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いく先に

 宮倉家にて。


 扉が開かれるガチャリという音に本日二度目のガチャンという皿を落とした音が返ってきた。

 慌てて玄関に来たおばさんーーフライパンを持っていていたがその正体が小春だと気づくと、フライパンを後ろに隠し恥ずかしそうに曖昧な笑顔を浮かべた。

「ごめんなさい、おばさん。驚かせてしまいました」

「どうしたの?」

「途中で、忘れ物をしてたことに気づいて戻ってきました」

「あら、そうだったの」

「忘れ物をとってきます」

 少し小走りで自室に向かうため階段をかけ上る。


「えっと……あった」

 手に持っている物をスクールバックに入れる。

「それだけか?」

「まぁ、なんというか応急措置みたいなものです。捕まりたくないですから」

「小春はやはり策士」

「違いますよ。そんなに計算高い人じゃないです。なりたいけど無理です。命かかってますから」

 そう言って小春は顔を曇らせる。

 その理由は、漸も分かる。不安感に小春は今にも押し潰されそうだろう。社会に悪影響を与えるのが分かっている。すべての責任を背負うのだ今から……。

 その事から頭を切り替えるため頭を横に振り、

「じゃぁ、行きましょうか」

 その声が自室に力強く響いた。


 裏路地にて。


 小春は、灰色のニットキャップを被り、それまた灰色の少しブカッとしたパーカーを着ていた。

 ニットキャップを被ったのは、髪の毛一本を落とさないため。

 前回は運が良かったのだろうか?

 セーラー服はスカートの部分だけ見え、どこの学校かは分からない。その事に満足している様子の小春。

「では、お願いします」

 すると、視界からは消え、その代わりに右手に刃渡り一㍍ある日本刀が握られていた。

 ふと、感じなくなる体重。身体能力が上がったんであろう。前回の博物館の事件で確認済みだ。

 髪の色もピンクに染まり、瞳の色も同様に染まっていた。

「上から行きます」

 そう言って、力を足に込める。五メートルあるであろう昔ながらの子店の屋根に跳んだ……というより飛んだという表現が合っていた。

「結構……高い」

「急がないと学校に遅れて、疑われる」

 頭の中で響く漸の声。その声にハッと気づかされ

「そうでした……すっかり忘れてました」

 いつも遅刻せずきちんと登校しているのに、今日遅刻したら間違いないなく疑われのだ。

「スピード勝負……今は7時48分……8時10分目標で行きます」

 距離は約2キロ。この力があれば数分もかからないはずである。

 高い建物は見当たらない。

 どちらかと言えばかなり、田舎よりである。電柱より高い建物はない。絶好の場所だ。防犯カメラは殆ど下を向いているはずである。例外のカメラが存在するか分からないが気にする余裕もない。

 小春は駆け出す。家と家を器用に飛びながら、目にも止まらぬ速さで。

 チーターよりも早い……人が見たらあれっ今、通らなかった? えっ別に……、レベルである。

 そして、あっという間に銀行まで着いた。しかし遠目である。由緒正しきお茶の老店の屋根に身を低くしていた。遠目でもパトーカーが何台か止まっている。スケッチブックを掲げているであろう人々も点々と見えた。

「迷ってる時間は無い……」

「ですよね……」

 深く溜め息をつき

「二分時間下さい……作戦会議」


 現在の時間 7時51分 

いつもありがとうございます。

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