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スーパーViolence学園~目指せ、猛毒との共存共栄!~  作者: 俺夢ZUN
第1章 ようこそ、猛毒蔓延る魔境“エレメント学園”!
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第2話 パラレルワールドの面妖な能力


「――うん、視たところ、異常はなさそうですね」


 暫くして落ち着いた後、診察室にいた先生――癒月(ゆづき)先生だというんだそうです。 そして、この方も大和帝国の方だとか――に透過検査なる検査をしてもらいました。

 この検査では、体の中に異常があるのかどうかを透視する検査……ちょっと言ってる意味がよく分かりませんが、とにかく、体の中の異常を視る検査らしいです。

 パラレルワールドには不思議な医療技術があるみたいですね、大変不思議です。


 その検査をした癒月先生は頷く。

 それを聞いて、私よりも安堵しているらしい暁斗(あきと)さんは「よかった……」と言葉を落としました。


「まぁ、それでも油断できないのが暁斗君の能力なんですがね。

 えっと――」

「あ、今日から入学するクリスです!」


 癒月先生が言葉を切ったので、自己紹介がまだだった私は慌てて名乗る。

 人間、第一印象が大事だというのに、何と言う失態でしょう……!

 私の名前を聞いた癒月さんはうん、と頷いて言葉を続けました。


「クリスさん。

 暁斗君の歌を聴いたという事だけど、気分や気持ちの変化はないですか?

 心の中が落ち着かないとか、暁斗君を見るだけで動悸が止まらないとか」


 癒月先生に問われて、改めて考えてみても、特に変化らしい変化はないです。

 暁斗さんの方へ視線を巡らせて、彼の姿を見てみる。


 電気の光に赤く透ける黒髪は、左側だけ三つ編みに結われていて、その先に赤くて綺麗な髪留めをしています。

 さらに目を引くのは、赤褐色の瞳と、左目を走る暗く赤い刺青。

 綺麗なお顔に走る不思議な模様の刺青が彼のミステリアスさを引き立てているみたい。

 赤みがかった白い肌はきめが細かくて、こうして見る分には本当に女の人みたいです。


「……? はい、特には何も……。

 ただ、歌声が綺麗で感動したくらい……ですね?」


 けど、彼を見ても、癒月先生の言う様に「動悸が止まらない」なんてことはない。

 首を横に振って見せれば、癒月先生も何処か安堵したみたいに「そうですか」と言葉を落とす。

 先ほどから、暁斗さんも癒月先生も私の心境の変化を気にしているみたいですが、一体何なのでしょう?


「あの、先ほど暁斗さんにも訊かれたのですが……。

 暁斗さんの歌ってそんなに聴いてはいけないモノなんですか?

 周りのモノを破壊できるみたいな破滅的音痴という訳でもないですし……むしろ、お金が取れるレベルですよ?」


 思い切って聞いてみることにしました。

 すると、癒月先生と暁斗さんは無言になり、同じタイミングでお互いの顔を見合わせると、再び私の方へと顔を向ける。

 そして、口を先に開いたのは癒月先生でした。


「ふふっ、いや、失礼。

 違うんですよ、いや、惜しい所ではあるのですが。

 そうですか、クリスさんはもしかして、こちらの世界の方ですかね?」

「はい、そうです。

 こちらの世界のアメリカから!」

「ほう、アメリカから。

 僕や暁斗君みたいにパラレルワールドから来た人間はこの島以外の場所では存在が保てないので、行ったことはありませんが……そういう国が存在している、というのは聞いたことがあります。

 是非一度、外の世界のことも聞いてみたいものですね」

「えぇっ!?」


 なんと、癒月先生や暁斗さんみたいにパラレルワールドから来た人はこの島から出られない!?

 それは初耳です……そもそも、パラレルワールドの存在自体聞いたことはありますが、実際にお会いするのは初めてで……この島から出られないのなら、それも当然ですよね……。

 初めて聞く衝撃的な事実に私は驚いたまま、口が塞がりません。


「さて、話が逸れてしまいましたが。

 僕や暁斗君の故郷であるパラレルワールドでは、“異能”や“異能歌”という特殊能力を扱う人間が存在しているんですよ。

“異能歌”と言うのは歌による特異能力で、歌い手と聞き手の感情相の乗効果で攻撃と治癒の効果が現れるという面白い能力なんです。

 暁斗君は正に、その“異能歌”の持ち主なんですよ」


 暁斗さんについて語る癒月先生の目はとても優しくて、ただの生徒と教師には見えないのですが……。

――っといけません、クリス!

