六羽目☆美兎のヒーローデビュー!?
「うさ☆うさコンビネーション!!」の第六話です!
この話からずっと戦闘シーン!
児童小説のつもりで書いていたけれど、バトル(なのか?)に入っちゃうとつい熱くなってしまうので…。
というわけで、ご覧ください!
六羽目☆美兎のヒーローデビュー⁉
家で留守番していたはずの美兎が突然目の前に現れて、優兎はビックリした。
「こ、こら! 美兎! 留守番をしていろって言っただろ? も、もしかして、さっきの僕たちの話、全部盗み聞きしていたのか⁉」
「うん!」
美兎が首を思いきりたてに振ると、真一が「兄の威厳なんて、無かったみたいだね……」と哀れみのこもった声で言い、優兎はがっくりと肩を落とした。
兄が落ちこんでいることなどまったく気がついていない美兎は、ドタバタと足音を立てて遥の部屋に入り、さっき言った言葉を繰り返した。
「私も、正義のヒーローに、な・り・た・いっ‼」
美兎はテレビで放送しているバッタライダーみたいな正義のヒーローが大好きである。兄の優兎が学校でニワトリのお化けとヒーローのように戦っているのを見て、「私もユウちゃんみたいになりたい!」と、いても立ってもいられなくなったのだ。優兎がヒーローになったのには何か秘密があるにちがいないと考え、こっそり浅野家に行った優兎の後を尾行し、遥の部屋の前で聞き耳を立てていたというわけである。
「これは遊びじゃない。お前は家でおとなしくしていろ」
妹の前に立ちはだかり、優兎がちょっと厳しめな口調でそう言うと、美兎は「私だって、遊びのつもりじゃないもん!」と反論した。
「学校のみんなを守るためにニワトリのお化けと戦っていたユウちゃん、すごくカッコよかった。妹の私も、ユウちゃんみたいに誰かを助けることができる人間になりたい、そう思ったんだもん!」
「ぼ、僕がカッコイイ⁉ う、なっ、それは……」
あまり兄を尊敬していない妹に生まれて初めてカッコイイと言われて、不意打ちを食らった優兎は動揺してしどろもどろになった。
「スキあり!」
美兎は兄がつくった一瞬のスキを見逃さず、立ちはだかっていた優兎のガードをくぐりぬけ、ぼうぜんと兄妹のやりとりを見ていた遥から赤色の勾玉(五百円)を奪った。そして、遥のそばにいたうさずきんを抱きかかえたのである。
「住吉神社の勾玉があれば、このうさちゃんと合体ができるんでしょ? 遥お姉ちゃん、これ、ちょっと借りていくね?」
「え? ええ……⁉」
『うわー⁉ ちょっと~! 私は遥と契約する予定なのよ~⁉』
うさずきんが文句を言ったが、美兎はそのまま遥の部屋を飛び出し、あっと言う間に浅野家を後にしていた。
「さすがはミーちゃんだなぁ。正義のヒーローのことになると、僕なんかよりもすごい暴走をするんだから」
みんながあっけにとられている中、真一がそう笑って言うと、優兎が「感心している場合じゃないって!」と叱った。
「美兎のやつ、動物の言葉が分からないくせに、僕たちの話を盗み聞きしていたらしいけれど、神様のことや人間と動物のこと、ちゃんと理解しているのか? わけが分からないまま、住吉神社に向かっていないだろうな……」
優兎が心配してそう言うと、ソコツツ様が『あの娘はすでに共鳴丹を食べているようだ』と教えてくれた。
「そういえば、あの虹色のアメ玉、僕が飼育小屋でミーちゃんにあげたんだった。たぶん、ニワトリの化け物の騒動の後で食べちゃったんじゃないかなぁ」
「ま、マジかよぉ~! 真一、余計なことをするなってぇ。……何にしろ、一人で行かせたら、美兎が危ない! 真一、シロ、クロ、美兎を追いかけるぞ!」
「ゆ、ユウくん、待ってぇ~! わ、私も行くから~!」
急展開についていけないのんびり屋の遥が、部屋を出ようとした優兎たちにそう呼びかけ、あたふたと立ちあがった。
