仲間と絆
二桁突入ー‼です!
これからもよろしくお願いします。
中央ホールにて。
「帰ってこないわね」
「そうですねぇ」
健治が館長を探しに行き、早くも40分が経った。健治のことだから仲間を心配させるような行動は感情に支配されるようなことが無ければ殆ど皆無だ。なのに未だ時間だけが過ぎるだけで帰ってこない健治。心配になり始めた二人だった。
「武司さん、俺見てきます」
「でも、最悪なケースを考えたら危険よ。得策じゃないわ」
「分かってますよ、武司さん。健治さんのなら多分……いえ絶対大丈夫です。」
「聡志君……」
「俺は探しにいってきます」
「なら、私も行くわ」
聡志は手で武司を制止させる素振りを見せた。
「健治さんをここで待っててください。見張りも必要ですし、入れ違いになっても困りますし。スマホにかけてもでないので落としてるかもですし」
「……分かったわ。聡志君は健治に隠れてたけど貴方もいい男ね!」
聡志の頬がひきつり
「俺に対するその認識だけは遠慮したいです」
「あらまぁ」
「じゃ行ってくるんで。約束の時間までには戻ります」
「はーい、いってらっしゃい!」
人質たちの表情は疲れきっていていた。しかし、恐怖は薄れておらず少し反抗した者三人……は既に亡骸になったのだ。もう彼らに反抗するような精神を持ち合わせてる人質はいない。
健治が訪れたであろう一階に足を踏み入れる。
「うわっ」
鼻を思わず押さえるほどの激臭が一階には充満していた。激臭の原因は肉が腐った臭いーーつまり死体からだ。暗めでもわかるあちこちに血が飛び散り真っ赤な花を咲かせているよう。
激臭に我慢しながら歩き続けると足元に当たる違和感。足元を見るとあっけなく見つかった人物。
「健治さん!」
しゃがみこみ頭を抱き抱え呼び掛ける。
「……健治さん?」
健治からの返事は帰ってこなかった。抱える手から伝える冷たさ。それは、既に死んでいる健治からだ。“死”その言葉が頭をよぎる。
「あっ……ぁあああああ」
(健治さんが死んだ……そんなわけない)
この世に生を受けて21年……一番“死”というものを身近で感じた聡志。聡志が混乱しているなか
「みんなそう思ってるはずだよ」
耳に届く、少女の声。振り替えると小柄よりの背と特徴的なピンクの髪と少したれ目だけど大きめの目。元はセーラー服なのかあちこち服が破れ傷を負っているようだ。その正体は小春だが、聡志は知るよしもない。
聡志は、小春が持っていた刃渡り1㍍の刀に気づく。
「それはなんだ……?」
小春は薄く微笑み首をかしげるだけでなにも答えない。その代わり別の返事が返ってきた。
「貴方も殺したでしょ? きっと家族や友人、恋人がいたことでしょう。なのに、自分がその立場になって悲しむのは少しおかしいのでは?」
淡々と話す小春に、戸惑いを隠せない聡志。
「こっこの人は俺にとっれ恩人なんだ!」
と反論したが
「だから?」
と返された。聡志はあとに続く言葉が見つからず沈黙する。14才そこらの子供に成人した大人が論破されるのは何とも情けない。
「この一階でどれくらい死んだでしょうね。まぁそこはどうでのいいんですけどね。何のためにこんなことまでしたか私は知りませんけど……使い古された言葉でいうなら“憎しみは憎しみしか生まない”ですか?」
「それでも、館長はそれだけのことをしたんだ。お前には分からない!」
ばかでかい声をだせれた小春は顔をしかめながら
「あの館長がですか……あの人なにしたんだ? ここまで人を巻き込むまでした館長って馬鹿なのあの人……コミ力高そうだったけどな……」
「あの館長ははくぶ……」
「いい! いいです! 人の不幸まで聴ける器量は持ち合わせてないんで」
「は?」
聡志はすっとんきょんな声をあげた。
「コミ力低いの分かってますよ……うん」
何やら一人で落ち込んでいる小春を見て若干呆れている聡志。不意に忘れかけていた刀の矛先を聡志へ向けた。
「何するつもりだ……」
「えっと……救世主なんです……(仮)」
騒がしい者を斬るというとっさの建前が救世主とは小春自身若干恥ずかしく思ったのだった。それを無理やり思考から外しゆっくりと聡志に近づいた。聡志は健治を持ち上げながら後ろへ後退しようした。
中学生に恐怖を覚える21歳……聡志。拳銃があったことを思いだし中学生の頭にぶちこもうとした瞬間、小春は刀を振り落とした。
「えっ」
視界が暗くなり、一瞬心臓に痛みがおこり、聡志は健治の隣に倒れたのだった。
「二人目……かぁ。」
そんな虚しそうな声が一階に響いた。
聡志 死亡
もうそろそろこの下りは終わりそうです。
話はまだ続きます。




