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七羽目☆危機一髪!!

「うさ☆うさコンビネーション!!」の第七話です!

ウサギとニワトリの特性を活かしたアニマル・バトル!

……と考えていたのですが、あまりそういうふうにはならなかったような気がします(汗)

それでは、ご覧ください。

七羽目☆危機一髪‼


「ひ、ひゃぁぁぁぁ‼」

 ぎりぎりでかわして直撃は回避したものの、美兎は爆弾羽の爆発で吹き飛ばされてしまった。ぐるぐると宙を舞い、このままでは神社の桜の木に激突してしまう。

『あっはっはっはっ。人間は馬鹿な生き物だ。敵を助けて自分がひどい目にあうとはな。はっはっはっ』

 邪神にとりつかれているオコジョが腹をかかえて大笑いした。しかし、その笑いは次の瞬間にとまることになる。

『邪神め! 馬鹿なのは、お前だ!』

 白い物体が疾風のように飛んできたかと思うと、風船のようにぷくぅと体をふくらませ、木にたたきつけられる直前だった美兎のクッションとなったのである。

「シロ、ナイス!」

「何とかぎりぎりで間に合ったね~」

 シロに助けられた美兎が、声がした方角を見ると、優兎と真一が走ってこっちにやって来るではないか。真一の頭にはクロもいた。

「ユウちゃん! シンちゃん!」

「まったく、困った妹だよ。たった一人で危険に飛び込むなんて。美兎、ケガは無いか?」

「大丈夫! それに一人じゃないよ? うさずきんも一緒だから」

『兄と妹の感動シーンは後にして、さっさと獣人の呪いを解いちまおうぜ!』

 風船状態から元の体に戻ったシロがそう言うと、クロも『その通りだ』とうなずいた。

『そろそろ日付が変わる時間だ。邪神は日付が変わったら、アッキーを食べると宣言していたはず。急がないと、君たちの大事な飼育小屋の動物が邪神の夜食にされてしまうぞ』

「そ、そうだった! 真一、合体するぞ! 呪文はちゃんと覚えたか?」

 優兎が勾玉を空にかざしながら真一に聞いた。前回の合体では、真一は呪文を言いまちがえてしまい、ろくに戦うこともできなかったのである。

「心配しないで! クロがちゃーんと呪文の言葉をメモ用紙に書いてくれたから、これを見ながら呪文を唱えるよ!」

「そ、そうか……」

 優兎は真一が左手ににぎっているメモをちらりとのぞき見ると、とても達筆な字で合体の呪文が書かれていた。ウサギが人間の字を書くことができるのもビックリだが、正義のヒーローがメモを読みながら合体の呪文を唱えるだなんて聞いたことがない。

「よし! シロ、いくぞ!」

『おう!』

 最初合体した時は手間取った優兎だが、合体の呪文を確実かつ速攻で言えるように、あれから何十回も練習していたので、今回はすんなりと呪文を唱えることができた。

「汝は天に愛されし獣

 我は天を求むる人

 ここに契りを結びて我ら合一す

 平安楽土へと共に行かん!」

 勾玉から発した緑の光が優兎とシロをつつみ、その光からシロと合体した優兎が飛び出した時には、白い忍び装束のかっこうになっていた。

『真一。私たちも合体だ!』

「うん! ええと、メモ、メモ、メモ……」

 クロにせかされて、真一は手元のメモに視線を落とした。普通なら夜の神社は真っ暗だが、邪神が紫の火の玉で神社全域を明るくしているため、真一はメモをすらすら読み上げることができた。

 ただし、ほとんど、ひらがなで書かれている部分だけ。

「ええと、ええと、ええと~。……ナントカはホニャララにピーされしイヌっぽい何か! ホンタラカンタラはピーをグむる人。ここにナンヤラりをケツびてホンタカンタラ、ウッキウッキーす! ヘーアンキョーへとナキにホーホケキョ!」