「遥は行かないほうがいい。遥と合体するはずだったうさずきんは美兎が連れて行ってしまったから、遥は獣人に変身できないんだ。邪神に占領されている神社に行ったら危険だよ」
「で、でも、ユウくんたちのことが心配だよぉ!」
心の底から優兎たちのことを心配して、遥は泣きながらそう叫んだ。優兎は遥の涙を見て、胸がチクチクしたが、遥を危険な目にあわせたくないという気持ちに変わりは無い。大切ないとこであり、昔からずっと一緒にいる幼なじみであり、最近は優兎の心をなぜかドキドキさせる存在の遥……彼女が傷つくところを見たくない。優兎は「ダメだ」と言い、遥に背を向けた。
「お姉ちゃん、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ユウ兄ちゃんには僕がついているんだしさ!」
姉の不安を減らそうと思って真一がそう言ったが、真一が一緒だということが心配の種のひとつだとは言いにくい遥であった。
『ほら! もたもたしていないで、さっさと行くぜ! そっこーで獣人の呪いを解いて、そっこーで神社を取り戻すんだ!』
せっかちなシロがそう言って急かし、優兎は「おう!」と力強く返事した。
「ソコツツ様、行ってきます!」
こうして、優兎、真一、シロ、クロは住吉神社へと向かったのである。
「はぁ~。置いてけぼりにされちゃった……」
ひとり部屋に取り残された遥が、うつむいて大きなため息をついた。先に神社へ行った美兎、それを追いかけている優兎と真一は、みんな自転車で住吉神社へ向かっている。遥が自分の足で走っても、神社に着いたころには優兎たちが邪神にやられているかも知れない。
だったら、遥も自転車で行けばいいって? それは無理。遥は自転車に乗れないのだ。
「ユウくんたちのことが心配で、留守番なんかしていられないよ。でも、どうしたら……」
『遥。そなたは小さいころから変わらずに優しい子だな。そんな優しい心を持った遥だからこそ仲間たちにしてあげられることもあるのだよ』
ソコツツ様が、遥をなぐさめるようにそう言った。ソコツツ様は、住吉神社を参拝した人間たちのことをみんな覚えている。だから、物心がつく前から家族や優兎の一家と参拝に来ていた遥のことを知っているのだ。
『千四百年ほど昔、この国には聖徳太子という偉大な政治家がいた。彼が定めた十七条憲法に、和をもって貴しとなせ、という言葉がある。心をひとつにした仲間たちのチームワークこそ強いものは無い。だから、喧嘩をせずにみんなで力を合わせようという教えだ。心優しく、仲間のことを大切に思う遥ならば、優兎たちの結束の中心となるだろう』
「……でも、こんなに離れた場所からじゃ、ユウくんたちに何もしてあげられないです……」
もうこうなったら、後で歩けなくなってもかまわないから、足がガタガタになるほど全力で走っていこう。遥がそう決心した時だった。遥の家の外で聞き覚えのある声がした。
「はるかーちゃん! 今日借りていた算数のノート、返すのを忘れていたから持ってきたよー!」
桜の声だ。二階にある遥の部屋の窓から下を見下ろすと、自転車に乗った桜がこっちを見上げて笑顔で手をブンブン振っていた。
「桜ちゃん! あ! そうだ! 桜ちゃんに頼んで自転車に乗せてもらって、神社の近くまで連れ行ってもらえば……」
『これこれ。自転車の二人乗りは法律違反だぞ』
神様なのになぜか日本の法律にくわしいソコツツ様が注意した。「そうだった……」と遥はがっかりする。
『しかし、そうだな……。ひとつだけ良い方法がある』
「え? それは何ですか?」
『遥がウサギになればいい。そうすれば、友だちの自転車に乗せてもらっても、二人乗りにはならない』
「ああ、そうか。なるほどー。……って、えええええ⁉」
『神社で買った赤色の勾玉は美兎に持って行かれてしまったが、お使いのウサギたちからもらったピンクの勾玉は持っているだろう? それを出しなさい』
