと不快に心拍が上がっている。

 小春は今自分がどんな感情なのか理解できていない。

「……る……はる……小春!」

 すっかり意識が他のところにあった小春は漸の声に戻された。

 しかし、まだ視界は悪い。

「大丈夫か……無理なら」

 そんな風に小春に気遣う漸の声が頭に響く。

「……っ」

 すっかり、正気に戻った強盗犯が何処に潜ませていたのかサバイバルナイフを小春に振るってきた。

 気づくにに遅れた小春だったが身体強化されているお陰で避けることができたが……それに怯むことなく切りかかる強盗犯。

 反撃はいつでも出来るのに、体がそれを拒むのだ。

「小春、斬るのに抵抗が出てきたなら、別の方法でいい! しっかりしろ‼」

 素直に従った。今、混乱しているのは小春自身でまともな判断が出来ないと思った。

 動体視力も良くなっているので意図も容易くサバイバルナイフを持っている右手を男の背に回した。

「いっ!」

 強盗犯は痛そうに声を漏らした。

「小春俺に続け言え……これは小春が言ったわけじゃない。あくまで俺からだ。いいか?」

 小春はもうどうして良いか分からない。

 コクりと頷く。

「今まであったこと全て忘れろ。もし、誰かに言ったら次は容赦なく殺す。」

 一字一句同じように伝えた。

 男は頷かない……。

「小春力をその腕に少しでいい、力を入れろ」

「いっ!」

 強盗犯には微かに骨がきしむような音が聞こえたが小春は気づいてない。

 小春の力は成人男性の何倍もある。

 あと少し力を入れるとどうなるかは想像にお任せする。

「苦痛か? 早く逃れたかったら忘れろ……忘れさせてもいいが」

 強盗犯はもう普通の少女ではないことに理解し、何度も頷く。

 やっと解放された腕はまだ痛い。

「殺すからな」

 

 小春が去ったあと、強盗犯はあまりの恐怖に意識をシャットアウトした。


「ごめんなさい」

 急ぎ、学校に向かっていた。

「その事は後だ。」

 そう言われ、素直に従った。


 現在の時間 8時10分

 

 遅刻せず学校に登校できるが空気は重い。


 

 


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