 初対面の人のことをそんなに詮索するように見ては!


「異能歌は歌い手と聞き手の感情の相乗効果で効果が現れるもの。

 僕は特に何も考えずに無心で歌っていたので大丈夫だとは思いますが、クリスさんが歌を聴いて怖いと感じていたり、不安を感じていたりすると、異能歌に中ってしまうので……簡単に言えば、攻撃の効果が現れてクリスさんの内臓を傷付けたり、不安な気持ちを増幅させたりですね。

 今の所、そのような効果は出ていないみたいなので安心しました」

「えっ!?」


 柔和な赤褐色の瞳を細めて、さらっと怖いことを言われた気がしたのですが……。

 暁斗さんの歌を聴いたことで、一歩間違えば私、死んでたんです!?

 本日2回目の事実の方が衝撃が大きすぎます!

 だから、救護校舎に連れてこられたんですね、納得です!


「ただ、油断できないのが副作用の方なんですよね……」

「ふ、副作用……!?」

「ええ。

 異能歌を使う人間の歌を聴くと、(あた)ることがあるんですよ。

 異能歌の中毒症状ですね。

 異能歌を聴くことによって感情を強く揺さぶられ、歌い手に恋愛感情に似た感情を抱くことがあるんです」

「そ、そんな副作用があるんですね……」


 暁斗さんが誰も来ないであろう森の奥の湖畔で歌っていた理由が分かりました……これは確かに、人にホイホイ聴かせていい歌じゃないです!


「去年も酷かったですが、今年はどうなるやら……考えただけで気が滅入りますね……」


 あぁっ、癒月先生の表情が暗く……!

 毎年そんなに大変なことになるのでしょうか?

 それなら、暁斗さんに異能歌を使うのを控えて貰ったらいいだけでは……?


「癒月先生。

 だから、何度も言ってるじゃないですか。

 異能歌を使わなければいいのですから、何もこっちの世界でも異能歌に拘る必要は……」

「何を言ってるんです、暁斗君!

 暁斗君のその能力は、伸ばしておくべき君の個性であり、君の最大の魅力でもあるんです。

 それを伸ばさない手はないでしょう!

 そして、卒業後は養護教諭として――」

「その前に癒月先生が潰れたら意味がないでしょう」


 癒月先生の言葉に暁斗さんが呆れていますが、正論ですよね。

 どうやら、癒月先生は暁斗さんの異能歌に固執しているみたいです。

 確かに、歌で怪我が治せるんなら一度に何人もの人の治療ができて、それはそれで便利そうですが……、それにしては“副作用”という名の“代償”が大きい気が……。


「さて、クリスさんが何ともないなら、僕はこのままクリスさんをアリーナへ送っていきます。

 さぁ、クリスさん。行きましょう」

「は、はい!

 ありがとうございました」


 暁斗さんの言葉に返事をして暁斗さんと一緒に診察室を出ていくと、暁斗さんは宣言通り私をアリーナへ送っていってくれました。

 


☆パラレルワールドにおける特殊能力について

 パラレルワールドには、異能や異能歌と呼ばれる能力を持っている人間が存在する。

 呼称はパラレルワールドの国によって様々で、人によっては“異能”を“呪幻術(じゅげんじゅつ)”と呼んだり、“異能歌”を“O.C.波(オーシーは)”と呼んだりするみたい。


・異能(または呪幻術)

 精霊と契約することで得られる特殊能力。

 属性は地・水・火・風の4属性と闇と光の2属性。

 通常であれば自分の属性に見合った精霊と契約する。

 異能の出現は遺伝8割、本人の才覚2割であり、殆ど遺伝に依存する。


・異能歌(またはO.C.波)

 歌声に宿るO.C.波という声質。

 歌い手と聞き手の感情の相乗効果により、破壊と治癒の効果が得られる。

 遺伝的要素が強いが、稀に突然変異で現れることもある。

 まだ多くの事が謎に包まれた能力の一つである。

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