遥が言われた通りに勾玉を差し出すと、ソコツツ様は勾玉に顔を近づけて、フッと息を吹きかけた。すると、ピンクの勾玉がぽわわわんとやわらかな光を発したのである。
『変化の力を勾玉にこめた。これで、勾玉に祈ればウサギに変化できるようになったぞ』
「す、すご~い!」
『まあ、住吉神社の神使であるウサギにしか変化できないがな』
「ありがとうございます、ソコツツ様!」
『うむ。私も優兎やウサギたちのことが心配だから、一緒に行こう』
ソコツツ様は、ピョーンと遥の頭に飛び乗った。遥は勾玉をぎゅっとにぎり、一階の玄関へと走った。
「はるかーちゃん、今日は大変だったね。算数のノートを……。って、そんなにあわててどうしたの?」
「桜ちゃん、お願い! 私を住吉神社まで乗せていって!」
「え! こんな夜に⁉ でも、二人乗りなんかしたらおまわりさんに怒られちゃうよ?」
「大丈夫! 私、ウサギになるから!」
「???」
一刻を争う緊急事態のため、遥は桜にろくな説明もせず、勾玉を夜空にかざした。
「お願い! 私をウサギさんにして!」
「はるかーちゃん、いったい何をやって……。へ? ええ⁉ うぇぇぇぇぇ⁉」
夜の町内に、桜の悲鳴が響きわたった。
そのころ、美兎はすでに住吉神社に到着し、自転車を降りて鳥居をくぐろうとしていた。
『ちょっと待ちなって、美兎。あんたと私だけで戦うのは無理よ。あんたの兄さんが追いかけて来るのを待って、みんなで力を合わせて獣人と戦いなさい』
うさずきんがそう言って止めようとすると、美兎はニヤリと笑った。
「私とうさずきんが一緒に戦うことを前提で話しているということは、私をパートナーとして認めてくれたってこと?」
『認めるも何も、美兎が私を強引にさらったんでしょうが。……でも、まあ、あんたみたいに威勢のいい女の子は嫌いじゃないわ。仕方ないから、一緒に戦ってあげる』
「あんがと♪」
おたがいに勝気な性格で似たもの同士のせいか、美兎とうさずきんは短時間で意気投合していたのであった。
『コケー! コケー! コーコケキョ!』
神社の奥――神様の住居である本殿の方角でアネゴの鳴き声が聞こえてきた。どうやら、本当に神社が乗っ取られているらしい。美兎は「ピヨ先生と動物たちを助けなきゃ!」と言い、今度こそ鳥居をくぐった。しかし、うさずきんが再び「待ちなってば!」と止めた。
「ユウちゃんたちを待ってなんかいられないって! ピヨ先生や、アネゴ、アッキーがどんなひどい目にあっているのか分からないのに!」
『じゃあ、せめて身を清めてから入りなさい! ほら、参道のわきに手水舎があるでしょ? 邪神に乗っ取られていても、ここは神社なんだから! 汚れた体で神社に入るなんて行儀の悪いことをしたら、口に手をつっこんで奥歯をガタガタ言わせるわよ!』
「わ、分かったって……。うさずきんのセリフのほうが、よっぽど行儀悪いじゃん……」
うさずきんに叱られた美兎は、手水舎の柄杓を手に取って、左手、右手の順に清め、左の手のひらにふくんだ水で口をすすぎ、もう一度左手に水をかけた。うさずきんが、これが正しい身の清めかただと教えてくれたのである。
これまで何度も住吉神社に参拝していて気づかなかったが、よく見ると手水舎にはウサギの石像があり、そのウサギの口から水が出てくるようになっていた。(なるほど。ウサギは本当に住吉さんのお使いなのね)と美兎は納得するのであった。
「さて! 身を清めたし、今度こそレッツゴー!」
『気をつけなさいよ、美兎。理由は分からないけれど、邪神の力が夕方に戦った時よりも、数倍パワーアップしているみたいだから』
邪神が発する悪のオーラを感じ取ったうさずきんが、そう忠告した。しかし、今から変身することが楽しみで仕方ない美兎は「相手にとって不足無し!」と言い放ち、神社の本殿へと向かうのだった。