『意味が分からんわ!』

「えー。だって、僕、漢字とか苦手だし~」

『……そうか。小学四年生に難しい漢字をふりがな無しで読ませようとした私が悪かった。だが、せめて簡単な字は読んでくれよ! 「天」とか「行く」とかは学校で習っているだろ?』

「ああ。それは習ってた。読めない字ばかりだったから、全部適当に読んじゃった。ごめんね」

『また合体失敗だ……』

 真一の青色の勾玉がピカリと光り、真一とクロをつつんだ。次の瞬間、豪快に呪文をまちがえたせいで夕方に合体失敗した時よりもさらに巨大な大玉転がしの化け物になった真一が光から飛び出て来たのである。

「うわ⁉ めちゃくちゃでかい! 前回の合体の時よりも三倍は大きくなっているぞ!」

「何よ、あれ⁉ どういうことなの? ていうか、こっちにゴロゴロ転がって来るんですけれどーーー⁉」

「ごめーん! ユウ兄ちゃん、ミーちゃん! にーげーてー!」

 優兎と美兎が逃げるひまも無く、超巨大な大玉(真一)は光から飛び出した勢いのまま、ズドドドド! という地響きを立てて転がってきて、優兎と美兎を下じきにしてしまったのである。

「ぐぎぎ! お、重いぃぃ! シロ、どうすればいいんだ?」

 ――どうするも何も、こんな状態では獣人に一方的にやられちまう! 何とかして抜け出すんだ!

「だ・か・ら、どうやって抜け出すんだよぉ~!」

 ――そんなの、オイラが知るか~!

 優兎と美兎が真一の下じきになっているのを見て、オコジョは再びゲラゲラと大笑いした。

『味方の下じきになるなんて、お前たちはここにコントでもしに来たのか? マヌケすぎて、つきあっていられないぞ。獣人! もう一度、爆弾羽を食らわせてやれ!』

『…………こ、コケ…………』

『どうした、獣人。お前には十分にパワーをあたえてやったはずだぞ?』

 ニワトリの獣人は、なぜか優兎たちを攻撃することをためらっていた。ついさっきまではすごく凶暴だったというのに、どうしたのだろうか。

『……ど、どうして、さっきは自分を犠牲にしてまで、アタイを助けたんだコケ?』

 獣人は、美兎がなぜ敵である自分を爆弾羽から助けたのか理由が分からず、戸惑っていたのである。獣人にそう聞かれて、下じきにされたまま苦しんでいる美兎は、息をハアハア言わせながら答えた。

「助けるに決まっているじゃない! あなたは、私たちの大切な先生であり、飼育小屋で世話をしているニワトリでもあるのよ! できれば無傷で助けてあげたい、元に戻してあげたい……そう思うに決まっているでしょ!」

『で、でも、アタイは……私は……生徒の音痴も治せずに、逆に自分が音痴になってしまうダメな音楽教師なんだよ? コケコッコッコーとも鳴けずにウグイスみたいな鳴き声になっちゃうおかしなニワトリだコケ……。私は……アタイは……ダメダメな人間で、ダメダメなニワトリで……そんなに大切に思ってもらえる価値なんて無いコケ……』

 獣人がしょんぼりとそう言うと、今度は優兎が「そんなことない!」と声を張り上げて叫んだ。

「僕は知っているよ! 今日の放課後、ピヨ先生が音痴を治そうと必死に歌の練習をしていたこと! アネゴだって、僕たちが毎朝学校に登校すると、元気な鳴き声であいさつをしてくれた! たしかに他のニワトリとは鳴き声がちがうけれど、アネゴの鳴き声が聞けなかった日はちょっと寂しくなるぐらいだったんだ! 僕たち生徒のためにがんばってくれている先生のこと、みんな大好きなんだよ! いつも元気いっぱいなアネゴのこと、みんな可愛いと思っているんだよ!」

