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四季恋(仮題)  作者: 腐敗犬
2/3

初恋は淡雪の様にー冬ー

えー、秋と続いて冬です。







冬と言えば雪と風邪、はい偏見ですね。

 空を見上げればどんよりと曇り空。辺りを見渡せば一面雪の銀世界。凍える寒さと寂しさに身を震わせ、私はただグスグスと泣いていた。


「おい、お前。こんなところで何やってるんだ?」


 今まで私の泣き声しかしなかった状態から不意に声を掛けられ、涙で崩れた顔を声のする方に向ける。


「お前……泣いてるのか?此処らじゃ見ない顔だけど、迷子か?」


 そこに居たのは、私とたいして年も変わらない男の子。口調こそ、ぶっきらぼうだったけど、心配そうに私を見ていた


 私はグスグスと鼻を鳴らし、黙ってコクリと頷くと彼は私に手を差し伸べ、


「俺ん家この近くだからさ、とりあえず家に来るか?ウチの母ちゃんに聞けば何か分かるかもしれねぇしさ。」


 差し伸べられた手を掴むと、私は黙ったままコクリと頷き、彼の手に引かれる様に付いていった。



ーーー


 彼のお母さんに道を教えてもらい、家へと帰る道中


「また迷子になったら大変だから、送っててやるよ」

「こ、今度は迷子にならないもん。」


 ニカッと人懐っこい笑みを浮かべ道案内する彼。その後を追うように私は頬を膨らませながら付いていく。


「鼻水垂らしてメソメソ泣いてた癖に……。」


「なッ、泣いて無いもん。鼻水だって出してないもん。」

 からかう彼の言葉に意味も無くムキになりつつ、同時にはぐれない様にしっかりと繋がれた手の温もりがジンワリと全身に広がる様な錯覚を感じていた。


ーーー


「じゃ、また明日な。」


「ぇ?」


「だからさ、また明日遊ぼうぜ。」


 一瞬、彼の言葉の意味が理解出来なず、私はキョトンとした。


 彼はそんな私に満面の笑みでニカッと笑い。そのまま、もと来た道を引き返していった。


 私は私で、彼の笑顔がいつまでも頭から離れず、雪が降り続く寒さの中で、彼の背中を見続けていた。


ーーー


「ケホケホ…ぅー…」


 案の定と言うべきか、長々と寒空の下にいたのが原因で、私は風邪をひき寝込む事に。


元々体が弱く、体力も同い年の子達に比べたら無い方で、クラスで虐められる事とかは無いけど腫れ物に触れる様な扱いだった。

 普通に接してくれたのは、家族や親戚くらいで。


 だから、こうして熱にうなされながらも彼の顔が頭から離れないのは、きっと彼みたいなタイプが私にとって初めて見るものだったから、そう心で思い込み。


やがて、ゆっくりと意識が離していく


ーーー


「ん…」


「あ、起きた」


 再び意識を取り戻し、目を開けると

すぐ近くに彼の顔があった。一瞬幻覚でも見てるのかと思い、自分の目を擦ってもう一度見ると

やはりそこには彼の顔が。


 あまりの事に思考がおいつけず、魚の様に口をパクパクとさせるだけの私。


 だけど、徐々に私にとって嫌な感じの、それでいて最早慣れてしまった空気を察してしまった。


「あ、あのさ。その……ごめんな。俺、お前が体弱いとか知らなくて」


 嫌な空気。無遠慮にズケズケものを言っていた彼が今は腫れ物に触れる様に私に接してくる。


 私の頭から離れなかった笑顔の彼が、今は私に気を遣って恐る恐ると言った感じになっていた。



 こんなの、見たくは無かった。けど仕方ないよね、体が弱くて気を遣わせた私が悪いのだから。


「大丈夫、だよ。ありが……グスッ……と。」

 いつもするみたいに、心に仮面をつけようとした。けど、最後までかぶり続ける事が出来なかった。


 泣いたら余計に気を遣われるだけなのに、ポロポロと涙がこぼれ落ちていく。

 他の誰かに気を遣われるのには慣れているけど、彼にだけはそうして欲しかった。

 理由なんて分からない。


「な、泣くなよな。……はぁ、面倒くせぇなぁ……。」


 泣いてる私を見てうろたえる彼。そして小さくポツリと呟いた彼の言葉。聞こえていたけど、聞こえなかったふりをする私。涙は急には止められなかったけど。


「まだ、ちょっと疲れてるから、今日はごめんなさい」


 そう精一杯言葉を紡いでから、私は顔の位置まで布団をかぶった。

 彼が立ち上がり、部屋から出ていく音を耳で聞きながら、グスグスと布団の中で泣き続けた。



 面倒臭がられた、もしかしたら嫌われたのかもしれない、と。どうしようも無い不安に襲われながら、再び意識が離していく。



ーーー


 次に目を覚ます頃には、夜を通り越して早朝と呼べる時間だった。


 気だるさはまだ残っていたけど、風邪と言うより寝過ぎた事が原因なんだと思う。



「はぁ…」


 上体だけを起こすと思わず溜め息がこぼれた。何で私はこうも弱いんだろ、と朝からモヤモヤとした気分になりながら、ゆっくりとベッドから降り、顔を洗おうと部屋のドアを開けると、


「よ、よぉ…」


「……ぇ?」


 ドアを開けてすぐ飛び込んだのは彼の姿で、突然の事で私は何が何やら分からなくなり、何度も目をこすり


「な、何で…」


「いちゃ、悪いかよ」


 思わず呟いた言葉に彼は不機嫌に返し、続けて気まずそうに視線をさ迷わせた。


「ちょっと……ちょっとだけだからな。その、心配だったから、お前の様子見に……」


 ハッキリしない口ごもった様子の彼に、私はどう返せば分からず、だけど何でか目からポロポロと涙がこぼれ



「わ、私の事嫌いになったんじゃ……」


「はぁ?俺がいつ嫌ったんだよ、お前の事。」


「で、でも昨日は…」

 言葉を紡ぐ度にポロポロ涙をこぼす私に彼は何故かイライラとし始め、自分の頭をガリガリとかきむしりながら


「ぁーもう、泣くなよ。そうやって泣かれるのが面倒なんだよ」

「泣くくらいなら笑うか怒れよ。お前可愛いんだから、その方が絶対良いって」


 捲し立てる様に言った彼の言葉に、一瞬、ほんの一瞬時が止まった様な錯覚を覚えた。

 彼は彼で、再び視線をさ迷わせ始め。そして、私の手を掴むと


「と、とにかく、そんなところで突っ立ってるとまた風邪ひくぞ」

 照れた様子で私を引っ張っていった。気付けば私は泣き止み、彼に引っ張られるままについていく。

 心にジンワリ広がる何かを感じながら



ーーー



それが数年前の事

あの時は、お互いまだ子供で、今もまだ私達は子供だけど……。


「小さな頃から好きでした。私と付き合ってくれませんか」


 あれから成長して、体も少しは丈夫になった私は、同じく成長した彼に想いを告白した。



 そして、私の一世一代の告白に対する彼の答えに、私はポロリと一滴の涙をこぼしたのだった。

病弱な少女と生意気盛りの少年。

なかなかに素敵です。


後、秋に比べて微妙に長い。





次は春。

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