「ねえ、うさずきん。ちょっと変じゃない?」
森の中の参道をずんずんと奥へ進みながら、美兎は肩の上に乗っかっているうさずきんに聞いた。今はだいたい午後十時のはずなのに、どういうわけかとても明るいのだ。十数歩先の「住吉神社の由来」という看板の文字がはっきりと読めるぐらいで、しかも、本殿に近づくほど視界が明るくなっていく。
『う~ん。邪神のやつ、いったい何をしているのかしら。何だか嫌な予感がするわ。美兎、急ぎましょ』
うさずきんはそう言うと、美兎の肩から飛び降りて猛ダッシュで走り出した。
「ち、ちょっと! 置いて行かないでよ! 嫌な予感って何なの? さっきまではユウちゃんたちが来るのを待てとか言っていたくせにぃ~」
『嫌な予感は、嫌な予感よ。私だって神使のはしくれなんだから。ほんのちょっとの未来なら、起こりうる危険を予知することができるのよ。たまにだけど。さあ、急いで!』
わけが分からないまま、美兎はうさずきんにせかされて全力で走った。そして、とうとう本殿にたどり着いたのだが――。
「う、うわ⁉ まぶしい! 真っ昼間みたい! 何なのよ、これ!」
美兎がまぶしくて目がつぶれてしまいそうなのを我慢しながら本殿を見ると、本殿の真上に紫色の大きな火の玉がぷかぷかと浮いていた。その火の玉はだんだんと大きくなっていき、周囲を照らしている。あれはいったい何だろうか?
『やばい! 邪神が、本殿にたくわえられている神様のパワーを吸収しているんだわ!』
「神様のパワー⁉」
『神様のパワーはね、神社を参拝した人間たちの願いの心なのよ。だから、本殿には神様にお祈りした人間たちの自分や他人の幸福を祈る気持ち、夢をかなえたいという強い気持ちがたくさん集まっているの。その願いの心を住吉の神様たちはパワーにかえて、人々にご利益をもたらしているのよ』
「ということは、神様のパワーが全部吸い取られたら、神社のご利益が無くなっちゃうわけ? それは困るよ! 私、今年の初詣で『身長がもっと伸びますように』ってお祈りしたのに!」
『それだけじゃないわ。神様のパワーが完全に無くなったら、獣人の呪いを解くこともできなくなる! さあ、美兎! 急いで合体して邪神を止めるわよ!』
「オーケー!」
美兎は赤い勾玉を天高くかかげると、合体の呪文を唱えた。テレビのヒーローものが大好きな美兎は、こういう変身のための合言葉などを覚えるのが大得意で、兄の優兎が学校の運動場で唱えていた長い呪文を一度聞いただけで暗記してしまっていたのである。
「汝は天に愛されし獣
我は天を求むる人
ここに契りを結びて我ら合一す
平安楽土へと共に行かん!」
呪文を言い終わった直後、燃え盛る炎が勾玉からふきだし、ぎょっとおどろく美兎をあっと言う間につつんだ。(燃え死ぬ⁉)と美兎は一瞬だけパニックになりかけたが、次の瞬間には炎は消えていて、美兎は獣人の姿になっていたのである。
「どう? うさずきん? 私、かっこいい⁉」
――どうって聞かれても……。何だか、いろんなヒーローやアニメの影響を受けまくっているというか……。
美兎の頭には、優兎と同じようにウサギと合体したあかしであるうさ耳のカチャーシュ、そして、いざという時に装着して目を守るゴーグル。首にはずいぶんと長い真っ赤なマフラーが風にたなびいていて、これはバッタライダーの影響だとすぐ分かる。また、ボクシング選手が活躍するアニメ「あさってのショー」を最近見たせいか、両手にはボクシングのグローブ(ウサギと合体しているため、ウサギの前足の形をしている)。ここらへんまでは正義のヒーローっぽいと言えるのだが……。
――どうして、近所の中学校のセーラー服を着ているのよ。
「美少女たちがセーラー服のかっこうで戦うアニメを知らないの?」
――「あさってのショー」もそうだけれど、あんたが生まれる前に放送していたアニメじゃなかったっけ……?