 これは優兎が遥に以前教わったことだが、日本人はずっと大昔からニワトリを家庭で飼育してきて、ニワトリの名前の由来も「庭で飼う鳥」なのだという。そして、ニワトリは人間たちに貴重な食糧である卵を産んでくれるだけでなく、時計が無かった時代から朝一番に鳴くことで人間たちに朝が来たことを知らせてくれる、大切な役割を持った鳥だったのである。遥が言うには、「私たち人間とニワトリさんは、歴史書にいろんな記録が書かれるようになる前からのふるーい友だちなんだよ。物心がつく前から仲良しだった私とユウくんに似ているね!」ということなのである。

 アネゴも、きっと菜花小学校の生徒たちに、

『新しい朝が来たわよ! 今日も一日がんばって勉強するのよ!』

 という気持ちをこめて鳴いてくれていたのだと優兎は思うのだ。

「せっかく努力しているのに……がんばっているのに……自分のことを価値が無いなんて言ったら、ダメだよ!」

『こ……コケぇぇ……』

 ニワトリの着ぐるみのフードに隠れていた陽世子の顔がちらりとのぞき、彼女の頬を大粒の涙がつたっているのが見えた。そして、おそらくこれがアネゴの顔なのだろう、フードに描かれているニワトリの両目からもぼたぼたと涙がこぼれている。

「う、ううう……。ピヨ先生とアネゴがそんなに悩んでいたなんて、僕、知らなかったよ。ごめんね。本当にごめん。僕のせいで……。ぐすっ、ぐすっ」

 陽世子が音痴になる原因をつくり、アネゴの鳴き声を変だと言ってしまった真一が、獣人の涙を見て、ようやく反省した。そして、真一もしゃくりあげて泣き出したのだが……。

「ちょっと! シンちゃん! 頼むから泣き止んでよ! あんたの涙が洪水のように私の頭に落ちてくるの!」

 巨大化した分、真一の涙は一粒がバケツ一杯分ぐらい。それがダバダバと美兎の頭に落っこちてくるのである。下じきにされたうえ、真一の涙でおぼれ死にそうなのだ。怒鳴りたくもなるだろう。

(人間とニワトリが、理性を取り戻しつつある。このままでは合体の呪いが解けてしまうぞ)

 予想外の事態にあせったのは、オコジョにとりついている邪神だった。まさか人間がここまで動物の心を動かすとは夢にも思わなかったのである。

『自然を破壊し、動物たちの住む場所をうばうことしか能の無い人間がなぜ……?』

『人間を見くびりすぎたようだな。邪神よ』

『な……! この声は、底筒男命⁉』

 オコジョがビクリと体を震わせ、声が聞こえた方角をにらんだ。そこには、遥、そして、遥のペットであるにゅーに乗り移っているソコツツ様がいた。ウサギに変身した遥は、パニック状態の桜にほとんど強引に頼みこんで自転車の前カゴにソコツツ様と一緒に乗せてもらい、ここまで運んでもらったのである。そして、変身を解いて人間の姿に戻った後、桜に「危険だからもう帰っていいよ」と言い残して、神社の本殿まで走って来たのだ。

『邪神よ。たしかに人間たちは、おろかな失敗をくりかえす。だが、失敗をするたびに反省をする。そして、多くのことを学習して成長するのだ。自然を破壊してきたことを反省し、世界中の国々が環境を守るためにどうしたらいいのか話し合いをしている。絶滅しそうな動物たちが死に絶えていくのを何とかして防ぎ、彼らの居場所をつくろうという努力もしているのだ。神である私は信じている。いつかきっと、人間たちが自然を心から愛し、動物たちと失った真の絆を取り戻す日が来ると!』

 ソコツツ様に続き、遥も彼女にしては珍しい強い語気で邪神にこう言った。

「私は、生徒のためにがんばっているピヨ先生と、私たちにいつも元気をくれているアネゴちゃんの心を踏みにじり、利用した邪神さんのことが許せない! これ以上のイタズラはやめて!」