「そんなこと、どうでもいいってば! いざ出撃ー!」
早く自分の能力を発揮したい美兎は、うさずきんに戦い方の説明を求めず、ウサギのジャンプ力をいかして高々と飛びあがった。美兎は、ゲームを買っても説明書をいっさい読まず、プレイしながら覚えていくタイプなのである。
「あんな紫の火の玉なんて、私のパンチでふっとばしてやるー‼」
神様のパワーを吸収している、本殿の上に浮かぶ火の玉を破壊すればいいと考えた美兎は、発射された鉄砲玉のようないきおいで火の玉に突撃した。しかし――。
『そうはせるか!』
突風が巻き起こり、邪神にとりつかれたオコジョが目の前にあらわれたのである。そして、美兎が「あっ」とおどろくひまも無く、オコジョは目からビームを放った。運動神経のいい美兎はぎりぎりでかわしたが、空中でバランスを崩し、じゃりがしかれた地面へと真っ逆さまに落っこちた。
――美兎! 今のあんたなら、この高さからでもちゃんと着地できるから、落ち着くのよ!
「わ、分かった!」
地面にたたきつけられる直前に体のバランスを取り戻し、美兎はきれいに着地した。そして、火の玉を守るようにして空中に浮遊しているオコジョをきっとにらんだ。オコジョのほうはというと、美兎にどれだけにらまれても恐くも何ともないらしく、余裕たっぷりに『クケケ』と笑っていた。
『なかなか威勢のいい娘だな。夕方に戦った優兎とかいう少年と同じにおいがする。兄妹か?』
「そうよ! 持草市の平和は私たち兄妹が守るんだから! ……あっ、そういえば、変身した時の名前をまだ考えていなかった。ええと、どうしようかなぁ。何て名乗ろうかしら?」
――美兎! のん気なことを言っている場合じゃないわよ! ほら! あれを見なさい!
頭の中でうさずきんの怒鳴り声がキンキンと響、美兎は顔をしかめながら紫の火の玉を見た。さっきから相変わらずまぶしい光を放っているが、他に大きな変化は無いはずだが……?
「……あれ? 何かが火の玉から飛び出て来る⁉ も、もしかして、あれは……!」
『コケー! コケー! コーコケキョーっ‼』
もしかしなくてもニワトリの獣人だった!