『う、うるさい! 人間ごときが生意気な口をきくな! ええい、獣人! いつまでめそめそと泣いているのだ! 戦う気が無いのならば、私がコントロールしてやる!』

 ついに激怒した邪神が獣人の頭に飛び乗った。すると、獣人はもがき苦しみだし、次の瞬間には『コケー!』と神社の木々が振動するほどの絶叫をしたのである。

『いかん! 邪神のやつ、獣人をあやつって神社を破壊するつもりだ! 遥よ、そなたも合体するのだ!』

「でも、ソコツツ様。私と合体してくれるウサギさんがいません」

『私が乗り移っている、この子ウサギがおるではないか』

「ええ⁉ そ、それって、私とにゅーちゃんとソコツツ様の三重合体になっちゃうんじゃないんですか⁉ 神様と合体だなんて、本当にできるんですか?」

『普通の人間にはできないが、遥ほど心のキレイな人間ならばできる。さあ、勾玉をかざし、合体の呪文を唱えるのだ!』

「……わ、分かりました!」

 遥はソコツツ様に言われた通り、ピンクの勾玉を空にかざした。しかし――。

『そうはさせるか! 獣人! 爆弾羽だ!』

『コケー! コケー! コケー! コケケケケケケーーー‼』

 邪神にあやつられて、完全に自我を失っている獣人が、発狂に近い叫び声をあげながら羽を大きく広げた。そして、

シュバババババー!

 無防備な遥めがけて、およそ百発の爆弾羽が!

「は、はるかー! 逃げろー!」

 身動きが取れない優兎が必死になってそう叫んだが……。

 ドッカーン! ドッカーン! ドッカーーーン!

 大爆発の後、遥とソコツツ様がいた場所には、深さ三メートルほどの大穴ができていたのである。


『クケケ! こっぱみじんにしてやったぞ!』

 住吉神社に邪神の高笑いが響きわたった。優兎や美兎、真一は泣きそうになりながら遥の名前を呼び、遥を助けることができなかったことをくやしがった。

「く、くそう! よくも遥を! 絶対に許さないぞ!」

 ――落ち着け、優兎。遥とソコツツ様の気配は消えていない。二人は無事だ。

「え? 本当か? シロ!」

 爆発のせいで神社の庭は煙だらけでほとんど何も見えなかったのだが、少しずつ煙が消えていき、だんだんと周囲の状況が見えるようになってきた。すると、薄れつつある煙の向こうに、人影がゆらりと現れたのである。その人影は遥ひとりだけではなかった。

「何とか間に合った。ギリギリセーフといったところだな」

「はるかーちゃん、大丈夫?」

 煙から現れたのは、なんと、武蔵と桜だった。武蔵は遥、桜はソコツツ様をそれぞれ抱きかかえていた。この二人が、爆弾羽の直撃を食らいそうだった遥とソコツツ様を間一髪で救い出してくれたのである。助けられた本人である遥もビックリしているようで、目をパチクリさせている。

「武蔵! 桜! どうしてここへ⁉」

「水くさいじゃないか、優兎。オレの協力が必要な時は言ってくれと、夕方に話したばかりだろ? たまたま家の二階の窓から、自転車でどこかに向かう優兎と真一を見かけて、もしかしたらあのニワトリのお化けを退治しに行くのかと思い、追いかけて来たんだ。途中で二人を見失って、しばらく途方に暮れていたんだが、住吉神社の方角が燃えているように明るいのに気づいて、ここまで駆けつけたのさ」

「私は、はるかーちゃんをここまで送った後、はるかーちゃんに『危ないから帰っていいよ』って言われたわけだけれど、親友が危険なことに首を突っこもうとしているのに放っておけない、私も行かなくちゃと考えて、来ちゃったのですよ。でも、ぶっちゃけ、今がどういう状況なのか、まったくチンプンカンプンなんだよね」

 武蔵と桜は、二人とも、親友である優兎と遥を心配して駆けつけてくれたのであった。優兎と遥は、二人の友情に心の底から感謝した。

「武蔵。遥を助けてくれて、ありがとう」

「桜ちゃんも、ありがとう。本当は危ないことに巻きこみたくはなかったんだけれど、でも、来てくれて、とってもうれしいよ」

 優兎と遥に礼を言われると、武蔵と桜は照れくさそうに笑った。

「ここまで来たからには、何でもするぜ」

「はるかーちゃん。私たち、協力できることってある?」

「私、ユウくんたちみたいに変身しなきゃいけないの。でも、邪神さんが邪魔をしてきて困っていたところで……。ほんの少しの間だけ、邪神さんの注意をそらして時間かせぎをしてくれないかな?」

 遥がそう頼むと、優兎とともに巨大化した真一の下じきにされっぱなしの美兎が、

「こっちも何とかして~! 重くて死ぬ~!」

 と助けを求めた。

「よし。ニワトリのお化けは、オレが引き受ける。犬飼は、優兎たちを助けてやってくれ」

「オーケー!」

 素早く分担を決めた武蔵と桜は、さっそく行動を開始した。


「さあ、来い! ニワトリのお化け! オレが相手だ!」

 勇敢にもニワトリの獣人の前に飛び出した武蔵は、獣人を挑発した。自我を失った獣人を操っている邪神は、人間のくせして生意気な行動をとる武蔵のことを腹立たしく思い、

『獣人! あのガキをつつき殺してしまえ!』

 と、命令した。獣人は『コケー!』とわめきながら低空飛行し、武蔵に襲いかかったが、運動神経なら菜花小学校でも一、二を争う武蔵はそれをあっさりかわしてしまった。邪神の力を借りて自由自在に飛行できるようになったとはいえ、もともとはほとんど飛べない鳥のニワトリである。飛んだところで猛スピードは出せないのだ。獣人は何度も空中から武蔵にくちばし攻撃をしたが、武蔵はリズムをとりながら全部の攻撃をかわしていった。

 一方、桜はというと、まん丸巨大化した真一を何とかしてどかし、優兎と美兎を救い出そうとしていたが、真一の巨体があまりにも重すぎてビクリとも動かせないありさまだった。

「う、うぎぎ……! 何よこれ! ちっとも動かない! 真一君、ちょっと太りすぎじゃない? もうちょっとダイエットしないと~!」

「好きでこんなふうになったんじゃないよ~! 合体が失敗したんだよ~!」

 このままだとらちが明かないと思った優兎は、「美兎! 僕たちも、もっともがいて、何とかして抜け出すんだ!」と美兎に言った。「分かった!」と美兎が答えると、兄妹そろって真一の巨体の下でふんがふんがと力いっぱいあがき始めた。

「あ! ちょっとだけ動いた! ユウ! ミーちゃん! もうちょっとだけがんばって! こっちも気合入れていくから! よいしょ! よいしょ!」

 桜が全体重をかけて真一の体を押し、下では優兎と美兎がもがき、とうとう二人が身動きを取れるだけのすき間ができた。

「よし! 美兎! 今だ!」

「うん! おりゃー!」

 かけ声とともに、優兎と美兎は何とか真一の巨体から抜け出した。すると、桜が「やった! 二人とも良かったね!」と大喜びで二人に抱きついてきた。押しつぶされて死ぬかと思っていた二人も、「良かった! 良かった!」と泣いて喜んでいる。

 ――こらこら! のん気に喜んでいる場合か!

 ――そうよ! 早く獣人の呪いを解きなさい!

 つかの間の喜びにひたっていた優兎と美兎の兄妹をシロとうさずきんの兄妹が叱った。シロとうさずきんも、合体した優兎と美兎の体の感覚や痛みを共有しているため、さっきまで苦しい思いをしていたのである。

「そうだった! 武蔵、大丈夫か⁉」

 獣人の攻撃を見事にかわし続けていた武蔵だが、やはり人間の体力では限界がある。だんだんと疲れてきて、動きがにぶくなっていた。

「く、くそ! そろそろ限界だ!」

『クケケ! すきあり! 獣人よ、爆弾羽だ!』

シュバババババー!

 近距離からの爆弾羽攻撃! これではかわすどころか、全爆弾が命中して、武蔵は真っ黒コゲになってしまう!