音楽教師・陽世子とニワトリのアネゴが合体して生まれた獣人。優兎との戦いでパワーが半減していたのだが、邪神が住吉の神様の力をうばい、獣人にその力を吸収させていたのである。
「どうして邪悪な神が、神聖な神様の力を吸い取れるのよ⁉」
――邪神とはいえ、神様は神様だからよ。性格がいいか悪いかのちがいぐらいだし。
「そういうものなんだ……。でも、神様だからって、やっていいことと悪いことがあるわ。こんなイタズラをして、みんなを困らせるなんて許せない! さっさと獣人の合体の呪いを解いて、こらしめてやるんだから!」
『フフフ。そんなにうまくいくかな? さあ、獣人! この人間の子どもを泣かせてやれ! 私は引き続き住吉の神たちの力を吸収するとしよう』
オコジョはニワトリの獣人にそう命令した後、再び神社の本殿から神の力を吸収し始めた。夜空に浮かぶ紫の火の玉は見る見るうちに大きくなり、神社のほぼ全域を真昼のように明るくしていく。このままだと、本当に神様のパワーが全部うばわれてしまいそうだ。
「こ、こらー! やめろー!」
――美兎。とにかく今は、先にニワトリの獣人を元のピヨ先生とアネゴに戻すことだけを考えるのよ! 二兎を追う者は一兎も得ずって言うでしょ? ウサギは私だけれど。
「わ、分かった! いっくぞー! とりゃーっ‼」
美兎は勇ましい叫び声をあげながら、ニワトリの獣人に突進した。神社の庭はじゃりがいっぱいでウサギ本来のスピードが出しにくいが、それでも獣人をおどろかせるには十分な速さである。美兎にあっと言う間に接近されてあせったニワトリの獣人は、あわてて左右の翼を大きく広げた。
『こ、これでも食らえコケー!』
シュバババババー!
無数のニワトリの羽が飛び出し、吹き荒れる暴風雨のごとく美兎におそいかかった。(これに当たったら、何だかやばそう!)と直感した美兎は急停止し、バク転で後ろに逃げてニワトリの羽の攻撃をすべてかわした。その直後、
ドッカーーーン‼
今さっきまで美兎がいた場所が大爆発! ウサギの聴力を得ている美兎の耳がキーンとなった。住吉の神様たちのパワーを吸収しただけあって、優兎と戦った時とは比べものにならないほど獣人は強くなっているようだ。
「うわ! こんなのが直撃したら、シャレにならないわよ!」
『もう一発いくぞコケー!』
調子に乗った獣人は再び大量の爆弾羽(?)を飛ばした。美兎は素早くジャンプしてかわしたが、なんと今度はどこまでも追いかけてくる追尾爆弾だったようで、爆発することなく美兎を追ってきたのである。
「かわしてもダメなら、はじき返すだけよ! おりゃー! 爆裂うさぎ神拳‼」
美兎はファイティングポーズをとると、せまり来る爆弾羽たちを次々とパンチではね返した。
読者のみなさん、ウサギの前足パンチをなめてはいけない。
ウサギは怒った時、鼻をブーブー鳴らせながら前足パンチをすることがある。ウサギの前足は猛スピードで走る時、高くジャンプする時だけでなく、地面に穴を掘る時にも大活躍するほどたくましいのだ。
美兎にウサギのそんな知識があったわけではないが、正義のヒーローなのだからこれぐらいのことはできるだろうと思い、連続パンチをくりだしたのだった。
『こ、コケー⁉ 爆弾がこっちに戻ってくるコケー‼』
「あ! しまった! ピヨ先生とアネゴを傷つけちゃう!」
ニワトリの獣人は教師の陽世子と飼育小屋のニワトリであるアネゴがむりやり合体させられたのである。大切な先生と、学校のみんなで大事に育てているニワトリにケガを負わせるわけにはいかない。美兎は全力疾走し、光もビックリな速さで爆弾羽を追い越して、獣人をできるだけ遠くへ突き飛ばした。
――何やっているのよ! 私たちが爆発に巻き込まれるじゃないの!
「へ? そ、そこまで考えてなかったーーー‼」
ドッカーーーン‼
大地を震わす爆発音とともに、美兎は吹っ飛んでいた。
七羽目につづく☆
六話も最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
このVS鳥が意外と書いていて面白くて(思いっきり自己満足!)、この間投稿した新人賞でもVS鳥やっちゃいました…。戦う相手は巨大カラスで、物語もまったく別物だけれど。
さて、お話もクライマックス一直線なのですが、まだバトルは続きます…。次回の「七羽目☆危機一髪!!」もよろしければお付き合いください。