「武蔵‼ 今行くぞ‼」

「武蔵先輩‼ あぶなーいっ‼」

 優兎と美兎は全力疾走したが、さすがのウサギの足でもこれは間に合いそうにはなかった。(もうダメか⁉)と優兎が思ったその時――。

「破魔矢よ! 魔をはらえ!」

 光り輝く一本の矢が音も無く飛んできて、百発以上はある爆弾羽へと突撃したのである。そして、

 ピカーーーッ‼

 神々しい光がしたかと思うと、次の瞬間には、爆弾羽は浄化されて消えていたのだった。

『な、なんだと⁉』

「狼森君、時間かせぎしてくれてありがとう。ユウくん、ミーちゃん、私も一緒に戦うよ!」

 光の矢を放ったのは、ソコツツ様が乗り移っている子ウサギのにゅーと合体した遥だった。神様と合体した影響のせいか、遥は巫女の姿になっていて、左手には時代劇に出てきそうな弓をにぎっていた。

「は、遥……? これが遥なのか?」

 のんびり屋でほわわんとした印象の強い遥が、今は見ちがえるほど凛々しく、そして、美しく見えて、優兎は思わずドキリとした。

遥の頭にも、ウサギと合体した時のお約束であるうさ耳がついているのだが、子ウサギと合体したせいか、ずいぶんと小さくてあまり目立っていない。ただし、にゅーは白と黒のブチだから、右耳が白、左耳が黒である。また、遥の髪は肩にかかるぐらいまでのセミロングだったのだが、思いきり伸びて、地面にぎりぎり届きそうなほどの長髪になっていた。

『くっ……! 神と動物、そして人間の合体……(しん)獣人(じゅうじん)か。千数百年ぶりに見るな。これはやっかいなことになってしまったぞ……』

 邪神が初めて余裕の無いセリフを言い、さっきまで休み無く続けていた攻撃の手を止めた。それほど神獣人となった遥のことを危険視しているのだろう。

「邪神さん! お願いだから、ピヨ先生とアネゴちゃんを元に戻して! そして、どこかに隠しているアッキーちゃんも返してちょうだい! みんなを困らせるようなイタズラをしなければ、あなたを退治したりなんかしないわ! だから……」

 キリリとした表情で遥はそう言いながら、邪神に歩み寄った。しかし、慣れない巫女服のせいで歩きにくかったのか、途中で石ころにつまずき、そのうえ自分の長い髪を踏んづけてしまい、「ほわぁぁぁ⁉」と悲鳴をあげながら、ずっこけてしまった。

(見た目だけで、中身はいつもの遥だな……)

 なんとなく安心する優兎。一方、遥のドジっぷりを見た邪神は、(しょせんは小学生だな! びびって損をしたぞ! あれだけへなちょこなら、余裕で勝てる!)と強気を取り戻していた。

『クケケ! 神も、人も、動物も全部まとめて倒してやる! 獣人! 音波攻撃だ!』

 夕方に学校で戦った時に、耳が良すぎるウサギには音波攻撃が有効だと学んだ邪神は、ニワトリの獣人に音波攻撃を命令した。

 ――うげっ! またあれかよ! 優兎、早く耳をふさぐんだ! オイラの両耳と自分の両耳、四つの耳穴をふさげ!

「無茶を言うなよ! 手は二つしかないのに、どうやってふさぐんだよ!」

 シロに無理難題を言われて、優兎はあわてた。こんなことなら耳せんでも持ってくれば良かったと今さらながら後悔した。あの音波攻撃を食らったら、優兎たちと合体しているウサギたちは気絶してしまい、戦闘不能におちいるのだ。

「もうダメ! 間に合わない!」

 美兎がそう叫んだ。優兎は獣人の一番近くで倒れて目を回している遥を助けるべく、地を蹴って走り出した。武蔵と桜は現在の危険な状況がよく分からず、ぽかんとしている。

 危機一髪。

 ここで動いたのは、なんと真一だった。

                            八羽目につづく☆

七話も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

次回の「八羽目☆これが僕たちのコンビネーション!!」で最終回です。どうかみなさま最後までお付き合いください……。

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